最終話 夜を照らす光

 闇が崩壊する少し前。闇の内部で光夜がエネルギ―を溜めていた。

 自分の体が爆発するほどのエネルギーを放出すれば。

 闇を崩壊させる事が出来るかもしれないと考えたからだ。


 だが彼には死ぬつもりなどなかった。

 爆発の衝撃に耐えて、自分も生き残れる。

 自分の力を信じて、最大の力をエネルギーに込めた。


「へへ。流石にそこまで甘くないか……」


 光夜は無意識で、死を覚悟していた。

 エネルギーを放出する瞬間に、自分が助からない事に気が付いた。

 そんな時。先程まで死闘を繰り広げていた仮面の人物が再び姿を現す。


「よう、無表情野郎。最後まで邪魔してくれるな」

「安心しろ。愛想を付けて、助けに来てやった」

「お前……。もしかして……」


 仮面の人物は仮面を外し、素顔を見せた。

 光夜はその顔を見て、ニヤリと笑う。

 仮面をつけていた人物も、同じ笑顔を光夜に見せた。


「お前らのおかげで、意識を取り戻す事が出来た」

「へえ。それにしても良く俺の行動が先読み出来たな」

「当たり前だ。そうだろ?」


 その人物は青いオーラを纏った。

 それは光夜の異能力、ブルーヒートと全く同じものだった。

 エネルギーを溜めて闇を払っていく。


「絶望が生まれる所に希望がある。死がある所に、生がある」

「なるほど。コイツを止める方法はそれか」

「ああ。だが俺には時間が無かった。だからこうするしかなかった」


 光夜はその人物から思いを受け取り、剣にカートリッジと刺した。

 優也の異能力を使ってテレポートで、闇から逃げ出す。

 その人物はブルーヒートのエネルギーを、最大まで溜めた。


「希望は繋いだ。後はこの時代で蹴りを付けろ」


 希望をつないだ戦士は、溜めたエネルギーを一気に放出した。

 闇が崩壊する程の爆発が、内部で発生する。

 その人物が最後に口にした言葉。


「俺の子供達を頼んだぜ……」


──────────────────────────────


 光夜は現在、闇が誕生した場所に向かっていた。

 本来なら人間が到達できない、地球の中心部。

 だがブルーヒートで体の強度を上げれば、耐える事が出来る。


「闇を消し去ろうとしたのが、間違いだった」


 光夜は闇が溢れた穴を通って、地球の中心部に向かう。

 異能力を最大限に使って、熱と空気圧に耐える。

 未来から受け取った最後のチャンスを、つかみ取るために。


「死に抗えるのは生きる希望のみ……」


 光夜は闇が誕生した場所に到達した。

 その場所に自分の思いを込めた、エネルギーを送る。

 仲間達の生きたいと言う思いを背負い、彼は必死でエネルギーを送り続けた。


「やべぇ……。体力を使い過ぎた……」


 今までの戦い。闇への反撃。中心部への到達。

 光夜の体力は限界まで来ていた。

 それでも諦めず、光夜は地球にエネルギーを送り続ける。


──────────────────────────────


 地上では闇が集まり、再び完全体になろうとしていた。

 だが同時に地面全体から青い光が発せられる。

 その場にいた皆は気づいた。これは光夜の力によるものだと。


「光夜……! 光夜がこの下で戦っているんだ!」


 巫女は光る地面を見下げながら、光夜の力を感じ取った。

 せめて自分にも出来る事をと思い、地面に手を当てる。

 そのまま自分の異能力を使って、地面にエネルギーを与えた。


「闇は消し去すものではなく、照らすもの。そう言う事だよね?」


 地面にエネルギーを送る巫女。その肩を掴むものがいた。

 優也、美里、瑠璃。そしてアリスとユウキ。

 チームムーンライトが闇に光を灯そうと、地面に力を送る。


「私達の思い……。生きたいと言う願い。全て受け取って!」


 地面を伝わり巫女の異能力は、光夜の居る中心部に届く。

 光夜は体から力が溢れるのを感じ取った。


「ありがとう。確かに受け取ったぜ!」


 光夜は地上に向けて、サムズアップを返した。

 そのまま地球にエネルギーを送り、生への欲求を刺激する。

 この星の皆の生きたいと言う思いを込めて。地球に力を渡した。


「俺達は夜を照らす光! チーム『ムーンライト』だ!」


 彼らの光は地球を青く照らした。

 その光は最後に現われし者を照らす。

 光に包み込まれる様に闇は徐々に姿を消していく。


「闇が照らされていく……」


 闇に飲み込まれたものが、元の場所に戻っていく。

 全てが照らされ地球に希望が戻っていく。

 始めりの穴が塞がれる瞬間。青い光が空へと飛んだ。


「へへ……。ちゃんと面倒見るから安心して眠りな」


──────────────────────────────


 最後に現われし者は、深い眠りに就いた。

 人類が地球への感謝を忘れない限り。

 再び姿を現わす事はないであろう。


 全てが終わった後、光夜は皆の下へ帰還した。

 チームメンバーは生きていた光夜に近づき、その背中を叩いた。

 彼はその名前の通り、暗い夜を照らしたのだ。


「この野郎! 心配かけさせやがって!」

「本当! 死んだものだと思ったよ!」

「バカ! バカ、バカ! 本当に良かった……」


 巫女以外のみんなが、それぞれ光夜に言葉をぶつける。

 巫女だけはニコッと笑って、2人の未来人を抱きしめた。

 

「守れたよ……。今度はちゃんとね」


 2人はその言葉を聞いて、瞳に涙を浮かべた。

 今までの努力が、ようやく報われた気がした。


「良かった……。本当に良かった!」


 異能力を使い、次々と凶悪な敵と戦い続けたチームムーンライト。

 だがこれは彼らの特別な物語ではない。ほんの1ページに過ぎないのだ。

 これからも彼らは戦い続ける。平和を守る為に。闇を照らす為に。


 彼らは夜を照らす月。太陽の光を反射し、闇で輝く存在。

 彼らが居る限り、凶悪な敵が地球を破壊する事はあり得ない。

 そしてその想いは……。子供の世代までしっかりと受け継がれていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

異能凶悪犯罪対策課、ガードの事件簿 @kurekyurio

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ