あとがき

 お読みくださいましてありがとうございます。

 この物語は二〇一一年五月に書いた物語です。

 その日、私は東京の中野で待ち合わせをしていました。

 たぶん中野駅までの時間を読み違えたために、私の到着が少し遅れそうになりました。それで携帯電話で「いま中野駅に着きました」というメールを送ろうとして、見直したところ、ミスタッチで「中野駅」が「中野絵美」になっていました。

 え?

 それ、だれ?

 ……というようなわけで、自分の家に帰ってから猛然と書き始めたのがこの物語です。

 しかも、恐るべきことに、いま調べてみると、八時間ほどで書き上げています。

 たしかに現在よりは分量が少なかったのですが、「中野絵美」というキャラ名しかないところから、八時間……。

 うーん。

 いまでは、そんなことはとてもできません。

 その当時もそんなに若くはないですが、それだけの集中力があったんだな、と。

 そんなわけで、そんなに若くなかったとはいえやっぱり「若書き」的なところはありましたが、大きく直すことはせずにここに発表しました。

 書き上げてからコピー誌にして同人誌即売会で発表したのですが、そのとき作った数冊がぜんぶ売れてしまったあとで、次はどういう形で発表しようかとしばらく考え続けました。

 そのときの情景も覚えています。東日本大震災の後で電気の使用量は抑えられ、電車も間引き運転されていました。その電車を、現在は存在しない小田急線下北沢駅地上ホームの井の頭線ガード下で待っていたのも覚えています。そのとき、このホームがまもなく地下化されて存在しなくなることは知っていましたが、感覚はそれを受けつけませんでした。そんなことは絶対にあり得ないだろうと感じていたのです。

 そのあと、一部、書き足したのですが、けっきょく刊行することはありませんでした。そのときの原稿をもとにして、そこから十二支がひとまわりした今年、この物語を「カクヨム」でお届けすることができました。

 それでは、また、次の物語でお目にかかりましょう。


 二〇二三年五月一一日

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木漏れ日の水彩画 清瀬 六朗 @r_kiyose

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