宇津井は絵を描くことが好きだった。それ以外は排斥するような生き方。絵以外は何もいらない姿にイライラした私は、心の中である呪いをかけてしまった。「描けなくなってしまえ」と。そして…憧れて、憎む。何かを失って、何かを得る。それに対する後ろめたさと、引き寄せられる真っ直ぐな心情が描かれた作品です。
人間の心の内面が、綺麗な部分と汚い部分、その両方が圧倒的な解像度で描かれていて引き込まれます。素晴らしい作品です。同じ書く側としては、読み終えたあと「自分もこんな引き込まれる作品を書きたい」と思ったと同時に、「自分もある意味雪野と同じなのでは?」と気がついて少し悔しい気持ちになりました。
このレビューは小説のネタバレを含みます。全文を読む(208文字)