第3話 戦争終結って何だ!?

 それから数か月後、沖田の周囲にいたのは3人の護衛だけではなかった。民主主義の素晴らしさを理解して勇者オキタと共に魔王による独裁の打倒を目指す人々が種族を問わず結集し、彼と共に魔王城を「民衆の輪」で取り囲んでいた。


 ある朝目覚めると人間族、亜人族、魔人族、モンスターといった様々な種族が手と手をつないで居城を取り囲んでいたことに魔王ドクーサは驚愕した。


「なっ、何なのだこれは。近衛魔人師団はどこに行った!」

「彼らは勇者オキタに攻撃を加えようとしたようですが、襲いかかろうとするなり我が軍を離反した魔人族やモンスターが立ちふさがって『暴力反対!』『戦争やめろ!』と騒ぎ立てるせいでまともに戦えなかったそうです」


 寝台から飛び起きて叫んだ魔王に、側近の上級魔人は狼狽を隠せない様子で伝えた。


「何だと、戦って勇者に敗北した訳ではないのか!?」


 精鋭を誇るはずの近衛魔人師団が武力によらず敗北を喫したと知り、魔王は青ざめた。


「魔王ドクーサよ、あなたの理念は民主主義の思想に背くものではありませんが独裁政治によってそれを実現するのは間違っています。今すぐに魔王という地位を捨て、一人の魔人として民主主義による政治に参画すべきです。人々は民主主義の素晴らしさを理解して争いをやめ、あなたが起こした侵略戦争は既に機能不全に陥っています」

「ここまでか……」


 拡声魔法により勇者オキタからの降伏勧告が届き、魔王ドクーサは配下の兵士たちに武装解除を行うよう命じた。



 魔王ドクーサはダモクレス王国に降伏し、勇者オキタの仲介を受けて領地を返還した上で今後は王国の一貴族として政治に参画することとなった。


 元々ドクーサ自身は民主主義的な社会を目指していたが、その社会体制を実現するために十分な理論武装ができていなかったことから独裁政治に踏み切っていた。戦争が終わった後は勇者オキタと意気投合し、あらゆる種族が平等に生きる社会の実現に向けて共に活動を続けることになった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る