血と運命に翻弄された、深い深い、愛の物語

 星にえらばれた救国の聖女。
 二年間の巡礼を終えた聖女は例外なく感情を喪失してしまいます。
 そのおおきな代償に対して与えられるのは、継承権二位以下の王族、あるいはその縁者に嫁ぐという栄誉でした。
 しかし、今代の聖女リネッタがえらんだのは、その瞳の色から、野蛮で穢れた血が流れているといわれる黒騎士で……?
 
 物語は、黒騎士のクウィルが王家から婚約の打診をされるところからはじまります。
 クウィルは不誠実極まりない理由でこれを引き受けるのですが、リネッタへの態度はわりと誠実。
 初対面時には出迎えもせず、自宅には寄りつかないし、手紙の返事は三行、贈り物のひとつもしないけど、うん。大事なところではね、ちゃんと誠実です。ほんとうです。信じて!

 聖女はなぜ感情を失うのか。
 とても痛くて重いテーマですが、この作者さんならではの言葉えらびのセンスとリズミカルな筆致がどんどん読ませてくれます。
 リネッタとクウィルをとりまくサブキャラたちもとても魅力的。彼らの平和なわちゃわちゃをずっと見ていたいです。

 恋愛もちゃんとあるのですが、それだけではない。心の深いところにしみてくる物語です。ぜひおためしあれ。

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