第5話 自宅集合

ある平日の朝。豊がいつも通り朝食の準備をしていると、夢香が慌ただしく自室から出てきた。


 「どうしたの?ずいぶんと慌てて準備して。」

 

 「今日日直だったの忘れてました。もう行かないと。」


夢香は急いで歯を磨き寝癖を直して玄関を開けようとした時、豊が夢香を呼び止めた。


 「夢香ちゃんストップ。これ持っていきな。落ち着いた時に食べてね。」


豊はおにぎりをラップに包んで手渡した。


 「ありがとうございます。行ってきます。」


 「行ってらっしゃい。気をつけてね。」


夢香を見送った後、豊は朝食を済ませながら片付けをしている時、恵から電話がかかってきた。


 「もしもしどうした?」


 「もしもし。今日のゼミ休講だって。教授が熱だした。」


 「まじか。今日ゼミだけだったんだけど、どうしようかな。」


 「俺もなんだよ。だからさ、今日お前んちいってもいい?」


 「俺んち?別にいいぞ。ついでに昼飯食べていくか?」


 「まじで!やった。他のやつも連れて行ってもいい?」


 「いいけど来る前に人数だけは教えてくれよ。」


 「わかった。じゃあまた後で。」


電話の後、豊は洗い物を終わらせて自室とリビングの掃除を始めた。自室とリビングの掃除を終え、ついでに玄関を掃除しようと玄関へ向かった時、靴箱の上に夢香の弁当があるのが見えた。


 「あちゃ~夢香ちゃん弁当忘れてるよ。もう12時回ってるし・・届けるか。」


豊は恵に『ゆっくりめに来て』と連絡と入れて、夢香のいる学校へ向かった。豊が家を出て少しした頃、お昼休みになりお弁当を取り出そうとカバンを開けた夢香はお弁当がないことに気づき落ち込んでいた。


 「夢香ちゃんどうしたの?そんなに落ち込んで。」


 「お弁当忘れた。朝寝坊して急いでたから。」


 「あらまぁ。じゃあ今日は購買に買いに行かなきゃ。」


 「それが財布も忘れた。午後からの授業も部活もあるのに。」


夢香が机に伏していると、何やら廊下の方がざわざわしているのが聞こえた。

 

 「何か廊下の方がざわついているけどどうしたんだろう。・・・あ。」


夢香が気になって耳を傾けてみると、クラスメイトの黄色い声援の中から聞きなれた声が聞こえた。


 「すみません。日向夢香はいますか?」


声の聞こえたほうを向くとお弁当を持った豊が女子生徒に囲まれながら立っていた。夢香はすぐさま豊のもとに駆け寄った。


 「お兄ちゃんどうしてここにいるんですか?」


 「夢香ちゃんお弁当忘れてたでしょ。だから、届けに来た。本当は先生に預けようとしたんだけどすぐそこだから直接届けてくださいって言われて。はいお弁当。」


 「あ、ありがとうございます。でも、お兄ちゃん授業は?」


 「今日はゼミだけだったんだけど、ゼミが休講になっちゃってね。っとそれじゃあ俺帰るね。帰るとき連絡頂戴。」


 「はい。」


豊は周りの視線とひそひそ話に居た堪れなくなり、足早に学校を後にした。


 「もしもし恵。用事済んだから来ていいぞ。今どの辺にいる?」


 「今、大学の近く。俺含め3人で行くな。」


 「了解。近くに来たら教えて。あっ後、うちにお菓子とかないからいるなら買って来いよ。ジュースとかもないから。コーヒーとか紅茶ならあるけど。」


 「お酒はある?」


 「昼から飲むの?バイトは?」


 「今日は店定休日だから休み。豊の家にはなんかお酒置いてないの?」


 「置いてるわけないでしょ。俺一応まだ19だぞ。料理酒でよければあるぞ。」


 「流石に料理酒は飲まんわ。じゃあいろいろ買ってから行くから30分後くらいになると思うわ。」


 「了解。」


豊は家に戻り、4人分の昼食の準備を始めた。30分後、大きな買い物袋3つ持った恵と陽菜・由紀子がやってきた。


 「お邪魔します。めっちゃいい匂い。」


 「いらっしゃい。桜井さんも宇佐田さんも。もうすぐお昼出来るから手を洗ってリビングで待ってて。洗面所はそこの扉を開けたところね。」


 「お邪魔します。」


 「お邪魔します。」


3人が席に着き、間もなくして豊は4人分の昼食を机の上に置いた。


 「お~今日はパスタか。うまそぉ。」


 「風見君はよく豊君の家に来るの?」


 「従妹ちゃんを預かる前はよく来てたよ。泊まったりもしたな。」


 「恵が課題終わらないけど自分の家じゃ集中できないからってよく入り浸ってたな。図書館とかですればいいのに。」


 「そんな固い事言いうなよ。なんかここ落ち着くし。」


 「まぁいいや。食べよう。」


4人は豊の作った昼食を食べ始め、しばらく雑談に花を咲かせた。


 「ごちそうさまでした。美味しかったよ。」


 「ごちそうさま。久しぶりに豊の飯食ったけどやっぱりうまいな。皿はどうしたらいい?」


 「食洗器がキッチンにあるだろ。そこに突っ込んどいて。」


 「豊君の家食洗器あるの?」


 「最近買ったんだ。人も増えたから洗い物も増えたし。」


恵は食器を食洗器に入れると、自分たちで買ってきたビールを開けた。


 「もう飲むのかよ。」


 「いいじゃんか。おっ、ゲームあるじゃん。やっていい?」


 「いいよ。そこの棚にソフトがあるから好きなのやりな。」


 「やった。陽菜ちゃんとゆっきーもやろ。」


 「いいね。やろやろ。」


 「やる~。」


 「じゃあ・・まずはこのパーティーゲームからで。」



 

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