童話ATM

山田貴文

童話療法

「久しぶり。元気そうじゃん」


「おかげさまで」


「前に会った時は横暴な上司と理不尽な客に痛めつけられて、死にたいとか言ってたよな」


「それがな、いい対処方法が見つかったのだよ。童話療法を受けている」


「童話?」


「そう。10歳までに読んだ童話をシステムに登録して、そこから物事の解釈や、どう対処すべきかのヒントをもらうの。子供の頃に読んだ内容は潜在意識に刻み込まれているらしい」


「どういうこと?」


「たとえばイソップ童話を思い出して、変なことを言うやつにとんちの聞いた返しをこうしたらとか。最適な方法を提案してくれるわけよ」


「なるほど」


「アンデルセン童話なら滅びの美学。美しいバッドエンドを学べるぞ」


「それ嫌だね」


「一番気持ちよかったのはグリム童話だな。ヘンゼルとグレーテルや赤ずきんは最高」


「嫌なやつを焼却炉に入れたり、腹に石詰めて井戸に落としたりしたのか」


「そうそう」


「たとえ想像しただけだとしても、スカッとしそうだな」


「いや、想像だけじゃなくて」

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童話ATM 山田貴文 @Moonlightsy358

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