微妙の魔女と使い魔志望

甘衣君彩@小説家志望

微妙の魔女と使い魔志望

「なんてこった」

 私はカウンター越しに小さな客を見下ろした。現代の店特有の冷たい空気と、どこかわざとらしい音楽の中で。

「坊ちゃん、薬屋はここじゃない。向かいだよ」

 その人間の子どもは私を見上げていた。小さなキャラモノのがま口を両手で持って。どうやら対面にある薬屋と、私の店を間違えたらしい。子どもは首を傾げる。

「でもここ、“ドラッグストア”でしょう?」

「ドラッグストアでは医療用のは扱ってないんだよ。魔女の薬が欲しいんだったら、薬屋に行くことだね」

「魔女さんは作れないの?」

 私はため息をついた。やれやれ、魔法帽子、やっぱり邪魔だな。次の「魔女集会」で返却してやろうか。

「魔女全員が薬を作るなんて思わないことだ。さあ、薬屋に行っといで。私は店番で忙しいんだ」

「ねえ、薬屋の魔女さんって怖い?」

 どうしてそんなことを聞くんだい。怖いけど。

「ぼく、使い魔になりたいんだ。魔女なら誰のでもいい」

 人間が。使い魔。へえ。最近は人間でも使い魔になれるのかい。

「ねえ魔女さん、ぼくを使い魔にしてくれない?」



 断ったに決まってる。

 だって、私は微妙の魔女。

 お転婆魔女のように一緒に成長していくことも、怖い魔女のように他の者を染め上げることも出来ない。ほかの魔女より微妙に魔法が下手で、魔力も少なく、でも取り立てて述べる程でもなく、特別に気にかける程でもない。そんな場所に押し出され、流れのままに流されていく。だから、使い魔にとっても主とするには微妙だろう。

 だけど、石畳の上に真っ青な顔をして倒れている子どもを見つけてしまった。家まで運び込んだ。介抱が終わってから、その子どもはうちに居着いてしまった。使い魔になると言い張って。


 時が巡って十年経つまでの間、私はずっと後悔し続けていた。


 あの時、拾わなければよかった。





 築三十年のアパートの外には、一本の木が生えている。どこの何とも分からない鳥が、パタパタバタバタと、小煩い音を立てて舞い降りてきた。

「ラグ」

 全く、早く起きないかね。使い魔になるって言うんなら、呼びかけたら起きれば良いものを。

「んん……」

 間もなく、寝ぼけた声と布の擦れる音がした。ラグがベッドで縮まったのだ。白い髪だけが布団からはみ出している。もう少年ではなく青年だ。十年前より身長は伸びたが、声はそんなに変わっていない。

「おはようございます、ゾブティエ様」

「お早う。今日は退職の日だよ」

 私は予めオーブンに入れておいた食パンを取りだしながら、素っ気なく言った。自分で素っ気なくって言うのはおかしいもんかい。

「ずっと働いていらっしゃるものだと……」

「何十年も働いてたら、店が怖がられるからね」

 いくら魔女の存在が知られているとしても、同じ老婆がいつまでも働いてるなんて、気味の悪いことはない。あと数十年したら、また働くことになるだろうが。六百歳は魔女でも老年だが、六百五十までは誤魔化せるだろう。焼けた食パンに、市販のジャムを塗りたくる。盆の上に乗せる。それから、ラグのベッドまで運ぶ。これももう、慣れた作業だ。ラグはすっかり起きていた。血の気のない白い顔。今日はベッドを離れるのは難しいか。持病持ちの人間が、よくもまあ使い魔になるなど言えたものだ。

「ゾブティエ様……すみません」

「全く、高いんだよ薬は。私は作れないってのに」

 ラグの赤い瞳が私とは逆の方に動く。私は黙って盆を差し出した。早く受け取れ、重いもんを長いこと持たせるんじゃないよ。ラグはようやく受け取ると、白い布団の上、腹の辺りに乗せた。

「薬を買い続けるのはごめんだね。十年以内に治さなかったら蹴り出すよ」

 私はラグから目を離し、帽子を被り、使い込まれた鞄を斜め掛けする。あの、とラグは覇気のない声で言った。

「魔女集会まで、あとどのくらいですか」

 あの日から、毎日この質問を受ける。最初は生意気だったのが、いつの間にやら敬語になった。だが、質問の内容はずっとそのままだ。壁にかかったカレンダーを見遣る。

「あと、三年と三百五十日。よく飽きずに聞けるもんだね」

 魔女集会。百年に一度の魔女の祭典。新たな魔女が生まれる魔力獲得の儀、死んだ者を甦らせる召喚の儀があるが、ラグが気にしているのが「使い魔の儀」だ。私は興味がなかったからよく知らないが、どうやら動物を使い魔にする儀式らしい。

「動けるようになったら頑張りな。買い物は行けたらでいい」

 薬とおつかい代の入った籠を、近くの机に置く。あの、とまた聞こえた。

「なんだい」

 ラグがパンを両手で持ちながら言った。

「行ってらっしゃいませ、ゾブティエ様」

 挨拶と家事がしっかりしているのは褒めてやってもいいかもしれない。


 幼い頃のラグは、生意気なものだった。本当に使い魔になるのか聞いたら、「人間が使い魔になっちゃダメなの?」だの「ぼくは本気だよ」だのと平然と答える。そのくせ、持病が出て熱が上がったら、すぐに私に甘えてくる。今は敬語を覚えて、多少はマシになったが。口答えもしないし、甘えてくることも無い。ただーー昼には、電話がかかってくる。

《ゾブティエ様、おつかいに行ってきます!》

 正確には、私が蝶に魔力を込めておいて、ラグが飛ばしたい時に飛ばすのだ。これで、私の耳元でラグの声が聞こえる。病気がそこまで酷くない時には、明るい声をしている。電話は今日で最後になる。この鬱陶しくだらけた時間は、しばらく無くなるだろう。

「要件はそれだけかい」

《あ、えっと……》

 ラグが口ごもったので、続きを促す。

「なんだい」

《お仕事、お疲れ様でした。今日の晩御飯は何がいいですか?》

 たったそれだけかい。私はため息をつく。

「別に退職なんぞ祝わなくてもいいよ。簡単なハンバーグでいい。あと、薬局で薬を貰っておいで」

《はい!》

 そこで、電話は切れた。魔力切れだろう。話した時間はものの一分ほどだ。私は掃除機で店内をはき始める。


「ゾブティエさん、お疲れ様でした」

 夕焼け空の見えないドラッグストアの裏方で、ぱらぱらと拍手が起こった。寒い。帰りたい。こんな事に時間を割くなんて人間はおかしい。いや、魔女の方がおかしいのか。私は社交辞令を多めに含んだ礼をする。

「いやー、ゾブティエさん、よくこんなにも長いこと働きましたね」

 正面にいる店長が両腕を揉みながら話す。たった十年ちょっとの何が長いもんかい。まあ、人間の寿命は八十年だから、人間にとっては長いのだろう。

「何か健康の秘訣がおありで?」

 何、健康の秘訣? 聞き返そうとして、やめる。代わりに私は、斜め上から落ちてきた埃を見ながら答える。

「こっちが聞きたいくらいだよ」

 小さく手を動かし、風で埃を飛ばした。そんなものがあったら、とっくにラグに試している。食べ物系で言えば、蜂蜜にハッカ飴、ドラゴン卵の白身。あとは、向かいの薬局の薬草。使えそうなものは、少しずつ与えてみた。可能ならば、魔力を混ぜ込んで。幼い頃のラグは、よく「うえぇ……まずい」などと音を上げたものだった。ドラゴン卵は後に目玉焼きにもしたが、あれはダメだったね。どれも効果は無かった……というより、あったかどうか分からない。微妙だ。それ以上苦労するのが面倒になって、最後にはできるだけ働くことを命じた。こんだけ私が与えてやってるのに、何も返さないなんてお互いに気分が悪い。だが、アイツは……

「それでは皆さん、ゾブティエさんがいない分も、頑張って働きましょう」

「駄目だろうねぇ」

「えっ、駄目ですか!?」

 変なタイミングで声に出ちまったよ。パート仲間達が一斉に笑った。ああぁ、気がつけばラグのことばかり考えている。なんだい、アイツは本当に。

 そうしている内に、もう数十分が過ぎた。早く帰った方がいいだろうに。中には一歳児の親もいたはずだ。本当に、たかがパートの見送りの為に時間を割くくらいならーー


「ゾブティエ」


 鋭く、ナイフで突き刺すような声がした。同時に、辺りの照明が暗く、空気が冷たくなる。バイト仲間がひっと声を上げる。いつからドアが開いていたのか。その疑問を私以外の誰も持たないほど、空間が恐怖に包まれていた。

「……なんでお前がここにいるんだい」

「あァん? アタシが存在しちゃいけないって言うのかァい?」

 私は奴を見上げた。奴は、派手な黒い帽子の下の、大きな赤い唇を存分に開いていた。右肩にリスをくっ付けた、このド派手な奴は、向かいの薬屋の魔女。「憤怒の魔女」イーラ。

「ダメに決まってるじゃないか、薬屋。勝手に店の裏方に入るのは不法侵入さね」

「そそ、そうだ! 警察に通報するぞ!」

 店長が似合わないか細い声を出しながら後ずさる。薬屋の魔女は、ヒールと床のぶつかる音を立てながら、店長に近づいていく。

「アタシに指図する気かィ? 店ごと呪い潰してやろうか? アタシの薬屋の前でクスリを売ろうったァ……」

『イーラ、先に用件言えよ』

リスが肩から乗り出した。途端、奴の目がとろんとする。店長から目線を外し、リスをめちゃくちゃに撫でた。

「そうだねぇ、やっきょちゃん♡ちょっと待っててね~ん♡」

 それから私の方に振り向くと、もう怖い顔に戻っている。壁に掛かっていた賞状が落ちる。

「……用があるなら、人間界の常識を身につけてからにしてくれ」

「親切で来たのにその言い草はないねェ! そうもいかないから来たのさ。お宅の坊ちゃんがーー」

ーーラグが?

「ラグがなんだい!?」

 自分でも予期しないほど大きな声が出た。空調の音が急に耳に入ってくる。

「うちで倒れたから、店で休ませてるのさァ! アンタの管理不足だね! 何を呑気に退職だァ!?」

「え? ゾブティエさん、息子さんいるの?」

 店長は黙ってな。なんだい、死んだかと思ったじゃないか。魔女騒がせな……

『イーラ、ここで怒鳴るのはやめた方がいいぜ』

 肩のリスがまた口を挟んだ。奴はまた目をとろんとさせた。

「あァん、やっきょちゃんちょっとまっててね♡……おいゾブティエ! ここがダメならウチに移ろうじゃないか」

「そうしてくれ。店長、お騒がせしました。甥が急病らしいからこれで失礼するよ」

 店長はガクガクと頷く。鞄と魔法帽子があるのを確かめて、私は足早に裏方を出た。



 薬局の調剤場。ヤモリの剥製やネズミの髭が、壁に飾ってある。何も知らない者が入ったら、腰を抜かすに違いない。私のアパートより、もっと魔女らしい。

「ゾブティエ様……すみません」

 ラグは床のラグの上に横たわっていた。上に軽い絨毯が敷かれている。薄目を開けて私に謝っている。

「謝るなら私じゃなくイーラにしな。迷惑を掛けるのは仕方ないが、世話をしてもらったんだ」

「イーラ様、ごめんなさい」

「ああァ! そうだねェ! 魔女の店で倒れるなんていい度胸してるじゃないか! 奥にいる間にお客が呼びに来たんだ! 恥ずかしいったらありゃしない! 」

 イーラは少し離れたところで、側面が緑の液体に濡れた壺を掻き回している。ドロドロの液体が散るごとに、肩のリスがちろちろと避けている。ラグの傍には、歪んだ籠が置かれていた。多分イーラが握り潰そうとしたんだろう。傍に、ひき肉の入った器があった。

「悪かったよ、イーラ。確かに私の管理不足だ」

 私はイーラに向かって頭を下げる。イーラは鼻を鳴らした。

「はん! 本当にそいつを使い魔にする気かい? 正気で? 使い物にならない人間の坊やをねェ! 」

 頭を上げた。久々に聞かれたことだった。ラグがいる場で聞かれたのは初めてかもしれない。

「……使い物にはなるがね」

『人間が使い魔になった例は少ないぞ』

 イーラの首の裏でリスの尻尾が揺れている。あのリスは確か、前々回の魔女集会で使い魔契約を済ませていたか。

「まあやっきょちゃん♡ そうよねぇ……それにゾブティエ、中途半端な身体の奴と契約をしたらどうなるか教えてるのかァい?」

 私は頷いた。つい最近、五年前には教えたさ。ラグが覚えているかは知らないが。

「契約後の身体に、病気が引き継がれる恐れがある。存じております……んんっ」

 ラグが起き上がろうとしたので、私は睨みつける。また倒れられたら面倒だ。

「こいつには治せって散々言ってるんだ。契約するなら元気でないと困る」

「だからァ」

 イーラが手を止めた。あ、まずい。私は身構える。だが、予想に反して落ち着いた声が返ってきた。


「使い魔契約は諦めて、病院に入院させるべきだ」


ーーひゅっ


 風を斬る音。ラグが息を吸ったのだ。

「大体人間の処方箋というのは、医者にかかってから処方するのさァ……それなのにゾブティエは頑なに病院に行かせないじゃないか!」

「……病院代が勿体なくてね」

 微妙な理由しか思いつかなくて、私は口篭る。確かに、最後に病院に連れていったのは相当前だ。

「本当は、人間を死なせたいんじゃないのォ?」

「そんなことは!」

 私ではなく、ラグが答えた。叫びながら、飛び起きていた。それから、絨毯の端を両手で掴む。

「そんなことは、断じてありません。ゾブティエ様はよくして下さっています。おそらく、僕が使い魔になりたいって言ったから……僕、魔女集会、間に合わないんです」

 イーラは壺におたまを入れ、ドロドロとした液体を手元の瓶に移す。液体は、少しずつ底に落ちていく。

「ゾブティエ様は、最期に使い魔をさせてくれようとしてるんです。例え真似事でも、僕は」

「もういい」

 ラグは息を吐くと、ぱたんと横になった。先程睨みつけたからか。若しくは、長いこと喋らせたせいで無理をしたかもしれない。

「別にそんな高尚なことを考えたんじゃないよ。私がいない時に、家事掃除をしてくれればいいと思っただけさ。ついでに動ける範囲で動けば、一石二鳥かね。まあ……魔女集会には間に合わないだろうが、仮契約までは出来るだろう。私は本気で使い魔になる気があるかどうか試しているだけさ」

 だから私は、平然とそう答える。イーラの手が止まっている。ラグが私を見あげている。

「ゾブティエ様……?」

 どうしたんだい、時が止まったような顔をして。

「僕、使い魔にして貰えるんですか?」

「何さ。お前がなるって言ったんじゃないか」

 今更何を言っているんだ。よく使い魔になりたいなどと言えたものだと思ってはいるがね。

「……このまま頑張れば、次の魔女集会までにはなれるんじゃないのかい」

「ゾブティエ、お前……」

『お前……!』

 リスがイーラの首から飛び降り、壺の端を経由して床へと走ってきた。ラグの方へと近寄り、胸元に飛び乗る。

『なあ、ラグ! オレ、師匠になってやろうか!?』

「え?」

 私とラグが同時に言った。イーラが目を見張る。

「やっきょちゃん?」

『身体、鍛えてやるよ。本当に魔女集会に間に合わせたいなら、もっとごつくてむさくてしっかりした体格じゃないとダメだ。だからお前、お前さぁ! いい魔女選んだなぁ……! こんないい魔女、イーラとゾブティエさん以外にいねぇよ! うおおおおん!!』

 私は呆然として立っていた。リスが泣くなんて初めて見た。すると、今度は別の方から啜り泣く声がする。

「ぐすっ……ありがとう、やっきょさん……」

 ラグ。今、どこで、何を泣くことがあったんだい。イーラが唸った。

「まあ、やっきょちゃんが言うならねェ……」

 その日は何がおかしいのか分からないまま、泣きじゃくるラグを連れて帰った。歪んだ籠は戻らないが、無事だったひき肉は食べやすいハンバーグにした。



 次の日から、ラグは元気な日には薬屋へ通うようになった。何やら、ダンベルを上げ下げしたり腹筋や背筋をしたりしているらしい。

『ななじゅーななっ! ななじゅーはちっ! もう少しだラグー!』

「はいっ! 頑張りまぁぁぁす!!」

 編み物を終えてラグを迎えに行くと、絶えず暑苦しい声が響いている。全くあのリス、病人に何をさせているんだい。

 アパートに戻ってきたら、料理を作り、掃除をし、洗濯物を干す。昼寝をして起きると、雨がざんざん降りだった日もあった。

「雨! 雨ですゾブティエ様!」

「言ってる暇があったら取り込むんだよ!」

 歪んだ籠に洗濯物を入れながら、二人でびしょ濡れになった。魔法で避けられる術は、もう忘れてしまったが。

 家事が終わると、空き時間になる。ベッドに座り、ダンベルを上げ下げしている。あまりに酷くシワのできた顔をしているので、途中で声をかける。

「……無理をするんじゃないよ」

そうすると、ラグは私を見上げて微笑んだものだ。

「ありがとうございます、ゾブティエ様」

 ラグは、ここのところずっと生き生きしている。例えそれが、一時限りのものでも。病状は、変わらないスピードで悪化していった。体格が変わることもなかった。それから、あの質問も止めることはなかった。

「魔女集会まで、あとどのくらいですか」




 私はずっと後悔し続けていた。

 期待させるんじゃないよ。もしかしたらこいつは間に合うかもしれない、魔女集会に連れて行けるかもしれない、って。もし使い魔になったら、寿命が伸びる。私と同じ時間の中で過ごすことができる。

 だからこそ、なんであの時拾ってしまったのかと後悔する。死にかけの少年に対する哀れみだったか。違うとは断言出来ない。いや多分そうだ。あの時拾わなければ、怖くなかったのに。失うことなどーー




《魔女集会まで、あとどのくらいですか》

「ちょうど、一ヶ月だ」

《……間に合いませんね》

「ああ、惜しかったね」

 アパートでは、息遣いと私の声だけしか聞こえない。ラグはもう喋ることができない。私の魔法で、テレパシーのようにしているだけだ。

「葬式は明後日になるかね。希望はあるかい」

《イーラ様とやっきょさんを、招待して頂けませんか》

「気が進まないねぇ」

 私はベッドの傍の椅子に座っていた。ラグの身体がすぐ側にある。ごつくてむさくてしっかりしてはいない。最近は何も喉に通らず、点滴で栄養を賄っていた。すっかり痩せこけてしまっている。結局筋肉はつかなかった。

《あとは》

「棺にダンベルを入れろなんて言うんじゃないよ、火葬は人間がするんだ」

《いえ……ゾブティエ様、僕を拾ってくれて、ありがとうございました》

 感謝の言葉を言えることは、褒めてやってもいい。だが、そういうことは出し抜けに言うんじゃないよ。部屋の湿気にまとわりつかれながら、私は口を開く。

「あと数分生きてくれ。最期に聞きたいことがある」

《……はい》

 ラグは目を閉じていた。でも、真剣な目で私と向かいあっていることが分かる。私は、しばらく間を置いた。本当に、魔女の生で初めて、言葉を選んだ。

「何故お前は、そこまでして使い魔になりたいんだ」

《僕は……》

 くだらない理由でもいい。お前は、どうして。

《姉の使い魔が、羨ましかったんです》

 そこまで言って、不意にテレパシーが途切れる。ああ、こんな時に私が微妙な量の魔力しか持たないせいで。その時、ラグの口が動いた。

「姉が……魔女、でした」

 掠れ声。小声。あと少しで、途絶えそうな呼吸。

「森の奥で、使い魔の、猫と」

 魔女と猫が、仲良く暮らす家。そこに挟まる弟。人間は魔女の年齢に追いつけない代わりに、魔女の見た目の年齢を追い越してしまう。

「そうかい。だから、家を飛び出してきたのかい」

 ラグは頷く代わりに、大きく息を吸った。そのまま呼吸が止まるんじゃないかと思った。ゆっくりと息を吐く。息混じりで、話し続ける。

「誰でもよかった、のに……ゾブティエ様は……僕を」

「私は、後悔していた」

 私はラグの言葉を遮る。言わなきゃならないことがある。

「……違うんだ。好きで拾って育てたわけじゃない。拾わなければよかったって、ずっと後悔していた。だがね、何故お前を使ったか、何故お前に家事を任せたか分かるかい。その方が楽だったからというのもある、けど」

 ラグは、目を開けた。赤い瞳が、ぼんやりと私を映した。

「ああ、認めるよ。認めるしかない。私は……お前と時間を過ごせて良かった。ずっと長生きして欲しかった。だけどな、お前はもう立派な使い魔だよ。私の、大切な使い魔だ」

 私はラグの手を取った。ラグが、口角を上げた。微笑んだ。笑った。

《ゾブティエ様》

 また脳内で声がした。

《ありがとうございます。僕は、ずっと貴方を見守っています》

 ずっとじゃなくていいよ、別に。好きなように過ごしてくれ。好きな時に見守ってくれ。これからの時間、私はお前を忘れない。

《ーーゾブティエ様》


 ラグは目を閉じた。


《魔女集会で会いましょう》









 一ヶ月後の魔女集会には出なかった。








「おいゾブティエ!!」

 大きな声が轟き、私はゆっくりとベランダに出る。

「お前なァ!! 葬式以来三ヶ月は家出てないんじゃないのかァい!?」

 三ヶ月。まだ、それくらいしか経っていないのかい。ベランダの外で、イーラが仁王立ちしていた。やっきょが帽子に掴まっている。

「……余計なお世話だよ」

 単純に、私は退職したんだ。今までより外出しなくなるのも仕方がない。最近の生活は便利だ。家から出なくても、配達を頼めば直ぐに届けてくれる。おつかいに行かなくてもいい。

『ゾブティエさーん! 筋トレしよーぜー!』

 やっきょの声。何て誘い方だい、それは。どこからその声が出るのか教えて欲しい。私は踵を返すと、アパートの中に戻る。私はベッドまで歩き、座った。身体が沈む。

「……ラグ……」

 壁に随分捲っていないカレンダーが掛かっている。床を埃が舞っている。外からは喧しい怒鳴り声が聞こえる。その中に子どもの声が混ざった気がして、私はふと顔を上げたーー気のせいか。幼いラグの声だった気がしたが。遂に幻聴まで聞こえるようになったらしい。

 時間を戻す魔法は使えない。写真も残っていなかった。ああ、結局最期まで看取ってしまったじゃないか。結局、あの人間に愛着が湧いてしまった。使い魔でない動物は、子どもから大人になって、若しくはならずして、あっという間に死んで行く。私達とは時間の経ち方が違う。私にとって、ラグに出会ってから死ぬまでの時間はたった十年。「たった」十年がこんなにも愛おしいものだろうか。ラグと過ごした後悔の中で、私は、また独りになる。時折他の魔女に会うことはあっても、もう使い魔は雇わないだろう。


「ゾブティエ!!」

 ドアが開き、どかどかと足音がする。

「おい、ゾブティエ、お客だ!!」

 目の前に現れた奴を……珍しく息を切らしたイーラを見て、私は反射的に立ち上がった。両手で、何かを持っている。一方には鍵型のしっぽを持つ黒猫を、もう一方には、ラグと同じ白い髪に赤い瞳を持つ、可愛らしい少女を。頭に魔法帽子を被っている。

『だから言ったじゃない、サーティス。こういうやばいやつしかいないの』

「こら! 魔女さんの前でやばいとか言わないの!」

 その声は、確かにラグのもの。私は声を震わせながら尋ねる。

「お前……ラグの……姉かい?」

 魔女と黒猫は、同時に私の方を見た。お揃いに丸くした目で。

「もしかして、“ラグナロク”のご主人さん?」


「可愛らしさの魔女」サーティスと、黒猫のマイピク。ラグの姉と、その使い魔だった。


「わー、すごい! あの子ったら、こんなにすごい魔女さんを捕まえたの!?」

 床に降ろされたサーティスは、キラキラした純粋な目で私を見る。まだ、九十歳くらいか。

『へー、やるじゃんアイツ』

 マイピクは、主人に対する態度だと思えない動作でサーティスを小突く。それとも、この関係性が普通なのだろうか。

『ラグナロクったら、使い魔になりたいって、急に飛び出してったんだよ。ぼくたちずっと待ってたのに』

「アップルパイも毎日作ってたのにね」

『そうそう、ぼくもいっぱい手伝ったんだよ、シカさんに度々食べられてたけど』

「魔女を見つけたら手紙くれるって言ってたのに、全然来なかったの」

『途中でヤギさんに食べられたんだよ、絶対』

 サーティスとマイピクは矢継ぎ早に話す。なるほど、道理でラグが飛び出してった訳だ。周りを許容しているように見えて、二人を中心に作り上げられている世界。聞いている側は心地よさと同時に、居心地の悪さも感じる。

「でも、もう行っちゃったんだね。魔女集会まで待つしかないかなぁ」

サーティスが窓の外を見遣りながら呟いた……何?

「い、今、待つって?」

「はン? ゾブティエ、まさか知らなかったと言うんじゃなかろうねェ?」

 イーラの声が戻って来た。一体何を? どう待つって?

「死んだ者を甦らせる、召喚の儀」

 召喚の儀。あっ、た。確かにあった。すっかり頭から抜け落ちていた。 私は後ずさろうとして、そのままベッドに尻もちを着いた。

「腑抜けがァ! さっさと気づけば良かったものを! 召喚すると同時に使い魔にすれば出来る! 理論上はな! 何故魔女集会に来なかったんだァい!?」

 イーラが私に近づいてくる。やっきょがイーラの首の肉を掴むが、イーラが止まることは無かった。

「魔女集会までに思い出していれば!! あの子はここに居たんじゃないのかァい!?」

 憤怒に当てられながら、私は恐怖を覚える。もしかしてラグは、期待していたのだろうか。あの魔女集会で、私が召喚の儀を行うことを。だが……

「……出席していても、召喚出来なかっただろうよ。だって、私は、微妙の魔女だ……」

 思っていたより弱々しい声が出る。イーラが更に何か言おうとした時、サーティスがあどけない声で言う。

「どこが微妙なの?」

 どこが? どこが、だって? 声がまた震える。

「ああ、私は……お前のように使い魔と一緒に成長していくことも、イーラのように他の者を染め上げることも出来なかった。ほかの魔女より微妙に魔法が下手で、魔力も少なく、でも取り立てて述べる程でもなく、特別に気にかける程でもない、私は……!」

 あとはもう何も言えず、私は膝を抱えて蹲る。なんだい? 私は初対面の子どもの前で泣くほど弱かったのかい? もし私が微妙じゃなかったら、ラグを救えた? 今も一緒に暮らしていた?

「ねえ魔女さん」

 ラグの……いや、サーティスの声がして、私は上を見上げた。サーティスが、私を見下ろしていた。優しい笑顔で。

「魔女集会まで、あとどれくらい?」

「……九十九年と、九ヶ月」

 サーティスが頷いた。私の手を取った。

「わたしね、ラグの次のお願いよく分かるよ。ねっ、マイピクいいでしょ?」

『ぼくはヤダよ、あっちの家、草がぼうぼうになっちゃうじゃないか』

「行き来すればいいの! キュージュウキューねんくらいスグだよ! それに、魔女さん優しそうだもん! もう一人の魔女さんは怖いけど……リスさんも手伝ってくれるんでしょ?」

「あァん?」

 イーラが顰め面をする。やっきょがニヤニヤと笑っている。マイピクがむー、と唸る。

「わたしたちと特訓しようよ! 知ってる魔法は教えるし、魔力を増やす方法も調べる。うーん、でも魔女さんに教えて欲しいこともいっぱいあるなあ……」

 サーティスは、微笑んでいた。頬にえくぼを浮かべて。私は、溢れる涙を抑えることが出来なかった。心の中で止めかけていた針が軋むのを感じる。

「ねえ魔女さん、わたしたちを、弟子にしてくれない?」





 その日から、時はまた目まぐるしく過ぎ去った。ラグといた日々よりずっと早く。あの子たちがそうさせたからだ。朝になると、サーティスとマイピクがアップルパイを焼きに来る。それが終わったら、サーティスの魔法を教えてもらう。花を咲かせたり、森の木々を元気にしたり。代わりに私は、家事のやり方を教えてやる。ラグに叩き込んだのと同じものだ。昼には、ダンベルを担いだやっきょが来る。私にダンベルを渡されても、何も出来やしないが。夜は、イーラがやっきょを迎えに来て、騒ぎに騒いで帰っていく。それが、私にも信じられないスピードで続いた。春だと思いきや桜が散り終わり、夏かと思うともう雪だるまが出来ていた。


 十五年ほど経って、店長が尋ねてきた。すっかり白髪になっていた。たまたま居たイーラが出迎えると震えていたが、サーティスにはかなりデレデレだった。反抗期の娘の幼年時代を思い出したんだと。


 やっきょの後輩がぞろぞろと来たこともある。なんだい、リスには筋肉バカしかいないのかい。やっきょは、涙を流しながら後輩どもにラグの話をした。ラグは筋肉は付かなかったがね。


 二十年経つと、私はまたパートを始めた。少し遠くのドラッグストアで。驚いたことに、店長の娘が正社員になっていた。かなりのしっかりものだった。向かいの魔女について聞かされて育ったんだと語る。どうか反面教師にしてくれって言われたらしい。奴に聞かせたら殴り込みに来るね。


 それから数年が過ぎた頃、サーティスとマイピクが大喧嘩した。原因はなんだったか。小さなことだったと思う。その晩はサーティスだけが泊まりに来たものだから、ラグのパジャマを貸した。ラグの話を聞きたいというので、幼い頃の話をした。ドラッグストアのカウンターに現れたことや、道端で倒れていたこと。しばらくがま口を手放さなかったことや、度々口をすぼめていた時期のこと。サーティスは枕を抱いて、時に笑いながら、時に真剣に話を聞いていた。そのうち、気がつくと朝になっていて、マイピクが迎えに来た。サーティスが口をすぼめたときは思わず吹き出しちまったよ。全く、この時期の子どもは皆そうなのかい。


 三十年目のある晩、ベランダで月を見上げていて漸く気づく。確かに時間は速くすぎているが、あと七十年あるのだ。ラグが死んでから三十年、短いようで長かった。ラグに会えるのは、まだ遠い先のこと。ラグと過ごした時間の、七倍の時間を歩んでいく。

「……今日、私はここを出る」

 振り返ると、もう何も残っていない、私の部屋があった。築七十年を過ぎたアパートを退去し、ラグの面影のない新しいアパートに移る。この先、ラグとの思い出も薄れていく。それでも私は、ラグを召喚する。会うって言ったから。理由にしては微妙で抽象的だ。だけど、時に「頼み」というものは大きな変化に繋がる。それは、ラグと出会ってから、今までの時間が証明している。

「ラグ。気長に待っててくれ」

 私は宙に手を伸ばす。アパートの部屋に数多の星が現れ、綺麗に輝く。

「あと七十年……やっていける、気がするよ」














 そしてーー












 月びかりの丘。満月の光が反射して、丘だけに当たる夜。空からいくつもの箒が飛んできて、世界中の魔女たちが降りたつ。

「わあーっ! きれーい!」

『ねー、ちょっと待ってよう。ぼく、屋台見て回りたいんだけど』

「屋台はあと! ほら、もう始まるってー!」

 サーティスがキラキラと笑いながら、魔女たちの間を駆けて行く。マイピクは、ぶーぶー言いながらその後を着いていく。周りには、不規則的に屋台が立ち並ぶ。水晶で作られた色とりどりの照明が、魔女達を照らしている。

『ギシキが終わるころには、全部しまっちゃうんじゃないの?』

「うーん、しまっちゃうかな? あっ、そしたら、わたしがアップルパイを焼いてあげる!」

『ぼく、レモンパイがいいよう』

 サーティスが振り返る。なんの混じり気もない、明るい笑顔で。

「だーめ! 今日は絶対アップルパイ! だって、あの子が帰ってくるんだから!」



「あァん!? 今アタシにぶつかったねェ!?」

 この混みあった場所の中で、一人だけ誰もいない円を作っているのがイーラだ。今も、ぶつかった他の魔女を震え上がらせている。

「今日が魔女集会じゃなかったら、ただでは済まなかったねェ……!」

「ハッ!」

 そこに、イーラのことを笑い飛ばした魔女がいる。先にイーラにぶつかった、イマドキの格好をした若魔女だった。

「あんた、もう老いぼれじゃん! 遂にアタシが蹴散らす番よ!」

そこに、イーラの帽子の裏からリスが顔を出す。

『あーあ、お前死んだな』

「な……何よ! リスなんてちゃちい使い魔ーー」

 若魔女はその続きを声に出すことは出来なかった。そのリスの腹筋が割れていることに気づいたからだ。

『うーん、でもオレ、リスの中では大きい方なんだよな。イーラが毎朝プロテインをくれてさ。老いぼれだけどいい魔女だぜ、イーラは』

「あぁん♡ やっきょちゃん! 褒めてくれて嬉しいわァ♡」

 更に、イーラの握った拳には、怒りマークのシワができていた。次の瞬間、辺りが冷気に包まれる。その円だけが暗くなり、魔女工的な月食が出来る。一瞬にして、場が真空のように静まり返った。にんまりと笑ったイーラは、無言で若魔女に詰め寄る。そして、魔女の顎を掴んだ。

「……さァて、覚悟はいいかい?」

「す、すみませんでしたぁ!!!!」



 都合よくキィンと音がして、会場に声が響き渡った。イーラは魔女から手を離し、サーティスはイーラに駆け寄った。



【これより、召喚の儀を行う。「絶妙の魔女」ゾブティエ、前に出なさい】

 祭壇を囲むように、沢山の魔女が私を見ている。私だけが、大きな祭壇の上に立っている。ここからだと、サーティスやイーラの様子がよく見える。あいつらの声を媒介していた蝶が戻ってきて、私の手に納まった。全く、騒ぐんじゃないよ。あとの方で疲れないのかね。

【汝が召喚するのは、百年前に死んだ人間「ラグナロク」で間違いないか】

 スピーカーの魔法を通して大きな声を出しているのは、千歳を超える魔女の長。私は震える足をローブで隠しながら答える。

「ああ。それと、使い魔の儀も同時に行うよ。あの子を、鳥のような翼を持つ、丈夫な使い魔にする」

 魔女達がざわついた。そうだ、これはおかしなことだった。すっかり忘れていたが、人間の使い魔は珍しい。

【絶妙の魔女。 汝は魔女学校時代、それほどの魔力は無かったと存ずる。失礼ながら、汝には死者を召喚し、使い魔にするほどの魔力があるのか?】

「……憤怒の魔女や可愛らしさの魔女に手伝って貰ってね。魔力量を増やしたんだ。弟子達の証言が必要かい」

 歓声が聞こえる。振り返ると、私の弟子達と、その使い魔達が一斉に歓声をあげていた。大方がサーティスが仲良くなって連れてきた奴か、やっきょの筋トレ繋がりの奴だ。六十年目辺りから急に増え始めた。五十歳未満の小さな魔女を連れた奴もいる。子どもの面倒まで見るのは大変だったけどね。

 魔女の長は、満足そうに頷いた。

【……そうか。では、召喚の儀と使い魔の儀を行う。皆の者、絶妙の魔女を手伝うように】

 私は両腕を挙げる。イーラ達が前に出てきて、一緒に手を挙げた。

「失敗したら承知しないよ!」

「ゾブティエさん! 頑張ってー!!」

 沢山の蝶が生まれ、宙に集まっていく。今までの長い時間が、魔法となって昇華されていく。

「ああ、分かっているさ!!」

 皆が手を挙げる。顔の青ざめた若魔女も、目を細めた魔女の長も、それから弟子達も、知らない魔女まで、皆が魔力を集めてくれている。

 あとは、これを絶妙なバランスで混ぜるだけだ。ゆっくりと手を動かし、魔力をかき混ぜていく。もう私は微妙じゃない。私は、絶妙の魔女。今の私は、お前を召喚するに相応しい魔女だ。これから何があっても、後悔することなど起こらないーー使い魔にすることに、後悔はない!!


「ラグ!!」


 その時、一筋の光が祭壇に落ちてきた。その光は魔女達の魔力に合わさって、白く光り、物凄い勢いで人の形になっていく。風が吹き、辺りの魔女が吹き飛んでいく。

『ゾブティエ様!』

 驚いたような、だが嬉しそうな声が聞こえて、私はやっと手を止めた。間もなく、柔らかな風が吹いた。それは、白い鳥の翼を動かしてできたもの。

『ゾブティエ様、お待たせしました』

「ちょっと待たせすぎじゃないのかい」

 すみませんと謝る声は、今まで散々聞いていたサーティスの声と同じだ。でも、大人びた柔らかい声だね。そう、ラグは確かにこんな声をしていた。こんな体格だった。だけど、ラグはしっかりとこの地に立っていた。さあ、お前にはもっと言うことがあるだろう。

『ただいま、戻りました』

 私は数歩近づき、使い魔ラグに抱きついた。百年を経験したあとでも、この時間を永遠にしてもいいと感じる。そう思わせるほどの絶妙な幸福感に私は満たされていた。ああ、そうだね。私も言葉を忘れちゃいけない。

「おかえり……私の大切な使い魔よ」

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微妙の魔女と使い魔志望 甘衣君彩@小説家志望 @amaikimidori

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