第3話三年C組
「今日から小林先生の代理で来ていただくことになりました滝川先生です」
校長先生から紹介をされ、
「初めまして、滝川梨穂子と申します」
みんなから、私は拍手で迎えられる。
「滝川先生には3年C組の副担任として、多部先生と一緒に生徒たちを支えてもらいたいと思います」
多部淳子先生は、45歳のベテラン先生で美術の担当だ。
多部先生は、私に笑顔で微笑んだ。
優しく、朗らかな雰囲気で、私もつられて微笑んでしまう。
「よろしくお願いします。滝川先生」
「こちらこそ、お世話になります。多部先生」
そんな挨拶が終わると、次は二学期の始業式が始まり、バタバタと行事をこなしながら、ようやく担当の教室へとやってきた。
3-C組の副担任。
3年生という大切な時期の子達の副とはいえ受け持つのは少し、気が重い。
でも、やりがいもある。
私は小さく深呼吸をして、多部先生の後ろから教室へと入っていった。
教室へ入ると、雑談をしていた生徒たちは黙り、日直が号令をかける。
「起立、礼、お願いします。着席」
生徒たちは揃って、日直と同じ動きをして座る。
全員が自分に注目する中、一人だけの視線が私に熱く突き刺さる。その視線に私は導かれるように視線を移した。
目が合った瞬間、フラッシュバックするように彼岸花の景色と彼女の光景が呼び起こされる。
驚いた彼女の表情は次第にあの日みた、笑顔に変わっていった。
「今日から3年C組の副担任をしてくれます滝川先生です。滝川先生、自己紹介お願いします」
多部先生の声に我に返った私は、ぎこちない笑顔を作り、先生という職に戻った。
「初めまして、滝川梨穂子です。年は25歳で国語を担当します。クラスを受け持つのは初めてなので、緊張しますが、みなさんと仲良くなれるように頑張りますのでよろしくお願いします」
私が一礼すると、みんなも拍手をしてくれた。
もちろん、その表情は義務的な顔をしている人も多いけど、好奇心ある生徒もいた。
そして、彼女は優しい微笑みで私をみて拍手を送ってくれていた。
それからは、私は教室の後ろの方から、多部先生のホームルームをする姿をみていたり、プリントを配るのを手伝ったりするくらいだった。
生徒の顔を少しでも覚えたくて、なるべくプリントを渡す時も顔を見て、多部先生がくれた座席表と名前と顔を見比べていた。
それで分かったことは、彼女の名前は
瑞原胡桃だということ。
彼岸花が咲く頃には 羽音衣織 @haneiori
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