誰かのとっては
あさひ
正当化される理屈
ある日、壊れた
世界は嘘つきによって壊れた
なすりつけるしか能がない
世界に蔓延るニセモノによってだ。
あの日にはあったのだ
生の渇望を利用した守銭奴たちは
考えたのである。
人に金を積ませる方法を
ただ正当化しながら世界を喰らう法を
無理やり築いていった。
朝日が目に浸入する
鼻をくすぐるのはトーストのバターからする
香しい匂いである。
コーヒーは甘いのか
あまったらしくないがチョコのような
甘味の感触を覚えさせてきた。
「ベーコンエッグってなんで朝なの?」
「単に簡単だからじゃないかな」
少女と初老の男性が
そそくさと支度しながらテーブルを
イス越しに相対する。
「トーストを皿に入れてくれるか?」
「はぁーいっ」
笑顔が少女の想いすら表すように
ニコニコとトーストを
舌なめずりしながら皿に乗せた。
「トーストにベーコンエッグは乗せていい? かな?」
「聞くな…… 早くしないと学校は?」
「そうだねぇ」
トーストにベーコンエッグを乗せて
美味しそうに頬張る少女を
微笑ましそうに初老の男性が見つめる。
「いつかこれが出来なくても記憶だけでどうにか生きていけるな」
「どうしたの?」
「この頃だがな…… 鈍いんだ」
「何が?」
「感覚が鈍いんだよ」
意味がわかってない少女は笑いながら
大変だねぇと言いながら口に次々に食べ物を放り込んだ。
「まったく…… 認知症なんだがな……」
「なんか言った?」
「なんでもないよ」
変だね
そういえば良かったんだろうな
あの時に気が付けば
少しは変わったのかな?
昔の話だ
この娘がうちに来た時にあった
母さんが無神経に聞いてたっけな
誰かに捨てられたの?
でも笑ってこう言った
私は一人で生きてきました
でも諦めなかったんです。
不思議な娘だった
でも嫌じゃない
そんな少女だ。
「お母さん! 行ってきます」
笑う母は一言も発しない
発せないのだ
でも笑っている。
「母さんは見ていてくれよ」
不意にほくそ笑んだ気がした
安心したのだ
たとえどんな娘だろうが
家の娘だ。
「よかったよ…… 保険と貯金をしたことに安堵するよ」
使い方も教えたのだ
いない世界をどう見るだろうか
泣いてくれるのかな?
棺桶にしがみ付いてくれるかな?
「世界は無限に広がる未知数が示してくれる」
明日は道である
そして未知だ
だから目指した
世界の思惑に逆らいたい。
この娘には
世界を見てほしいのは
自己欺瞞だろうか?
そう思われようが
知らない
この娘の未来を決めつけるな
世界など知らないんだ。
生きることを咎める
それはなんだろうが許されない
たとえ集団が多数決で言おうとも
知らないんだよ。
明日を見てくれるのは
女性の方が映えるんだ
エゴで殺してくる全てを敵に回そうが
たとえ喉元に刃を突き付けられても
苦しさで殺す全ては悪なんだ。
苦しい思いを無視して
正義を語るなよ
この女性になりゆる少女は
世界から見放され
それでも進み続ける地獄を歩いた。
胸を揺らす
それは心を揺らすようなことだった
周りに良くない目を向けられるためではない。
これは日常だ
やがてくる絶望には向き合わないだろう
そんな地獄に娘を置いていくのは
嫌だ 嫌だ 嫌だ 嫌だ 嫌だ
嫌だ
「どうしたの?」
「いやなんでもないんだ」
「顔が真っ青だよ?」
「少しだけふらつくだけだよ」
「仕事なんて休む?」
「寝不足なだけなんだ」
この時には
もうどうしようもないくらい
見えてなかったのに
なんで? 理由なんて……
聞きたくなかったよ
でも
言ってくれてもいいじゃない
苦しさなんて背負うなんて無理だよ
【バカだな】
二枚目にはそう書かれていた
続きは
【地獄を歩くんだ
誰もが絶対的な理不尽に抗い
少しの希望を胸に歩くんだ】
「わかってたよ」
三枚目には
【だからわかってたんだよな】
「お見通しか……」
目の前には
冷たい男性が横たわる
認知症になった末に
発覚した
ガンが体中に存在した
併発症というものだ。
がん細胞が
脳を圧迫したから
記憶が消えていく。
さよなら
それすら言わせてくれないのだ
悪魔たちは奪うためなら
なんでもするのだ
頭に住み着き
妄想すら使うことで
追い詰めてくる
嘘をつくニセモノは妄想すら見せて
喰らおうと笑った。
それが悪魔という概念の本懐
名乗らぬ悪魔の本性である。
アカウントを奪うハッカーもまた
盗聴盗撮を行い情報を聞き出し
奪う悪魔の本懐だ。
隠れた魔手は
真実すら喰らいつくす。
現実でも起きている
現状も起き続ける
目を覚ませ
嘘を壊せ なんで勘違いをする
性格でわかるはずだ。
おわり
誰かのとっては あさひ @osakabehime
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