05 重力の井戸
「ウチの
「ほんと? いいの?」
丸井くんはいい子だ。
丸井
人事に関わらないから知らないけど。
丸井くんの口調はやや
俺が頼んだ仕事はやってくれるし、
普通と言ってしまえばそれまでだが、
普通のことができる人はそうそういない。
なにより俺より体力がある。
給料を上げてやりたいが、
課長という肩書きはあっても
俺も給料は上がってない。なぜ…?
「
「ビール
「
セクハラを受けて、その
酒をぶっかけた人だった。
普通ではなさそうだ。
「事件起こさなければいいよ。」
「
ドラムスティックで
「へぇ、ドラマー?
それでウチでパートとか…、
「メンバーがみんな結婚して
解散って
ヘルプもないんで
そんな丸井くんの姉というのは、
遠目に見ても驚くほど赤い髪をしていた。
丸井
梱包業務を教えるのは
だが丸井
いつも以上にぼそぼそと
いつも通りに失敗を繰り返した。
その度に誰にでもなく
新人の彼女は気にもせず
パートの先輩たちにも評価されていた。
丸井
業務を
マニュアルを作り、業務時間外でも
「そんなのダメだろ!
「それ言うなら、
と、
荷降ろし中の弟の丸井くんに
「どうなんすか? カケルさん。」
きょう一番デカい声の
どうやら
俺がいるのをお忘れのようだ。
「会社の
少人数で
少しでも早く
会社としてはなにも問題ありません。
当然、読んでサイン
許可を出せば
もし、
持ち場を
彼女を
で、
やってくれましたか?」
「チッ!」
素直に
しかしこれもパワハラになるので、
次回の研修で
「
「いやでも、すごいな、姉ちゃん。
マニュアル作る発想と
「
「へぇ。」興味なさそうにするのが一番だ。
「
俺と違って頭はめっちゃいいっす。
有名進学校
「それがドラマーに?」
「再婚するときに姉貴が
警察に
趣味だったドラムを教え込んだんすよ。
普通の高校に
「わははっ。おもしろっ。
丸井くんはやらなかったの?
ギターで
「んなことしませんって。
ギターないし。あんのかな?」
ギターの
「丸井くん、
想像つかん。」
「反抗期の姉を
そんな気起きないっすね。マジで。
カケルさんはあったんすか?
「親にはめちゃくちゃ
「なにしたんす?」
「中学のときに買って
スマホ
キッズスマホ持たされたんだよ。」
本当はスマホを盗まれたのだが、
説明も面倒なので
「ひっでーっすね。
だから親の会社
「あまり関係ないかな。
嫌なことあってもだいたい忘れてるし。
じいちゃんとばあちゃんが
立て続けに
反抗期とかどうでもよくなった感じ。
とはいえ地元にいるのが嫌で、
就職は遠くを選んだわ。」
「んでも戻ってきちゃったんすね。
そういうとこ、
馬鹿なバスケ部員からIT系で地元を離れた
正反対な俺の、一体どこが似ているんだ。
結局地元に帰ってきてしまったのだから、
似たようなものか…。
にしても、地元という重力は、
どこにでもあるのだろうか…。
◆ 06 記録と記憶 につづく
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