第19話 視姦と接吻
◇◇◇◇◇
ーートアル大森林
「はぁ~……まったく……。なんなのだ」
スヤスヤと眠っている2人に《結界魔術》を施し、アイリスのもとへ向かっている。
最高の食事に身震いし、天にも昇るような幸福感が台無しだ。
ドクンッ、ドクンッ、ドクンッ……
ユーリの唇の感触が消えない。
所謂、“接吻”というやつだ。
親愛や愛情を伝える“人間”の感情表現の一種。
……と言う事は、俺に惚れたって事でいいのかとも思ったが、眷属になった様子はない。
引きこもっている間に、接吻の意味が変わったのか……、ただ快楽に身を任せ絶頂のままに口付けをしたのか……。
どちらの可能性もありそうだ。
ユーリが眷属にらなっていない事実は、「俺に惚れているわけではない」という確実な証拠になり得るんだろうが……。
はぁ~……接吻っていいな……。
……唇って“やらかいな”……。
……もう一度したい。
“おっぱいを触りたい不思議”と、同じような欲求だ。
首元の吸血が当たり前と思っていたし理性を保つために、唇や舌、おっぱいや秘部と言ったような場所の吸血は避けていたが、味が変わったりするのだろうか……?
更なる開発を進める段階だな……。
……今日の宿でエルと実験してみよう。
理性が保てるか……正直、際どいが、めちゃくちゃ接吻してみよう……。
エルの、あの唇を舌を胸を……全身を……!!
……やばいな。なんか興奮してきた。
処女を奪っちゃうかもしれんが……、いや、奪ってもなお、血を進化させるエルなら……博打を打つのも……?
いや、リスクが高いか?!
ああああ!!!!
“初めての接吻”でネジが飛んでる!!
“お前、俺のこと好きじゃん”
俺は性懲りもなく、ユーリに対して淡い期待を抱いている。ほっとけば、眷属にできるんじゃないかなんて安易に考えている。
ピチャ……
水浴びしているアイリスを視界に捉える。
……すばらしく美しい身体だな。
はぁ~……。胸の張りは重力にも一切負けていないか。
極上の香りが鼻をくすぐる。
やれやれ……。誘惑してくれる。
さっさと「最近の娘」であるアイリスに“接吻の意味”を聞くとしよう。
アイリスなら答えを知っているはずだしな。
ピチャ……
俺が歩み寄ると、アイリスは大きく目を見開きピタッと固まった。
「……? なぁ、アイリス。少し聞きたいことがあるんだが?」
俺は不思議に思いながら声をかけた。
※※※※※【SIDE:アイリス】
「ん? アイリス。聞いているのか?」
ジーク様は小首を傾げながらじゃぶじゃぶと私に歩み寄る。
な、何を……?
え、いや、あの……。
わ、私……肌着一枚なのですが……?
下着も外しているし、布は張りつき……もう全裸と言っても過言ではないんですが……?
あまりに何でもないことのように歩み寄ってくるジーク様に思考が止まってしまうが、
……………な、なな、な、何を考えているのですか、この方は………!!
ザプンッ!!!!
私は肩まで水に浸かり、身体を隠す。
水の透明度が憎らしい。
だ、誰にも見せたことないのに……。
顔は尋常ではないほど熱くなる。
エル様と比べられると、その反応も納得ですが……す、少しくらい恥じらって、慌ててくれてもいいのではないですか!?
1人であたふたしている私の方がおかしいみたいではないですか!!
私は深く息を吐き呼吸を整える。
お、おお、お、落ち着くのです。べ、べべ、別に見られて困るようなものでもない……わけでもないですが、き、毅然とした態度を!!
「……大丈夫か?」
「……ど、ど、どど、どうされたのですか?」
「ん? らしくないな?」
「……ふ、ふふ、服を着るのでお待ち下さい!!」
「……? 恥ずかしがる必要はないだろ? もっと誇ってもいいんじゃないか?」
「……!! き、き、着ますので、見ないで下さい! 脳内から消去して下さい!」
「……ふっ……、嫌だ」
「なっ……!!」
「このままずっと見ている……。そのつりあがったピンクの突出も、しなやかな手足も、美しいくびれも、齧り付きたくなるような尻、」
「いい、い、いい、いい加減にして下さい!」
「ハハッ! 水は冷たいだろ? 早く上がったらどうだ?」
「……だ、大嫌いです! 本当に!! な、なぜ来たのです!? 早くユーリたちの血でも啜ってなさい!!」
「…………あ、あぁ……。悪かったな」
ジーク様は明らかにシュンとして肩を落とすと、
「言いすぎだろ……。いつもの無表情ではないお前が嬉しかっただけなのに、何が“大嫌い”だ……。いつもの仕返し……ほんの些細なイタズラではないか……」
などと悪態を吐きながら、ジャブジャブと帰っていくと岸にあがり、こちらに背を向けて待ち始めた。
…………な、なんなのですか!
本当にっ!! 私が悪いのですか?
なぜ、このような罪悪感を感じなければならないのです!!
本当にこのお方は……!!
天然でこれですか?!
わざとなのですか!?
“まったく”……。
な、な、何が「嬉しくて」ですか……。
あぁーもぉーー!
か、顔アツい……!!
私は水を掬うと、パシャんと顔の熱を鎮めようとするが、一向に収まらない。
チラッ……
なぜ待っているのかわからないですが、待たせるだけ待たせる事にしましょう。
どうぞ、反省なさって下さい!!
充分に熱を鎮め、所々破れたままのローブを身にまとうと、口を尖らせているジーク様に声をかける。
「……先程は取り乱してしまい、申し訳ありません。別に嫌ってはおりませんし、好いてもおりませんので……。先程の言葉は訂正させていただきます……」
「……そ、そうか! 嫌ってないのならいい!」
ホッとしたように笑顔を浮かべるジーク様に、嫌味は伝わりませんでしたか……と考えつつ心臓が音を立ててしまう自分が情けない。
「……どうされたのです? お二人への《吸血》は済んだのですか?」
「ああ。そこで少し不可解な事があってな」
「“不可解な事”……?」
「はぁー……そう邪険にするな」
「……しておりませんが?」
「まぁいい……。“今の娘”が“接吻”する時は、どのような心情の時なのか気になってな」
「……?」
「俺の記憶では、人間の娘が接吻する時は好きな相手に愛情などを伝える時と認識していたんだが、」
「2人きりであれば、誰とでもしますね」
私はジーク様の言葉を遮り、淡々と伝えた。
ジーク様の探っているような言葉を断片的に考えれば、「最悪の結論」に辿りつく。
ユーリ……。ああ、ユーリ……!
一体、何をしてくれているのです!!
少しは自重なさい!!
なぜキスしているのですか……。
ユーリの気持ちに気づかれれば厄介です。《契約》内容を改めて開示させられれば、めんどくさい事になります……。
エル様に“鎖”はない。
ジーク様は私たちに危害を加える事は出来ずとも、エル様に力づくで来られれば、このパーティーには破滅しか待っていない。
《契約》で対抗できるとはいえ、良好な関係を保たないと。ユーリの心はもうジーク様のモノですし、この先、何があるかわからない。
ここは誤魔化すしかない。
ユーリの心情をジーク様にバレるわけにはいかない。
あぁ……。本当に頭が痛い……。
やってくれましたね、ユーリ……。
ジーク様は「はぁ~」とため息を吐くと、私の顔を見つめた。
「……そう言うものなのだな……」
「ええ。握手となんら変わりありませんね。なぜそのような事をお聞きになるのかはわかりませんが、おそらく特別な感情はないでしょう……」
「まぁ、そうだな……。あっ!! では、接吻しないか? アイリス」
「……えっ?」
「お前の感触も確かめたいんだが?」
「……え、いや、それはどうでしょうか」
「……? 握手と変わらないのだろう?」
「……えぇ。その通りですが……」
「……ふ、触れたくもないほど嫌いなのか、俺の事が! なんなのだ、本当に!! 俺、お前に何かしたか? 俺はちゃんと助力しているし、大人しくしているつもりだぞ!? 言いつけも守ってやっているのに、このままでは一緒に旅など、」
「し、しましょう!」
「……はっ?」
「す、すればいいのでしょう?」
「……? 嘘なのか? やはり誰とでもするモノではないのだ、」
ギュッ……
ジーク様の襟元を手繰り寄せる。
ふにッ……
私は唇をジーク様に押し当てた。
「誰とでも……、2人きりであれば、します……」
「…………」
「ユーリたちはどうしているのです? 早く合流し、ジーク様の“転移マジュツ”で街に向かいましょう……」
固まったジーク様を置いて、先を歩く。
ドクンッドクンッドクンッ!!!!
わわ、わ、私ったら……!!
な、な、なな、なんて事を……!!
し、心臓が壊れそうです……!!
私はジーク様に顔を見られるわけにはいかなかった。
※※※※※【あとがき】※※※※※
コメント、本当に感謝です!
フォロー、☆も本当にありがたいです。
励みになります! 見て下さっている読者様方が形として残して下さって感激です! 本当に力になっております!
アイリスもいいじゃん!
クーデレかよ!
もう好きやろ、お前も!
なんて思って頂ければ幸いです!
☆☆☆&フォロー、応援コメントして下されば、ここのところ本業の方が忙しく、社畜の辛さを実感中の作者の励みになりますので、是非!!
【腰抜け魔王】と言われている吸血王である俺の前に現れたのは、『最弱勇者と欠陥聖女』と呼ばれる小娘たちだった 夕 @raysilve
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。【腰抜け魔王】と言われている吸血王である俺の前に現れたのは、『最弱勇者と欠陥聖女』と呼ばれる小娘たちだったの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます