第3話
「最近刺激が足らねえと思ってたんだよ。もっと、生を実感するような刺激がさ。」
男はブツブツと一人ごとを言っている。
「それ、分かる。正直、授業中とかテロが入ってくる妄想とかしちゃうな。」
「あるあるだね。」
「テロが入ってきたらどうやって生き残ろうとかな。」
「やっぱり、刺激っていうのは需要があるんだよ。サバイバル系のドラマや映画が売れるのがその証拠だろ。」
「戦争とか起きねえかな。」
こいつらは、馬鹿なのかと内心僕は呆れていた。今、この平和がどれだけ不安定なガラス板の上に成り立っていることを自覚していないのだろう。
こういう馬鹿がこれらの社会の主役となっていくのだと考えるだけで頭が痛い。
「しっかし、この倉庫しけてんなぁ。死体の一つでもあったら面白いのに。」
「荷物しかないじゃん。」
「あ、もう端っこだ。」
「結局、暗いだけで何も無かったな。」
「つまんねぇ。」
「カズ君、何かあったら守ってね。」
「おう、任しとけ。お前は何があっても守るからな。」
後ろで引き続きカップルが騒いでいる。周りから見たら気色悪いその一つ一つの言動も本人たちにとっては一言一句輝いて聞こえるのだろう。
仲が良いのは微笑ましいが、その見栄がいつか誰かに迷惑をかけることは避けてほしい。
「つまんね。帰って酒でも飲むか。」
その一言を皮切りに、盛り下がっていたムードと共に俺たちは撤収することになった。
息をひそめていた男は愉悦の表情を抑え込み、男たちを笑みがこぼれる目で睨んだ。
このまま、帰れると思うのか。
これから彼らに待ち受けるのは、留まることのないパニック?お涙頂戴の感動物語?それとも、勇敢な男の英雄譚?
未来は誰にも分からない。でも、起きている事実だけ伝えておこう。彼らを待ち受けているのは、開かないドアとチェンソー付きの倫理感ぶっ壊れ男のみ。
聞いただけでゾクゾクするでしょ。
お待たせしました。
ぶっ殺すぞ! 京国芹佳 @azumakyosuke
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