第8話(最終話)
その頃村人たちは村から数百メートル離れた場所へ避難をし、鱒弥と雲雀の両親や凪と子どもたちが高台からその家が燃えている様子を見ていた。
「凪さんの言っていた通りだ。あの村長の家には
「でも、僕らの家や他の村民の住居には問題ないのでしょうか?あの家を焼き尽くせば僕らはまた元の生活に戻れるって……」
「ああそうだよ。彼らが私達を恨んで
やがて、立ち昇る炎は次第に鎮火していき鱒弥と雲雀の家は全焼した。まだ灯があちこちに残るように揺らめいて
村人たちはその姿に怯えながらも凪が静かにするように告げて身を潜めながら様子を見ていると、二人は森林の奥地へと向かっていった。
しばらく歩いていくとある煉瓦造りの井戸に辿り着いて、鱒弥は樹々の隙間からこぼれる月の光を眺めては、ふっと含み笑いをして涙を流し、雲雀を抱えたままその井戸の中へ落ちていった。
その後村人たちは彼らのあった家を
平穏な日々が流れていきやがて若者たちが出稼ぎの為村を離れていくと、村も小さくなっていきその後は誰も住み着かなくなっていったという。
そやつらの話はいかがだったかな。
私もその魂と出会っては灯を消すな消すなとせがまれてきてやりきれない思いでいたのさ。だが、彼らの慈愛という意味で言うと人間として生きていたことには悔いはなかったのだろうに。
あんなにしてまでも愛し合った仲だ。二度と生まれ変わることができなくともその世で出会えたことがさぞ幸せだっただろう。
ああ、次の訪問者が来たようだ。私はこれで失礼するよ。
どうかそこのあんたも、悔いのないように生きるんだよ。
了
回廊〜嗤う死神、顔のない子を産む〜 桑鶴七緒 @hyesu
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