ウスライ

第1話

 今、振り返っても「コレ」と言える決定打はなかった。ただ、毎日が苦しくて、日中に笑っていた自分がとても醜く思えてきて、そんなことを思い出すと朝が来るのが怖くなって眠れなくなった。


 友達の言う「気にしなくて、大丈夫。」も「ドンマイ」も「ありがとう」さえも本心からは言っていないような気がして、毎日吐きそうだった。どんな風に笑っても、うまく笑えないと感じた。そもそも、目の前で起きている全てのことがちっとも笑えることではなかった。

 あの子がいる教室で、あの子を嘲る声や表情、空気が今も、鮮明に脳裏に焼き付いている。


 言い返すことも、同調することも、耳を塞ぐこともできなかった私は、少しでも早く話題を変えようと教室を見回した。あの子から一番遠くて、皆が共感できる、そんな話題が落ちていないかと必死に捜した。


 そんな自分に疲れていた。好きだった読書も、放課後や休日に一人で自転車に乗って出かけることもなくなった。こんな日々がいつまで続くのか、考えるだけで恐ろしかったが、本当に考える暇もないほど、月日は流れていった。


 一ヶ月経っても、三ヶ月経っても、何も変わらないどころか、状況はどんどん悪くなっていった。あの子の話題がだいぶ減ってきたのは、きっとあの子がそれなりに強い子で、皆の行動を気にしていないことが分かってきたからだ。皆は何も反応してこなくなったあの子のことを話題にしても、つまらないと感じてきているようだった。

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