蛇足

【優愛if】もしも春樹がLv999だったら

【前書き】

お久しぶりです。

サポーターさん向けに限定公開していたifです。


注意1.本編の雰囲気をぶち壊します

注意2.勢いだけで執筆してます

注意3.R17くらいです





【本編】


 その夜、俺は見知らぬ男に半裸で跨る幼馴染を目にした。


(……は?)


 俺は咄嗟に身を隠した。

 

(見間違い、だよな?)


 ここは学校。時刻は午後八時頃。

 明日提出する宿題に必要なノートを忘れ、取りに来た。


 鍵あいてんじゃん。

 セキュリティがガバガバかよ。

 そんな感想は、教室に近づいたところで新たな衝撃に塗りつぶされた。


 声が聞こえた。

 よく知る女の声だった。


 最初は空耳だと思った。

 だけど気になったら止まらない。


 恐る恐る声がした教室に近づいて、覗き込んだ。


 窓際、人影がふたつ。

 机に寝転がる人物と、その上に跨る制服を半分だけ脱いだ女子。外から差し込む光によって顔がハッキリと見えた。


(……待て、待て、ありえないだろ)


 何かの見間違いかもしれない。

 息を整え、再び覗き込もうとした時、声が聞こえた。


「いやぁ、意外だったわ」


 男の声だった。


優愛ゆあちゃん、小倉おぐらと付き合ってると思ってたわ」


 それは幼馴染と、俺の名前だった。


「あんなインポ野郎の話しないで」


 息が止まった。


「ハル君、私がずぅ~っと誘惑してるのに、ぜーんぜん手を出してくれないの」


 歯がカタカタと震え、吐き気がした。

 

「だからぁ、たまにこうしてぇ、肉◯イブ使ってるんだよねぇ。お金も貰えて最ッ高♡」


 視界が歪む。

 噓だ。ありえない。


「てか君、もっとおち〇ちん硬くできないわけ? ちっとも気持ちよくないんだけど」


「はぁ? 大きさには自信あるんだが?」


「うわ、童貞っぽいこと言わないでよ。大きけりゃ良いとかエッチな本の中だけだから」


 俺は冷静に二人の様子を観察した。


(……優愛があんな発言するわけない)


 何か理由があるはず。

 そう思った俺の視界に、何か光るものが映った。


 ──スマホのカメラ。


 なるほど、そういうことか!


「貴様ァ! 今すぐに優愛から離れろ!」


 俺は教室に特攻した。


「あっ? 誰だテメ……小倉?」

「ハルくん!? イヤァァアアアア!」


 優愛は飛び退き、脱ぎ捨ててあったカッターシャツで素早く体を隠した。

 俺は絶妙な位置にあったスマホを手に取る。案の定ビデオモードだった。即座に停止する。


 アルバムを全て消去。

 ゴミ箱とクラウドも消去して、スマホを校庭に投げ捨てた。


「何してんだテメェ!?」


 男が突っ込んでくる。

 俺は容赦なく拳で応対した。


「グァァ!」


 男は三メートルほど吹き飛び、泡を吹いて気絶した。


「優愛、もう大丈夫だ」

「……」


 怯えている。無理もない。


「動画を撮られて脅された。そうなんだろ」


 優愛は俯いた。


「……ち、げぇぞ」


 クソ、あいつ、まだ息があったのか。


「俺は写真を貰っただけだ!」

「写真だと?」

「そいつがおっさんとホテルに入るところ──円光してる証拠写真だよ!」

「ちが、違うの!」

「誰から貰った!? 言え!」


 俺は否定する優愛の声を無視して男の胸倉を摑んだ。

 

「何の事情も無しにッ、優愛がそんなことするわけないだろうが!?」

「ハルくん落ち着いて! 死んじゃうよ!」


 優愛に止められハッとする。

 男は今度こそ白目をむき泡を吹いていた。


 投げ捨てる。

 それから優愛を強く抱きしめた。


「ごめん!」


 俺は謝罪した。


「ずっと、気が付かなかった」


 思い当たることがある。

 それは──半年前、優愛が何日か寝込んだこと。


 彼女が復調した少し後から不自然な程に下ネタが増えた。

 発言だけじゃない。行動も……よくよく考えれば不自然なことが多かった。


 なぜ?

 きっと、この事件に繋がる何かが起きたからだ。


「……でも、もう大丈夫。俺が守るから」


 俺は優愛を強く抱きしめる。


「……違うの。私、そんなこと言って貰う資格無い」

「なんで?」

「だって……裏切った! ハルくんのこと、何回も!」

「そんなの裏切らせた俺が悪いに決まってんだろ!」


 俺は叫ぶ。


「何か理由があるんだろ? 俺はそれに気が付かなかった。今、優愛は泣いてる。ずっと辛い思いをさせてた。だったら悪いのは俺だ。責任は俺にある!」


 それから優愛の目を見た。

 大好きな幼馴染の顔。宝石のような涙。それを指先で拭い、俺は笑う。


「ごめんなさい!」


 優愛はもっと泣いた。


「違うだろ」 


 俺は言う。


「言ってみろ。やりたいこと。なんでも。絶対に叶えてやる」


 優愛は困ってる。

 だったら、手を差し伸べる以外の選択肢は無い。


「絶対に助けてやる」

「……ハルくん!」


 優愛は俺の胸に顔を押し当て、わんわん泣いた。

 そして数分後、真っ赤に腫れた目で顔を上げ、俺に言った。


「……キス、して」

「分かった」

「んぐっ!?」


 俺は勢いよく、初めてのキスをした。


「ちょっ、ハルくん……唇、切れたんだけど」

「……悪い。やり方、分からなくて」

「……何それ」


 優愛は笑った。


「……なんかもう、バカみたい」


 その後、また泣いた。


「……なんで私、最初からハルくんに言わなかったのかな」


 俺は彼女を抱き寄せ、背中を撫でた。

 優愛は鼻をすする。それから言った。


「……ハルくん、エッチしよ」

「分かった」

「……いいの?」

「それで優愛が救われるなら、断る理由は無い」


 優愛から手を離す。

 彼女は蕩けた表情で俺を見た。


 まるで夢を見ているかのような雰囲気だった。

 困惑と、それから期待が入り混じったような表情をしている。


 やがて、どちらからともなくキスをした。

 グチャグチャといやらしい音を立て、動物みたいに互いを求め合った。


「……ハルくん、そろそろ、来て」

「分かった」


 机に寝転がった優愛を見下ろす。


「……優愛?」


 ふと気が付いた。

 どこか怯えたような表情をしている。


「……ごめん」

「どうした? なんでも言ってくれ」

「……違う。ハルくんのせいじゃないの」


 優愛は俺に説明した。

 半年前、襲われたこと。

 変な薬を打たれ、体が変になったこと。

 それから自暴自棄になって不特定多数と関係を持ったこと。


 そして──

 その時のトラウマで、男性が上になると、恐怖で気が狂いそうになること。


「……優愛が上になるか?」

「やだ。ハルくんなら……ハルくんに、メチャクチャにしてほしい」


 断る理由は無い。

 俺は優愛が恐怖を感じる時間を与えないよう、一気にコトを進めた。


「んぉぁっ!?」


 優愛が獣のような声を上げた。


「……んぉ、ほぉぉ……んにゃ、ぁ、はぇぁ……なに、これぇ……」

「悪い。流石に痛かったか?」

「……ち、ちがうの」


 優愛は顔を隠すようにして、両腕を交差させた。


「……今までと、全然違う」


 今までと違う。

 過去を想起させる言葉を聞いて、俺はたまらず獣になった。


「んごほぉ!? ハルくっ、ちょっ、待っ、待って!」

「全部ッ! 上書きしてやる!」

「んぉっ、も、もうしゃれて、しゃれてりゅからあ!?」

「本当か!?」

「んほぉっ、ん、とぉ! 今までの全部、爪楊枝か何か入れてたのかなってくらいぃぃん……気持ちいい……!」


 優愛は急に両手を伸ばし、キスを求めた。

 もちろん受け入れる。そして──二人で動物になった。



 *  *  *



「……おっと、そろそろ陽が昇るな」


 頬に光を感じ、我に返った。


「……んふー、ふー、ふーぅぅ……」


 優愛は荒い呼吸をしながら外を見た。


「……そぅ、だねぇ……」


 文字通りの意味でメチャクチャになっている。


「これ、どうしようか?」


 俺は冷静に言った。

 掃除とか、いろいろ、大変な気がする。


「……窓、開けて……雑巾とかで、拭いて……帰ろ」

「そうだな」


 意外と冷静な優愛の声に頷く。

 それから腰を引いて、


「んぉぉぉぉぉ!?」


 それだけで、優愛はこうなった。


「大丈夫か?」

「…………キス、キスして」


 俺は優愛の求めに応じた。

 それから二人で証拠隠滅をして、未だ気絶している男を放置して帰宅した。


 帰宅後、丸一日、続きをした。



 *  *  *



「……ハルくん」


 四度目の風呂から出た後、俺の隣で眠る優愛が言った。


「……なんで、こんなこと、してくれたの?」

「好きだからだよ」


 俺は優愛を抱き寄せ、頭を撫でる。


「ずっと好きだった。順番おかしくなったけど、本当に、ずっと好きだった。だから、優愛が困ってることに気付けなかった自分が許せなくて、何でもしたいと思った」


 俺は心の中にある言葉を全て声に出した。


「まだ足りないなら、もっとする。俺以外の全部を忘れるまで、何度でも」

「……もう、とっくに忘れたよ」


 優愛は体を起こし、俺の上に乗った。

 それから俺の胸に手を付いて、顔を近づけてから言う。


「ハルくんが好き」

「俺の方が好きだ」

「私の方が好きだよ」

「俺の方がたくさん逝かせた」

「……バカ」


 優愛は顔を逸らすと、急に倒れた。


「大丈夫か?」

「……大丈夫じゃない。ハルくん、激し過ぎるから」

「それは優愛が求めるから」

「……ハルくんのえっち」


 お前が言うな。

 その言葉を飲み込んで、俺は優愛を抱きしめた。


「……こういうのも、気持ちいかも」

「……そうだな」


 それから二人が眠りにつくまで、互いの温もりを感じていた。


 ──優愛の身に起きた悲劇を消すことはできない。

 だけど、上書きすることはできる。悲劇以上の幸せを与えてやることはできる。


 いつか彼女が本当の意味で笑えるようになるまで与え続けよう。

 この日、彼女の温もりを感じながら、俺は胸に誓ったのだった。






【あとがき】

主人公がつよつよだと大抵の問題は1話で解決するってわけ。

そしてこれは重要なことなのですが……美少女の汚い喘ぎ声、良いよね。


少しでもお楽しみ頂けたなら嬉しいです

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俺がカノジョに寝取られた理由 下城米雪 @MuraGaro

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