第5話


 勇者 闇に喰まれた月輝く時夜外歩いていた時

 災い招きし美しい黒猫当時貴族専門の盗人シーフ

 ついに相見えるから財布盗まれた

 黒猫 勇者に問う 我欲すかおい、(この財布返して)ほしいか

 勇者 黒猫に応ず 君欲す当たり前だろ

 だが黒猫 勇者伸ばした手を払う

 我を得たければ その力を示せよ(財布)ほしけりゃ奪ってみな


 月夜を翔る二つの影 詩人も騎士も追えず早すぎて俺らじゃ無理なんで勇者よろ


 疾き黒猫 ひらりひらりと勇者の手を交わし

 高らかに笑う だが勇者は手を伸ばしつづける

 時にして 月が朝日に沈みかける頃朝方まで追いかけっこしてた


 黒猫ついに力尽き 夜空から落ちるシーフ木から落ちた

 勇者 黒猫を引き寄せ腕の中へつい捕まえて二人で落ちた

 二人ともに池映る朝日の中に落つ

 沈む泡の中で何を見たのかコイが居たらしい


 池から上がりし二人 

 黒猫 再度問う 我欲すかほしい? 

 勇者 再度応ず 君欲すかえせ

 朝日の中眩しい二人影重なる二人寒いらしく抱き合って暖とってた


 また月昇る頃翌日 神の足元にて

 狭き天蓋にて 視線交わるテントで盗人捕獲していて勇者が見張っていた

 勇者 黒猫を縫い止め窃盗容疑で捕まえたまま 述べる

 君 深淵に闇巣食う 払う必要ありと二度と私達のものを盗まないなら許す

 黒猫 勇者の言霊に やむを得ず

 体躯 光の下へ捧げる了承して鎖を取ってくれと頼む

 勇者 黒猫に巣食う闇払うシーフが二度と悪さしないよう よって

 誇り高く神々しい雄々しきもの誓約魔法を

 黒猫に穿つ聖剣を使い身体に刻む

 喜びを与えられし黒猫

 闇を払い 災いを跳ね勇者のものを盗めなくなり

 幸福へと誘われるそのままパーティに勧誘された


 方今の黒猫

 勇者の前を歩き 正しき道へと導く排斥したりなんだり 

 そして 月が昇る頃

 勇者の腕の中で眠る丁度良い抱き枕らしい



 全文事実とは何も間違っていない。けれど、吟遊詩人的に大切な、幻想性を大切にし、想像力を無理やり働かせる内容だ。

 でも、恋歌として受け取った彼女は一頻り悶た後、吟遊詩人の手を取る。


「最高です!! 勇者様もシーフ様もなんて、なんて、この気持ちは」

「尊いではないでしょうか」

「そう! 尊い、本当に最高の英雄譚だわ! この英雄譚、もっと広めるべきよ」


 彼女はそう言うと、吟遊詩人に「明日友人たちも連れてくるから!」と去っていく。

 民に楽しみを無事に与えられた。その時、かれは初めて悟った。


 これが、吟遊詩人として、彼に与えられた使命なのだと。


 それ以降彼は、英雄譚を作り続けた。その名も『深英雄譚しんえいゆうたん』である。

 この深英雄譚は瞬く間に広がり、女子たちや一部の男性からも支持を集め、吟遊詩人として勇者たちに貢献していた。

個人的には、推しカプ勇者×シーフを量産したいが、中には魔法使いや騎士、更に最近加入した召喚士の深英雄譚を知りたい人も多く。


やはり、勇者の覇道総攻めは最高なのだ。

こんなにも好きを語るだけで、皆に喜ばれる日々。最高である。しかも、最高なのはそれだけではない。


 ある日、吟遊詩人はなんと、とある魔法を開花させたのだ。


 キッカケは勇者たちを広めるためにもネタ集めをしていた時。吟遊詩人は、現在パーティ出ない以上新鮮なものは手に入りにくい。行き詰まった彼は心の底から願ったのだ。


「ああ、勇者総攻めのネタ増やしたい、推しカプ眺めるかべになりたいよおおお!」


 そう言いながら、壁に手をついた彼は、次の瞬間にはなんと壁の中に侵入していたのだ。

 驚きのあまり何をすべきかと悩み、色々研究し、修行をした。


 結果、今彼は勇者たちの部屋に居た。

(わああ、いいね、お姉さんたちから香油貰って何するのかなあ?)

 ひひひひっと声を殺して笑う、壁のシミ。そう、吟遊詩人は今ネタ集めのため、壁のシミになり、困惑する彼らを見ていた。

 勇者になだめられるシーフ。なんて最高なんだ。


(これからも見守って、英雄譚を奏でるね勇者さま)

 吟遊詩人は推したちを眺めながら、なんて奏でようかと楽しげに笑った。



 おわれ

 

 

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勇者♂に吟遊詩人なんていらないと追放されたので、これからは趣味全開の英雄譚を奏でます〜前世はナマモノ大好き腐女子 マイブームは勇者♂総攻めで生意気シーフわからせです〜 木曜日御前 @narehatedeath888

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