肺炎から胸膜炎になって……
七倉イルカ
3月18日~4月19日までの出来事
本日4月19日の診察で、肺炎、胸膜炎共に完治との診断結果をいただきました。
みなさまには、色々とご心配をおかけしました。
近況ノートで、肺炎発症をお知らせしたのですが、細かい経過を書くことが無かったので、ここに備忘録ていどに記したいと思います。
最初に体調の異変を感じたのは、3月18日(土)でした。
と言っても、夜になると37.1程度の微熱が出て、翌朝には平熱に戻っているという感じです。
しかし、また夜になると微熱が……。
病院に行くほどじゃないかなと思っているうちに、昼間も微熱が収まらず、夜になると38度台まで上がるようになってきました。
まさかコロナかと疑い、簡易検査キットを使用してみましたが、これは陰性。
24日(金)には、週が明けたら病院に行こうと決心しました。
と、その日の夕方から、急に右脇腹に痛みが出ました。
浅く呼吸をしている分には問題が無いのですが、息を深く吸うと、右脇腹、ちょうど肺の下部あたりに激痛が走ります。
くしゃみが出来ないほどです。
ベタな書き方をすると、くしゃみは、
ハッ、ハッ、ハーーックション。
と言う感じでしょうか。
この「ハッ、ハッ」という浅い呼吸は出来るのですが、次の「ハーーッ」と大きく息を吸い込んだ瞬間、ぎゃっと痛みが走り、寸前まで出そうになっていたくしゃみが止まるほどです。
なんだ、これは?
何の症状だと思い、ネットで調べてみると、肋間神経痛の症状にそっくりです。
これは、長く続く微熱と関係があるのだろうか?
微熱の症状とは別に、肋間神経痛になったのだろうか?
よく分からないまま、27日(月)に、近所のクリニックに向かいました。
このとき、右脇腹の激痛はやや収まり、なぜか両胸の鎖骨の下あたりに別の痛みが生まれていました。
診察時、18日からの症状を説明し終えた後、ひとつ不安になったことがあったので、先生に、こう言いました。
「まさかと思うのですが、肺炎かどうかも心配です」
実は、過去、身内の中で、風邪の症状で病院に行き、薬を処方してもらったものの、一週間たっても症状(主に微熱)が収まらず、再度、病院に行くと、肺炎が進行していたということがあり、それを思い出してのことでした。
レントゲンを撮り、改めて診察です。
先生は、レントゲン写真のチェックと触診をし、
右脇腹、両鎖骨下の痛みは、肋間神経痛ではない。
帯状疱疹かと思ったが、皮膚に水泡などは現れていないから、これも違う。
血栓、気胸も、レントゲンからは確認できない。
筋肉痛かも知れないが、押して痛くないなら、これも違う。
と、説明をしてくれました。
結果、よく分からないとのことです。
よく分からないということは不安でしたが、肺がん、血栓、気胸など、大変な病気では無いと診断され、そこは一安心です。
微熱については、風邪だろうと診断され、三日分の抗生物質を処方していただきました。
当日27日(月)に抗生物質を服用。
翌日28日(火)にも抗生物質を服用。
そして、29日(水)の明け方5時、そろそろ眠ろうかと、ベッドに横になった途端、胸部中央に激痛が走りました。
い、痛い……。
なんだ、この痛み。
これも、右脇腹、鎖骨下の痛みと同じ痛みなんだろうか?
と言うか……、痛い。
これは、がまんしていたらマズイ痛みのような気がする。
6時までがまんしましたが、結局、救急車で、急患を受け入れてくれる国立病院へと運ばれることとなりました。
病院に到着すると、ストレッチャーから診察台へ移され、シャツ、Tシャツを脱がされ、胸に四ヶ所、マジックでチェックマークを書かれます。
あと、靴下を脱がされ、足の甲に+と-のマークも書かれました。
(これが何なのか、調べてもよく分かりません)
医師、看護師の方々の手際の良さは圧巻で、気が付くと、血圧、心拍数、酸素濃度をモニターされ、生理食塩水の点滴を打たれていました。
そして、造影剤を打って、CTスキャン。
CTスキャンの結果が出ると、緊急外来担当の先生からこう言われました。
「胸膜炎でしょうね。
肺を包む膜が、炎症を起こしているようです。
もう少ししたら、呼吸器科の先生が来るので、改めて診察してもらいます」
胸膜炎。
初めて聞く症状ですが、原因不明だった痛みに名前がつくと、何故か安心します。
しかも、炎症なら、たいしことはなさそうな気がしました。
診察開始時間を待つ間、スマホで『胸膜炎』を検索してみます。
胸膜炎に対しては、胸膜炎そのものを治療するのではなく、胸膜炎を発症させている原因を治療するというようなことが書かれています。
そして、胸膜炎の原因として考えられる病気の例として、肺炎、がん……。
……がん!?
クリニックでの診断で、肺炎に関しては何も言われていませんでした。
そのため、私の頭の中では、胸膜炎発症の原因から、肺炎は除外されていました。
私は、元喫煙者です。
二年前から禁煙をしていますが、それ以前は、一日二箱は吸うような喫煙者でした。
……でも、まさか。
……ほかの原因もあるみたいだし。
この時点では、「まさか、大丈夫だよね」と、少し引きつった笑いが浮かぶような心境です。
診察時間が始まり、呼吸器科へ移動。
そこの窓口で、改めて問診票を記入します。
名前、年齢、性別、アレルギーの有無、現在服用している薬の有無、過去に大きな病気、または手術は……などの項目をチェックしていくと、最後に、こんな項目がありました。
● がんの場合、誰に告知することを望みますか? 『本人』、『家族』に告知する。
……えええ!
今まで、何度か問診票を書いたことはありますが、がんの告知に関する項目を見たのは初めてです。
え、なに……。
そんな項目が必要なほど、ここで診察を受ける人のがん発見率は高いのか?
「まさか」と思いつつ、もう引きつった笑いも出ません。
問診票を提出した後、レントゲンの撮影をし、その後、看護師さんの指示で、診察室の前にある長椅子へと移動しました。
『呼吸器科』と書かれた診察室のドアが三つあります。
各ドアの上に、モニターが設置され、とある映像が繰り返し流されていました。
映像の内容は、がんと診断された場合に受ける、緩和ケアについての説明です。
モニターに流れる映像を見たとき、「もしかしたら、がんかも知れない」という考えが、「たぶん、がん」に変わりました。
色々と考えが浮かびましたが、その中で、自分が気力をもって対応できるのは、
診察室で、がんと告知されても取り乱すまい。
残された家族が困らないように、葬儀等の手続きは、生きている内に済ましておこう。
この二つぐらいだなと感じました。
黒歴史や闇歴史や暗黒歴史のフォルダなどの抹消もしなければならないのだろうけど、残された短い時間を、そんなことに使う気になれるのだろうか……。
でも、緩和ケアを受け、カウンセリングで気力を取り戻せば、そのあたりの作業は出来そうだな。
そういう気力を取り戻すための緩和ケアでもあるんだろうな……。
いつか読もうと積んでいた小説、いつか見ようと積んでいたDVDは、もう見ることはないんだろうな……。
などと思考がグルグル回っていると、診察室へ呼ばれました。
先生はレントゲンの写真とCTスキャンによる画像をモニターに映しながら、
「この肺に沿った白い部分が、胸膜に炎症を起こしている部分です。胸の痛みは、この炎症によるものです」と、白い部分を示しました。
次に、「この白い部分、これは肺炎による炎症が起こっている部分です」と、説明してくれました。
……肺炎?
……がんでは無くて、肺炎?
「……じゃあ、胸膜炎の原因は肺炎ですか?」
「そうですね」
「がんではない?」
「がん?」
「肺がんとか」
「ん~~、見る限り、肺がんの症状は出ていないですね。
と言うか、なぜ、がんと?」
「ネットで調べたら、原因のひとつにがんがあると」
「ネットに影響され過ぎですね。
後で、痰を採集して、検査に回します。
では、一週間後に、また来てください」
その日は、点滴で抗生物質を投与され、三種の抗生物質を処方してもらい、帰宅しました。
一週間後の4月5日(水)
血液検査、レントゲン撮影を受け、二度目の診察です。
「だいぶ、良くなってきていますね」
「先生、くどいようですが、肝臓がんや大腸がんという可能性は……」
「がんが原因の場合、血液の数値に、何かしらの異常が見て取れるはずです。
だいじょうぶですよ。
では、また二週間後に」
そして本日4月19日(水)
血液検査、レントゲン撮影を受け、
「肺炎は治ったようですね。
胸膜炎も治まっています」と言われました。
完治です。
ちなみに、このとき、最初に診察を受けたクリニックでは、肺炎と診断されなかったので、がんの可能性を疑ってしまったと話すと、レントゲンだけでは、肺炎を見つけられない場合があると教えていただきました。
血液検査をすれば、確実に分かるということも教えていただきました。
勘違いとは言え、これほど、自身のがんの可能性を身近に感じたことはありませんでした。
この先、生活習慣、健康管理については、つくづく気をつけねばと思うようになった体験です。
そして、それでもなお、将来、余命宣告されるような事態になった場合、その時点で、すでに終活を終えており、残る日々は、心穏やかに、小説を読み、映画を鑑賞し、家族と過ごせるよう、今から少しずつでも準備をせねばと思うようになりました。
みなさまも、健康管理には十分お気を付けください。
肺炎から胸膜炎になって…… 七倉イルカ @nuts05
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