かつてイボイボ病を患っていたお行儀の悪い少年マルも、大学生になりました。勉強もさることながら、女性のことも気になるお年頃。大学で知り合った魅力的な女性と恋に落ちます。
その一方で、嘗ての恩師ヒサリ先生への気持ちも変化していきます。マルの心は何処へ向かうのか……。
舞台となるカサン帝国と植民地であるマルの故郷。故郷は政治的な圧力を受け大きな変化の時を迎えています。嘗ての級友達は時代の流れに抗い、翻弄されていきます。その波は、確実にマルとその近しい人達を巻き込んでいきます。
異世界ファンタジーでありラブストーリーでもありますが、マルという天才詩人の素晴しい成長譚です。この骨太な物語を味わうのなら、是非「妖怪の村の小さな学校 《アジェンナ国物語~少年少女編》」から読んでいただきたい。絶対に「読んで良かった!」と思えるはずです。
物語はまだ途上。
この先の展開は荒れ狂う大河となる事は必至です。ぜひ、一緒に追いかけましょう!
最新話の50話まで読んだ段階でのレビューになります。
東南アジアの世界観を持つ珍しい異世界ファンタジーになりまして、この物語は同じ世界観をもつ3作目の小説になります。
舞台は、とある巨大帝国の植民地。テーマは恋愛になります。ただ、その恋愛というのが、ちょっと背徳的で、大人の雰囲気がただよう恋愛小説という内容です。
読み味としては、描写がしっかりと書かれているリアル寄りの文芸寄りのファンタジー小説でして、心の琴線にそっと触れてくるような独特な読み味となっています。ただ、読み手は選ぶと思っていまして、大味なファンタジー小説が好きな人には向かないかもしれないです。ちょっと繊細なイメージが漂うに小説になりますので・・・。
あ、あと、前作も読むとこの小説の理解は深まると思います。もし、この物語を読んで気に入っていただけましたら、前作から読むことをお勧めします!
この物語の魅力はまずなんと言っても、詩人に生まれついた少年と、その才を見出し育んだ女教師との魂の交流です。少年だった彼もいまは帝国一の大学へ進み、恋に悩む年頃になりました。一方女教師は植民地にとどまって……。
つぎにその豊かな世界観が読み応えたっぷりです。帝国と植民地とで異なる習俗や考え方、ふたつの世界が交わるときに生まれる軋轢、それぞれの人たちの思い、それらが単純な善悪や悲劇のフィルターを通さずあるがままに提示されて、うつくしい叙事詩を読む心地がします。
また、人物それぞれの人となりが、行動やセリフから立体的に浮かび上がってくるのも大きな魅力です。いいところも悪いところも弱いところも人間にはあるってことを、やさしい眼差しで教えてくれます。
「異世界ファンタジー」の枠には収まりきらない傑作です。ぜひこの世界を堪能いただきたいと思います。