第5話 一夜
◆ ◆ ◆
翌日の正午。
すっかり日が昇り、カーテンの隙間から日差しが差し込んでいる中、ベッドで横になっている私は二重の意味で頭を抱えていた。
「……やっちゃった」
そう力なく呟くと、横に目を向ける。
そこには裸で眠る魁斗くんの姿があった。
同じベッドで男女が裸で寝ている状況は、誰がどう見ても
二日酔いで痛む頭を懸命に働かせて記憶を辿るまでもない。
だって、そこら中に使用済みのコンドームが散らばっているから……。
なんなら私の下半身にはまだ感覚が残っているし……。
しかも私の方から誘ったんだよね……。
そう思うと凄い恥ずかしいんだけど……!
まあ、後悔はしていないから別にいいんだけどね!
魁斗くんとは相性が良いのか、それとも彼のテクニックの
私の都合に魁斗くんを利用したような感じになってしまったのは申し訳ないけれども……。
まあ、彼は気持ち良さそうに寝ているから、きっと満足してくれたに違いない。うん、そうに違いない。
というか使用済みのコンドームの量が凄いわね……。
ぱっと見ただけでも使用済みのコンドームが六つも散らばっているし、いったいどけだけヤったのか……。
記憶が曖昧だから正確な数はわからない。もしかしたら探せばもっとコンドームが落ちているかもしれない。
魁斗くんがそれだけ凄い体力の持ち主だったというのもあるかもしれないけれど、私は私で浮気しているという事実に妙な背徳感を覚えて、いつも以上に乱れてしまったような気がする。
なんて昨夜の出来事を振り返っていると、魁斗くんが「んん」と寝息を零して私に抱き着いてきた。
私の腰に腕を回してがっしりとホールドし、胸に顔を
「ふふ、かわいい」
彼の甘えるような態度に、私の頬が自然と緩む。
今まで年上としか付き合ったことがなかったから初めての経験だけれど、年下の男の子には母性が
思わず身震いしてしまうこの感覚が癖になりそう……!
少し自暴自棄になっていたのと、お酒で酔っていたのが影響して魁斗くんのことを一夜の過ちに誘ってしまったけれど、このまま終わってしまうのはちょっと惜しいかな……。
私はもう折を見てカレと別れるつもりでいる。
でも、魁斗くんは彼女さんとの関係をどうするのかわからない。
もし別れるのなら私と付き合ってくれたりしないかな? なんて浮かれたことを思ったりもするけれど、それは私の都合でしかない。
そもそも一夜を共にしただけで彼女にしてほしいと
彼から誘われての営みだったら脈あり、とも思えるけれど、私の方から誘ったわけだし……。
というか、私って一夜を共にしただけで本気になるような単純な女だったかしら……?
自分の感情に戸惑いを覚えた私は胸中で首を傾げると、気持ち良さそうに眠る魁斗くんの黒髪を優しく撫でて心を落ち着かせる。
「結構長いよね」
魁斗くんの髪は肩甲骨辺りまであって、男の子にしては長い。
夏場は結ばないと暑くて大変だね。
「ふふ」
心が弾んだからか、自然と鼻が鳴った。
改めて考えると、付き合っていない相手と身体を重ねたことなんて今まで一度もなかったから、私がそんな単純な女だったのかなんてわかるはずもない。――酔った勢いで一夜を共にしておいて何言ってんの? って感じかもしれないけれど……。
ただ一つわかったのは、もしかしたら年上の男より年下の男の子の方が私には合っているのかもしれないってこと。
いや、魁斗くんだけ特別なのかもしれないし、決めつけるのは時期尚早かしら……?
いずれにしろ、魁斗くんの顔を見る度に、今だけはこの一時の幸せを噛み締めていたいと心の底から思う。
だから一先ず今は余計なことを考えずに彼との甘いひと時に溺れていたかった。
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