第2話

悲しいおっさんの恋の話を聞いてくれ。


俺は中小企業で働くおっさんだ。結婚して子供がいるおっさんだ。

自分で言うのも嫌になるけど女好きだ。色々な女の子と携帯メッセージを

やりとりしたい。不倫したわけじゃない。浮気したいなら風俗にいく。

俺は女の子とわちゃわちゃしただけのおっさんだ。


仲良くなった女の子に絵里ちゃんという女の子がいる。

髪の毛はポニーテールができるぐらい。胸は少し大きい、髪の色は少し明るい

女の子だった。ノリが良い女の子で連絡先の交換も嫌がらずにしてくれた。


絵里ちゃんは家から会社まで遠く、電車とバスを乗り継ぐらしく

めんどくさいと言っていた。たまたま車で行くときは一緒に帰るか

聞いてたけど、いつも断られていた。


そんなある日、いつものように誘ったら今日は親が居ないからご飯を

食べさせてくださいって言われた。もちろん了承した。下心もあった。

ちょっとだけ。


会社から送る車では会話も弾み楽しい時間だった。

ファミレスで良いらしく、ハンバーグを美味しそうに食べる姿は可愛かった。

彼氏がいるって聞いていたし、彼氏と旅行へ行くって楽しそうにしてた。


家に送り届けて、そこから約1時間半かけて帰る運転はお腹もいっぱいだし

眠かった。浮気したいわけじゃないからこれでいいけど。


そんな事が何回かあった。そんな時に絵里ちゃんから相談があるんですと言われた。

「仲良くなった営業の方とご飯行ったら、誕生日プレゼントを渡されたんです。」

えー。なんだよ。営業の人ともご飯行ってるんかいっ。少しだけショック。

でも営業の人も誕生日プレゼント渡すとかすごいなって思ってたら、


「誤解されても嫌なので、誕生日プレゼントを受け取りませんでした。」

誕生日プレゼントを拒否するってあるんだ。その人かわいそうだ。同じおっさん

としては同情した。多分若い子と仲良くなって熱を上げて好きになって

誕生日プレゼントをあげたんだろうなって。


絵里ちゃんは結婚して、寿退職していった。今でもたまに連絡している。

二人目を妊娠したって。子育ての相談と乗ったりしてる。


ただ今でも思う。営業のおっさんの悲哀を。若い女の子を好きになって

熱を上げて好きになって誕生日プレゼントをあげたかったけど、受け取って

くれなくて。そんなおっさんの事を。めちゃくちゃ切ない。他の人に言っても

共感してもらえないと思う。おっさんの恋愛とか気持ち悪いって言われるかも。

でもおっさんでも好きになる。優しくされれば好きになる。好きな人にはプレゼント

だってあげたくなる。喜ぶ顔を見たくなる。嬉しい顔を見たくなる。

ありがとうって言われたい。好きだって言われたい。

分かるよ。分かるよ。気持ち。悲しいな。切ないな。

絵里ちゃん「誕プレを渡そうとしてきて・・」って言ってたぞ。誕生日プレゼントを

誕プレって省略するの知らなかったよ。あー。切ない。

しかもまだ連絡取ってるのな。聞いたよ。何を言うんだよ。教えてくれよ。

おっさんの恋終わってないじゃないか。未練があるのか。あるんだよな。

可愛いもんな。胸も大きいし。でも結婚したんだぜ。引越して県外じゃないか。

これ以上何ができるんだよ。何を連絡するんだよ。無理だよ。無理無理。


そんなおっさんの恋をいまでも俺は悲しいと思う。まだ呑み込めない。


























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冴えないおっさんの恋 @naru333

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