EPILOGUE

 はじめて、ユーディトに出会ったとき。イルヴァがそこにいるのだと思った。


 たまたま森を彷徨っていたところを拾ってくれた、亜麻色の髪に黄金色の瞳をした、若い女の精霊使い。


 ユーディトは彼女によく似ていた。彼女と違って、捻くれてはいなかったけど、大らかで優しい眼差しが、よく似ていた。

 

 僕はイルヴァを愛していた。だから、何度も会いに行った。彼女の死を見届けるまで。彼女は最後まで幸せそうだった。


 なんとなく、ユーディトにもそうであってほしいな、と考えていた。彼女にはイルヴァのように、朗らかに笑っていてほしい。


 ――――どうか、私の娘を守って頂戴。最期のお願いよ。


 この遺言を聞いて、せめて彼女の願いは叶えてやろうと思った。でも、自分は記憶にとどまってあげられない。

 

 近くにいられないときは、せめて遠くから彼女を守ってあげよう。

 近くにいられるときは、誰にも負けないように、彼女を強くしてあげよう。


 だから、彼女がおぼえていないとしても、可能な限りそばにいたし、できるだけ手を貸さないようにもした。


 あの娘には、イルヴァのように、一人でも輝ける、そんな娘になってほしいと、そう思った。 

 



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朔の夜は春を待つ 花野井あす @asu_hana

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