ねこのじごくにおちると、
君に引っ掻かれなければいけません。
君に噛みつかれなければいけません。
君のトイレ掃除をしなければいけません。
君のごはんのお世話をしないといけません。
君の猫じゃらしを振らなければいけません。
君のチュールも開封しなければいけません。
君に話しかけなければいけません。
君に飛び乗られなければいけません。
身体をベッドにしないといけません。
毎日、お掃除をしないといけません。
ねこのじごくは、たいへんです。
消えようとする大切な命。
1秒でも長くと願う、小さな命。
ずっと寄り添ってくれた小さな命は、心の半分。
失いたくない君は、心の半分。
願うことはひとつ。
君と共に堕ちたい、ねこのじごく。
消えて行く小さな命の炎。
この世に繋ぎとめようとする物語。
僕は仕事が終わって、食事をして、PCを開いてこの物語の新作通知を見た。
思った事は、「ああ、このタイトル、やばいわ、相当力が籠っとる!」でした。そして読み始めてみて、もうそれは確信。誰にも手に負えない筆者様の「壱単位わーど」がつらつらと続いてます。
お読みの方はわかります。言葉がね、いきいきと生まれていて、とどこおりなく、僕らのこころに直接届いてしまうのです。ここ需要。
物語の言葉とは、左脳と右脳を交互にバイパスで行き来して、理解と想像を育みます。特に女性は脳科学的にこのバイパスが男性よりも多いので、より感受性が高いのです。口喧嘩で男性が勝てないのは科学的に立証されていますから。
で、ですね、この驚異の「壱単位わーど」はですね、そんな左脳とか右脳とかをすっ飛ばして、「こころ」に直接語りかけてくるおっとろしい「ワード」なのです。
だから、この物語は凄い、だからこの物語は痛い、だからこの物語は愛おしい。
僕の大好きな筆者様は、さきの「ふろたき~」からこの領域を意図的に開放し始めた。だからもう誰にも手に負えない。このカクヨムという世界でも、圧倒的で稀有な才が世に披露され始めた。
だから、泣くとか泣かないとかの次元でこの物語を評価しないで下さい。ここには泣きながらも懸命に進んで苦しんで落ち込んで、開き直ってまた泣いて苦しんで切なくて、そんなごっちやまぜな、実に「美しい人間のこころ」が、ばばんとありのままさらけ出されているのです。
お勧めしますどころじゃない。もう読んだ人間は全員一行でいいからレビューを書いて宣伝して下さい! なんて乱暴な事を僕に言わしめる物語です。