ショーンの漫画

 する事がないので何か読んでいる物はないかとマグワイアが言ったので、ショーンは書斎でマグワイアの好みそうな本を探した。

「さすが作家さんの家、色んな本がありますね。」本棚に並んだ書籍を見てマグワイアが嬉しそうに言った。

 ショーンが本を探しながら言った。

。」「刑事さんはやめて下さい。」「何も事件があってきた訳じゃはいんですから。」マグワイアが遮って言った。

 ショーンは言い直した。「マグワイアさん。」

「サティさんの事件、 どんな風に捜査されたんですか?」

「うーん。いやー。あまり進展していません。」

 マグワイアが首を捻って捜査具合について話した。

「なんせ1ヶ月前もちょうどこんな雨が続いて遺留品やなんか全部消えて流れてしまいましたからねー。」

 ショーンは答えずに本棚の列を探した。

「サティさんとは事件の日の近くにお会いになりました?」

 マグワイアが並んだ本を見ながら聞いた。

「いいえ。元々そんなに会ってた訳じゃないんです。」

「打ち合わせの時とかは殆ど電話でしてました。彼はロンドンで仕事をしていたし、だから月に1回、締切の時だけ会いました。原稿に行き違いがあったら大変なので、来てもらってました。」

「あぁー。そうですか、そうなんですか。じゃあサティさんには前の締切の時に会ったっきり?」「えぇ。」ショーンが応えて頷いた。

 マグワイアが言い続けた。

「スコップみたいなものでめった打にされたみたいですからねぇー。」

「そうなんですか?」

 ショーンが本の列を指で平なぞりしながら言った。

「あれ?ご存じないんですか?」

「事件があったのは知ってますけど、見るの嫌なんで詳しい事は見てません。」

「ぁあ、ぁあ、お知り合いの方ですからねぇー。当然です。」

 そしてオェッとした顔をして改めてマグワイアが言った。「あんなむごたらしい殺し方でねー、」ショーンが頷いて釣りの本を渡してその場から離れていった。


 そのショーンを見送ってマグワイアは溜息を吐いた。

 そして近くの棚に置いてあるショーンの漫画の本を取ってそのページをいくつかめくった。

 そこには色々のスクリーントーンがいっぱい貼られて、ヒロインの後ろにはたくさんの花が開いていた。

 後ろの小塔や、小さな村まで細かく丁寧に描いてあった。




「行くぞ!」 主人公の少年が、剣をさして仲間たちに言った。

 2本の道が描かれた内の端の1本の道を登っていった。登るとまた大きな道と狭い道とに分かれて大きな道を進んだ。険だって上に聳上がる崖道を上がっていった。穴道をくぐってもまだ道が上に伸びた。

 仲間の一人が「まだかよ?」と声を掛けた。窟を入り、

主人公が言った。

「あの岩坂を越えれば飛燕草の丘に出る!」


ヒエンソウの丘が広がった。周囲に景色が広がった。削りとった小点の薄雲のスクリーントーンの影がいくつもかかっていた。

 向こうにはミントの村が見える。その向こうにはファリミエルの神殿が見える。北にはプルヴィラの港。その横に低地を流れる川脈がある。 パルミシオン砂漠のなかに薄霧を透かしてみえるベレーヴ城が見えた。白いヒエンソウがそよいでいた。

 一人が言った。

「もっと上まで行こう。」



 周囲に雲かかる頂上まで来た。

 眼下に世界が見渡せた。彼方の聳えるパラミーシ山脈が見渡せた。さっきより低く山脈の山々は見えた。

 重なる彼方にはドルミーエの厳山が聳えていた。

「ステラ姫だっ!」魔族の仲間が指差して言った。

 眼を凝らすと斜めの方角に首都が見えた。


 首都・タナ・テラではステラ姫の婚礼が執り行われていた。 この王国を治める武族の王の長子デリングと、魔族の首領の第一王女であるステラ。かつて———————…………


世界を治めていたのは魔族。今世界を治めている武族と魔族はこの世界の覇権を争って百年もの間争闘していた。しかし武力にたけて知力の劣る武族は頭脳をもつ人間と取り引きした。動機を造り、機械文明を発達させのだ。蒸気を、艦船を、そして、不思議な武具を。

 機械によって魔族と同等の魔導の力を得た武族は百年来の争いに勝利し、この国を2000年来支配していた。武族がその覇権を握った時、強力な力をもつ魔族は追い遣られ、迫害され、数を減らしながら生きてきた。魔族の数は十万分の一にまで減っていた。

 それから2000年がたち、武族と魔族は和解した。その印に魔族の姫、ステラが武族の王の跡継ぎ、長子デリングに嫁がれることになり、その婚礼が、パレス・テナ宮でこの日執り行われていた。国民が総出てお祝いしていた。

 ステラ姫が婚礼衣装を纏って通り過ぎた。

 白い裳裾を引き摺って回廊を、柱を挟んで見えなくなりながら一歩、一歩、進んでいく姿が見えた。


「次はどこへ行く?」結婚式から目を離して主人公のジェダイを振り返り、下を見回して魔族のアユネーテが言った。パルミシオンの砂がサ、アァァァーとペレーヴの前を薄雲らせた。

 岨の一番尖頭に立って岩上で相談した。



 三人の子どもが"勇者ごっこ"をしていた。

 "人間"のジェダイ。"魔族"だが殆どその力を持たぬアユネーテ。尖った耳をして点々のスクリーントーンで肌の色が表されたミッペ。

モンスターの族、それからもう一つ、昔5つの族の一つといわれていた聖獣はすべて殺され、霊獣となって鎮守の森や各地に散らばっていた。種類によっては武族と同等の力をもつモンスターは武族と共存していた。 そして人間、頭のいい者は上級機関に仕えながら一般民として武族に従って生活していた。

 青い衣を着た人間の13歳のジェダイは、目的地に向かっていた。トーンの周囲をのこして中を切り取った白いうすぐもが3人の上をかかっていった。

 周りに薄雲のかかる尖頭の上を、うつ伏せになり話し合いする三人の後ろに黒い羽が上下に羽ばたいていた。

 3人は後ろに"鳥"が飛んでいるのに気付かなかった。

 もう下がろうとした。下がって降りようとした時、「ぅわっ!」とアユネーテが叫んだ。

 前に大きな黒い "鳥"が降りて来た。そして止まるように浮遊していた。鳥には少年が乗っていた。

………——————パレス・テナ宮で控えの一室。「クリスティアンはいないのか?」婚礼式場で次男、クリティアスが苛立ちながら三男、クリスティアン皇子のことを聞いた。

「はい。他出されております。」

 クリティアスは舌打ちをし、気に入らぬ顔をして「また空でも飛んでいるのか。」

 大臣フロドは

「どうも魔族が風の力を得ている。強力になっているようだ。」

 と小声をして言った。

 家臣の一人が隣の衛兵に言った。「クリスティアン様は飛燕草の丘に行っている。」

 アユネーテは言った。「誰だお前!」

 鳥に乗って向こうを向いていた少年は振り返った。そして冷たく見下した。「お前?」——————————……………

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コルマス・ファンタジア コーラカル @ko-lakalu

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