避役

羽田 共

避役


僕は左右別々に眼を動かすことができる。


僕はバランス感覚がいい。


僕はとても素早く、とてもだ。


僕は、何色でもない。



今日もじっと動かず待ち続ける。

喉が渇いた。もうずっと水を飲んでいない。

それでも僕はただ待ち続けるだけ。


左の眼にまた映った。

今日もふよふよと視界で浮かぶ。

捕まえられるだろうか。今日もそう考える。

でも、喉が渇いた。

結局今日も捕まえられないまま。


右の眼に映る。

ほとんど泥の水溜まりが、遠くに見える。

どうしようもなく喉が渇いている。

でも泥なんて、飲みたくない。

結局今日も喉は渇いたまま。


綺麗な水が飲みたい。

誰もが綺麗だと思う、そんな水を。

ただただ僕は、待ち続ける。


指趾ししから力が抜けていく。

僕は枝から落ちていった。


ジクジクと痛いけれど、もうどうでもいい。

喉が渇いた。

結局最期まで水は飲めなかった。

これまでは飲めていたのに。

広い広い空が眼に映る。



僕の世界がぼやけていく。

何色にでも成れたはずなのに。


僕は今、何色なのだろうか。


避役カメレオン

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