第四刃禁じられた遊興の茶会②


「あら、賀茂照子かもてるこお姉さん、久しぶり」


禊瀬月兎は明るい笑顔で言った。斬新なドレスで肩の両側だけ穴が空いている。それは遊郭の夜鷹のような着方であった。


左肩に描かれたタトゥーは世界終末時計ドゥームズディクロックだ。


今ではそれが不気味に見える。ロボットは人間に似すぎると不気味の谷となるがその逆はどうだろう。


冷酷な殺人兵器というのは軍人や傭兵、殺し屋にとっては最高の誉め言葉である。


「私の子供はね、もしかしたら殺人をしたいんじゃないかって相談をしたいんだよね」


禊瀬月兎がそう言うとママ友の二人目、ジェーン・スワンが苦笑いする。


彼女はイギリスでアロマフレグランスを学んでいる、白魔術と黒魔術の差異は薬学的、医学的、善意で人間を癒すのが白魔術、その逆は毒、犯罪的、悪意で人を害するのが黒魔術、彼女は白魔術師である。


ジェーン・スワンが異変に気づいた。目の前の彼女の両面は正気を失っている。


狂気に満ちている。カリギュラ効果というのがある、やってはいけない事に駈られる無意識の衝動、そして黒い羊の仮説もある。


両親が善人で人格者でも子供は悪人になるらしい。


「………うーん、やめたら?」


賀茂照子はとりあえず告げた。


禊瀬月兎はそれを肯定ひていした。


「そうね、なのは良くないね」


賀茂照子は聞きたくない言葉を聞いた。


ジェーン・スワンは疑問を持った。


「鬼にさせるのもよくないわね、日本文化では魔女ならぬ鬼女というのがいるからね、、どうだろうね」


禊瀬月兎はにやりと笑わなかった。


「でも、鬼切丸の鬼結城は私の息子みたい、私は鬼になっても子供を守りたいわ」


賀茂照子は彼女の歪な優しさを今、知る。


彼女が手に持っているスコーンをよく見たら鼻だった。紅茶は血液だけで満ちていた。


賀茂照子とジェーン・スワンの目の前にある紅茶とスコーンは本来あるべき形だ。


後漢の高誘は言う。


「窮奇は天神である。北方におり、道足、両龍に乗り、形が虎に似ている」


『山海経』にならって書かれた前漢初期の『神異経』では、前述の「海内北経」と同様に有翼のトラで、現在ではこちらの姿の方が一般的となっている。人語を理解し、人が喧嘩していると正しいことを言っている方を食べ、誠実な人がいるとその人の鼻を食べる。悪人がいると野獣を捕まえてその者に贈るとしている、善人を害するという伝承がある反面、宮廷でおこなわれた大儺たいなの行事に登場する十二獣の中にも窮奇という名の獣がおり、悪を喰い亡ぼす存在として語られている。彼女は窮奇あくま憑きかもしれない。


「夏目友人帳って面白いよね、中国や韓国の妖怪、西洋妖怪、吸血鬼や狼男とも仲良くしたいわ、それって別にいいと思うよね?」


賀茂照子はゆっくり頷いた。


賀茂照子の目の前の禊瀬月兎の背後に狐の九尾が見えた。禊が済んでも、悪や闇に堕ちないという保証は半永久的に保証されない。










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流血刀・甲 飛瀬川吉三郎 @hisekawa

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