二十二年 十二月  「アルパカの後ろ姿」

 羊に駱駝ラクダと書いて羊駱駝アルパカと読みます。純白の巻き毛で細い首。人懐こく綺麗好きで愛くるしい眼差しの動物なので、モフモフ動物の中でも人気があります。そのフワモコの毛並みは人間に愛され、長く貴重な家畜として飼われてきました。そんなアルパカですが、南米のアンデス山脈の標高3500m~5000mの高地の生まれなので、日本では夏には毛を刈り取ってやらないと熱中症に罹るおそれがあるのです。そんなわけで「アルパカ」と検索すると頭部以外さっぱりした変な生き物がヒットします。そのアルパカの後ろ姿を、何らかの季語とともにどんな句を詠めと言うのでしょうか。わたしには夏井先生がわかりません。



 羊駱駝やアコンカグアに星ぞ降る


 アコンカグア山は標高6960.8mの南米最高峰です。空気が希薄なので天体観測にはうってつけのその山に、今夜も尾を引いて彗星が流れます。そんな景色を見て育つとアルパカのように温厚な性格になるのでしょうか。季語は「星ぞ降る」で秋です。(未提出の句です)



 羊駱駝の睫毛に六花ろっか旅の空


 急峻な山道をアルパカ連れの家族が下ってゆきます。雪に閉ざされる前にふもとの町へ移り住むのです。背の高い父親が不安そうに空を見上げます。ちらほらと降ってくる雪の結晶がアルパカの長い睫毛にとまりました。季語は六花で冬です。(これも未提出です)



 「俳句スイッチ・エピソード1」は今回が最終回です。

  長々とお付き合いいただきまして、ありがとうございました。

                       

令和五年 水無月    来冬 邦子

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俳句スイッチ エピソード壱 来冬 邦子 @pippiteepa

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