第2話
代わりに始まったのは、いつもポニーテールのアイツの話題だった。
本当に些細なことがきっかけだった。私は、何もかも分かったかのように発するアイツの発言にうんざりしていた。友達想いの素振りを見せるのに、いざという時は目を背ける偽善的な優しさに侮蔑的な目を向けていた。
クラスの皆からは信頼を集めていたし、私が何か言ってあの子のようになったら到底、耐えられないと思った。
きっとアイツは一番になりたいのだ。誰からも好かれる自分が好きなのだ。けれど、そんな姿を一度も羨ましいと思ったことはない。私がアイツの人気を妬んでいると思われたら、それが最も不本意だ。
「今日のお昼の時間、ケチャップの入れもの舐めていたんだよ。」
そんな一言だった。返ってくる反応は容易に想像がついたし、本当に想像通りの言葉が返ってきた。
だが、
「また何かやるかもしれないから、見とこうよ。」
その輪にいた一人が放った言葉で、私の意図とは全く違う方向に進んだ。
一人で見ているのとは、わけが違う。監視するようなことがしたかった訳じゃなかった。皆に完璧だと思わせるアイツの「隙」を見つけたことを話したかっただけだ。
最初は三人だったのに気付くと、五人、十人と輪は広がっていた。
ちがう。ちがう。私はこんなことがしたかったわけじゃない。
教室の雰囲気は、どんどん変わっていった。短い休み時間の言葉遊びの内容も。隠語にすらなっていない悪口を言い合う時間になっていた。
ウスライ 柊 @goochokipar
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