第6話 浮気

◆ ◆ ◆


「――んん」

「おはよう」

「――!?」


 目を覚ますと俺の眼前には一糸まとわぬ姿の京華さんの豊満な胸があった。

 いや、正確に言うと、俺が彼女の胸に顔をうずめて寝ていたようだ。ありがとうございます。最高でした。――寝ていたからほとんど記憶にないけど。


「す、すいません」

「なんで謝るの?」


 慌てて謝るも、京華さんは心底不思議そうに首を傾げる。


「いや、抱き着いて寝てたみたいなんで……」

「別に大丈夫だよ? 君のかわいい寝顔を見られて眼福だったし」


 そう言って微笑む京華さん。


「……それはそれでむず痒いっすね」


 寝顔をまじまじとおがまれるなんてなんか恥ずかしいな……。


 というか、今……何時だ?

 今日は土曜だから大学は休みだし、バイトもないから俺は問題ないけど、京華さんは仕事とか大丈夫なのか? 


「今、何時っすか?」

「もう、お昼過ぎだよ」

「まじっすか……」

「朝方までヤってたし仕方ないよ」


 確かに朝の七時くらいまでヤっていたから寝ていたのは五、六時間くらいか。

 睡眠時間的には充分だけど、散々ヤリまくったから少しだけ身体がだるいな……。


 あ、やべ、情事を思い出したらまた興奮してきた。

 我ながら俺の下半身君、元気すぎやしないかね?


 いや、まあ、一糸まとわぬ姿の美女が目の前にいるのに興奮しない方が男としてどうなのかと思うけども……。

 だから俺の下半身君の反応は正常なのである! ――まあ、寝起き故の生理現象が一番の理由だと思うが。


「京華さんは時間、大丈夫っすか?」

「うん、大丈夫だよ。今日は仕事ないし、他に予定もないから」

「そっすか……」


 俺はほっと胸を撫で下ろす。


「それじゃ汗掻いたし、シャワー浴びてくるね」


 そう言ってベッドから抜け出そうとする京華さんの腕を、俺は反射的に掴んで引き止めてしまう。


「どうしたの?」


 当然、京華さんは首を傾げる。


「いや、あの……」


 思わず引き止めてしまったが、言葉が口から出てこない……。


 シミ一つない綺麗な素肌をあらわにする京華さんから視線が外せない。

 ずって見ていたいくらい美しい。いっそ幻想的とも思えるほどに。


 こんな機会が二度もあるとは思えないし、せっかくだから行くところまで行ってしまえ! と半ば暴走気味の覚悟を決めた俺は、一度視線を下に外してから京華さんの顔を見つめ直して口を開く。


「その前に、もう一回ヤってもいいっすか?」

「……あんなにヤったのに、まだヤレるの?」


 驚いて目が点になる京華さん。


 昨日は二十一時頃から朝の七時くらいまでヤっていたから、合計で十時間くらいヤっていたことになる。


 改めて考えるとめちゃくちゃヤったな……。

 詩織とでさえこんなにヤったことないのに……。


 そんなにヤっておいてもう一回と懇願するのだから京華さんが驚くのは無理もない。


「京華さんが魅力的すぎて興奮が収まらないんです……。駄目っすか?」

「ううん、いいよ」


 呆れた素振りもなく、笑って受け入れてくれる京華さんが女神に見える。


「でも、その前にお水を飲ませて?」

「あ、俺も飲みたいっす」


 寝起きだから喉がカラカラだ。


「うん、ちょっと待ってて」


 立ち上がった京華さんは冷蔵庫に向かって歩き出した。

 歩く度に、ぷりん、と弾力のある尻が揺れて大変眼福である。


「はい」

「ありがとうございます」


 コップを持って戻ってきた京華さんから受け取ると、ゴクゴクと一気に飲み干す。

 そして少しずつ飲んで喉を潤す京華さんを見つめながら大人しく待つ俺は、さながら忠犬である。


「それじゃ、もう一回ヤろっか」


 口元から一滴垂れたままそう言う京華さんの姿は、非常に蠱惑的こわくてきで情欲がそそられる。

 俺ははやる気持ちを抑えて京華さんの柔肌に手を伸ばすが――


「あ、でも、その前に、誤解されたくないからこれだけは言わせて」


 機先を制されてしまった。


「……なんすか?」


 気勢を殺がれてしまったことに俺はもどかしさを感じつつも、忠犬の如く素直に耳を傾ける。


「私、普段からしているわけじゃないからね?」


 、というのは浮気とセックスのことだろう。


「わかってますよ」

「付き合っていない人とヤるのは今回が初めてだし、魁斗くんが特別なだけなんだからね」


 そう言いながら俺の胸に手を添える京華さんの手付きがなんだか無性にエロくて、背筋がゾクゾクする。


「……そんなこと言われたら、俺……自惚うぬぼれちゃいますよ」


 京華さんみたいな美女に特別なんて言われたら誰だって勘違いしてしまうだろう。それが男のさがってやつだ。


 思わず京華さんをベッドに引きずり込んで、押し倒してしまうくらいには自制が効かなくなっている。


「……うん、自惚うぬぼれていいよ。魁斗くんさえ良ければ、たった一度きりの関係じゃなくて、これからも私と浮気しましょ?」


 俺に押し倒された状態で京華さんはそう囁いた。

 彼女のうるっとした瞳が俺に突き刺さる。


 情欲をそそるような蠱惑的こわくてきな表情と声色に、俺のなけなしの理性は完全に吹っ飛んでいく。


「……はい」


 口内に溜まった唾液を飲み込んだ俺は反射的に頷くと、京華さんの胸に顔をうずめた。


 そうして夢のようなひと時を再び堪能するのであった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

【あとがき】


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彼女の裏切りが判明した日の夜、隣の部屋のお姉さんと浮気した。 雅鳳飛恋 @libero

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