最終話 相手を試すようなやり方をする奴は
「なぁ刃銀、
2月も真ん中。
待ち合わせついでに大学の食堂で学部の友達と駄弁ってたら、突然そんな話を振ってこられた。
気持ち久しぶりに聞いた
「サークルのやつらみんなとヤッてるてやつ?」
「あぁそうそう」
噂っていうか、事実やけどな。
「別れたとはいえ、あのころ刃銀は朝風さんにかなり惚れて大事にしてただろ? そんな人があんな......。あんま気にすんなよ?」
こいつはいつもいつもめちゃくちゃ人のこと気ぃ遣ってくれるイイやつや。
ほんでも、俺はまじでなんも思ってへんねんな。むしろ俺よりもこいつの方が気をもんでるってことになんか申し訳無さを感じるレベル。
「いや、ほんまになんも思ってへんで? むしろ、俺がそうなるように促した部分まであるしな」
「え、どういうことだ?」
「いや、別れたし、サークルにおるのも嫌やからさ、やめるついでに置き土産的な?」
「......よくわからないけど、刃銀が気にしてないならいいや」
「まぁ、心配せんでも、悪いコトしたわけちゃうからさ。けど、ありがとぉな」
咲水と別れてからサークルに行かへんなったわけやけど、サークルメンバーの友達とはみんな仲良いままやし、俺もサクメンも、なんなら咲水も含めて全員にメリットのあることをやったっただけ。
『咲水は
愚痴ついでのちょっとした意趣返しくらいのつもりで。
そしたら効果覿面。サークルの男友達は何人も咲水にちょっかいかけだした。
咲水も、ちょっと早めに卒論も終わって時間を持て余してたらしくて、みんなとヤッてるらしい。
聞いた話では、俺が咲水とラブホですれ違った次の日は、咲水は目ぇ腫らしとったらしい。
本気であのときまで俺と別れてないつもりでおってマジで別れたのが辛かったのか、あんとき隣におった彼氏っぽい人に振られて泣いたか、あの人と乱暴なプレイでもしたんか。
よぉ知らんけど、そうやって落ちとったのもほんの1週間くらいらしくて、すぐに復活してお盛んなことらしい。
ヘッドショット受けても死なんゾンビかよ。無限湧きとかリアルでやられても困るんやけど。
最近ではサークル以外のところでもわりとお盛んらしくて、本人はうまく隠せてるつもりらしいけど、俺らの周りではちょっとだけ有名になってきてる。
サークルのやつらとか大学のツレが穴兄弟やってのはちょいキモいけど、酒の肴にはなるし、他人事やし、これはこれでオモロイからまあいい。
咲水も、サークルのみんなが状況知ってて、都合いい便器扱いしてるってことにはまだ気づいてへんくて楽しそうにやってるらしいし、これぞウィンウィンってやつ。
咲水があんまりチョロいから、最近はみんないろんな遊びしてるらしい。
ゴムに穴開けて出してバレるか試すとか、ピルって言ってビタミン剤渡してるとか、仲間内でハメ撮りシェアしてるとか。
俺にもネタで送られてきたことあるけど、それはさすがにこの前飲みに行ったときに軽くしばいといた。
さすがにあんま見たくはないからな。
それにしても、友達らもようやるわ。病気持ってたら嫌やとか、気色悪いとか思わんのかな?
まぁプロの店行くよりよっぽど安く上がるし、金ない大学生には丁度いいんかもな。
けど、そんな状況でも咲水は「もっといろいろしてくれへんかったら私離れていくよ?」みたいな相手を試すようなことをしてるらしい。
そういうときの対処も俺が広めといたから、みんな適当に対応してほどほどに機嫌とってるらしいけど。
っていうか、散々便利に使われてる中で、まだ自分が優位に立っててみんなを手のひらで転がしてるとか思ってるんやとしたら、そうとうお花畑やん。
頭ハッピーで逆に羨ましいわ。いや全くそうなりたいとは思わんけど。
それにしても、あいつらも大概クズいなー。
咲水自身が便器扱いに気づいてへんくて、その状態を幸せに感じて甘んじて受け入れてるんやったら別にかめへんけどさ。
普通に考えたら後々後悔するんちゃうかなーって思うけどな。
まぁ生き方は人それぞれやしな。知らんけど。
僅かに残った恨めしさを晴らすためにも、もっと面白さを提供してもらお。
「なんやったらお前も一発ヤラしてもらったら? めっちゃ安くヤレんで」
「いや、俺はいいよ。刃銀と穴兄弟とか勘弁」
「わはは。まぁそうか」
「それに、もうそろそろ病気の方も怖いしね」
「間違いないな。ってか、そっちのがメインの理由やろ」
もはや誰とヤッたんかもわからんのを気軽に使うのはちょっと躊躇われるもんなー。
「まぁね」
とかどうでもいい適当な話をしてる間に
「おはよー、刃銀! ごめんね遅れちゃって!」
「おぉ、おはよー。全然やで」
「ほんとにごめんなさい! 絶対に何かでお返しするから許して!」
「いやいや、ほんまにいいから! けど何でもしてくれるっていうんやったら、そらなぁ?」
「うぅ......なんでもなんて言ってないけど......でも、遅刻しちゃったし、ちょっとくらいならいやらしいことでもいいよ」
「ごめん、ホンマに大丈夫。気ぃ遣わんでいいから! むしろここまで来てくれてありがとう!」
今日はめずらしく茅種が30分くらい遅刻するってことで、食堂で友達と喋って待ってたわけやけど、遅刻してこんなに申し訳無さそうにされるとか、めっちゃ新鮮。
咲水やったらもっと尊大な態度してるとこや。
しかも、茅種の家からここまでは遠いわけちゃうけど、デートの待ち合わせに俺らの大学にまでわざわざ来てくれるとか女神すぎ。
おっと、昔の女と比較するとかあかんよな。
「ほんじゃ、俺らは遊びに行ってくるわ!」
「おう、いってらっしゃい」
「じゃあね〜」
茅種は俺には勿体ないくらいよくできた彼女。
誇張抜きで不満が1個もない。
何よりも、いちいち試されるようなことされて気ぃすり減らさんでいいのが素晴らしい。
友達の話とかも聞いてて思ったのは、そうやって試すようなことするやつが結構おるってこと。
男女限らずな。
けどそういうやつに限って、自分がやらかしてるっていうパターンの多さ。
自分があかんパターンのやつやから、相手もそうちゃうかって不安になるんちゃうかな。
まぁ、咲水との付き合いでちょっと勉強になったわ。
咲水に引っかかった俺はたいがいアホやったってこと。
相手を試すようなやり方をする奴は、大体自分が試されたら困るようなアホメンヘラが多いってこと。
<終わり>
相手を試すようなやり方をする奴は 赤茄子橄 @olivie_pomodoro
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