EPILOGUE
はじめて、ユーディトに出会ったとき。イルヴァがそこにいるのだと思った。
たまたま森を彷徨っていたところを拾ってくれた、亜麻色の髪に黄金色の瞳をした、若い女の精霊使い。
ユーディトは彼女によく似ていた。彼女と違って、捻くれてはいなかったけど、大らかで優しい眼差しが、よく似ていた。
僕はイルヴァを愛していた。だから、何度も会いに行った。彼女の死を見届けるまで。彼女は最後まで幸せそうだった。
なんとなく、ユーディトにもそうであってほしいな、と考えていた。彼女にはイルヴァのように、朗らかに笑っていてほしい。
――――どうか、私の娘を守って頂戴。最期のお願いよ。
この遺言を聞いて、せめて彼女の願いは叶えてやろうと思った。でも、自分は記憶にとどまってあげられない。
近くにいられないときは、せめて遠くから彼女を守ってあげよう。
近くにいられるときは、誰にも負けないように、彼女を強くしてあげよう。
だから、彼女がおぼえていないとしても、可能な限りそばにいたし、できるだけ手を貸さないようにもした。
あの娘には、イルヴァのように、一人でも輝ける、そんな娘になってほしいと、そう思った。
了
朔の夜は春を待つ 花野井あす @asu_hana
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます