幼き頃魔獣を襲われている所を助けられたヒロインがその後聖女に選ばれ、2年に渉巡礼の旅と、その旅を終えても続く聖剣に宿る邪悪な魂からの肉体を伴わない凌辱を受け、人として持ちうる感情が希薄となり、3つ数えると感情が無になる、所謂人形と成してしまう。一方ヒーローは、亡国人の血を引いた容貌から自他共に疎み疎まれ、結婚願望が無いまま、騎士として職務に専念するのみの生き方であったが、聖女は、巡礼後古来より王族かそれに列する家門に嫁ぐ慣習に、今世の聖女相手に貴族派閥のバランスを考慮して似合う殿方がいない為、聖女自ら選んだ相手が、このヒーローとなるも、彼は望まない婚約に嫌気が差し、婚約時に贈る誓約錠を安価品を婚約者に嵌めたり、極力避ける事で婚約解消を望んだりするも、彼女の感情の意思を確認する為に、左右の挙手で是か否を求め、次第に打ち解ける様になり、感情が保てる時間が長くなると、それまで聖女として魔獣出現の抑止に努めていた力が弱まり、王都内にまで魔獣が現れ、周人の非難は聖女を娶る亡国の民の血を引く彼に向けられ、2人は一時引き離されるも、お互いすべき事を全うし、再び今度こそ永遠の愛で結ばれる展開に感激しました。
只、古からの因縁、聖女・聖剣・王家・聖堂及びヒーローの先祖との関係がイマイチ理解出来ず歯痒く感じましたが、ヒロインの一途さとヒーローの不器用ながらヒロインに次第に惹かれていく様、例え革紐だけの婚約誓約錠さえ厭わず腕に巻かれる様の美しさに言葉がありません。
感情を無くした聖女さまが婚約者に指名したのは、獣のように粗暴な黒騎士、クウィル。
恋愛に興味がない上に、会ったこともない聖女さまのご指名を受け、適当な婚約錠を送ることから始まります。
聖剣との長年にわたる巡礼で感情を無くした聖女さまと、どちらかというと自分の感情に素直な騎士の、切なくて、幸せな恋物語です。
クウィルが所属する騎士団の面々、ライバルの色男など、魅力的なキャラクター描写に心躍り、読むのが本当に楽しみな作品でした。
おもしろすぎて、順番が回ってきたら気合いを入れたほどです。
なにより、聖女さまの芯の強さが、女性として好感が持てます。
リネッタが強かったから、彼女は、婚約者をはじめ、いろんな人を救えたのかもしれません。
途中、ちょっと、設定が理解しきれないところがありましたが、そんな細かいことは気にならないほど、本当におもしろい作品をありがとうございました。
今のところ、カクヨム内恋愛ものの中では、私史上No.1な作品だと思います。
星にえらばれた救国の聖女。
二年間の巡礼を終えた聖女は例外なく感情を喪失してしまいます。
そのおおきな代償に対して与えられるのは、継承権二位以下の王族、あるいはその縁者に嫁ぐという栄誉でした。
しかし、今代の聖女リネッタがえらんだのは、その瞳の色から、野蛮で穢れた血が流れているといわれる黒騎士で……?
物語は、黒騎士のクウィルが王家から婚約の打診をされるところからはじまります。
クウィルは不誠実極まりない理由でこれを引き受けるのですが、リネッタへの態度はわりと誠実。
初対面時には出迎えもせず、自宅には寄りつかないし、手紙の返事は三行、贈り物のひとつもしないけど、うん。大事なところではね、ちゃんと誠実です。ほんとうです。信じて!
聖女はなぜ感情を失うのか。
とても痛くて重いテーマですが、この作者さんならではの言葉えらびのセンスとリズミカルな筆致がどんどん読ませてくれます。
リネッタとクウィルをとりまくサブキャラたちもとても魅力的。彼らの平和なわちゃわちゃをずっと見ていたいです。
恋愛もちゃんとあるのですが、それだけではない。心の深いところにしみてくる物語です。ぜひおためしあれ。
実はiらんどに掲載されていた時期からこのお話が大好きで、今回カクヨムに掲載されているのを知り、小躍りしました。
感情の無い聖女、リネッタ。
伯爵家の「次男」ではあるものの、養子で実はある一族出身のクウィル。
この二人が織りなす恋愛ものなのですが、甘い描写というより、深くて泣ける描写が多いです。iらんどでは仕様上ほとんど一気読みして脳みそが空っぽになり、ずうっと涙を流していました。
今回は一ページ一ページめくり、ずっと涙を流していたので、読むのが遅くなっちゃったと思います。
クウィルがリネッタに感情を思い出されるために、「快と思えば誓約錠のある左手を。不快と思えば右手を」あげてください、と不思議なことをお願いするのですが、ページをめくるごとにその効果が明らかになってきて、彼の不器用な優しさに涙しました。
リネッタの感情が消えていく過程がある手帳に綴られているのですが、そのシーンは涙なしには読めませんでした。
クウィルとリネッタが少しずつ近づいていく様は嬉しくて感動で泣きました。
リネッタに感情がない理由が明かされた時、そしてクウィルの過去が明かされた時、今でもある壮絶な理不尽を思い起こし、悔し泣きをしました。
今こうしてレビューを書いている時も泣いています。
こんなに優しくて泣ける話があっていいものか……。ずっとうちふるえています。