「いつもつまらなさそう」の裏に隠れていた本当の自分は——

 ノー残業デーをすっかり持て余してしまった佳苗二葉は、通勤路の途中にある『手芸喫茶 自由時間』なる店のことを思い出す。父の形見である編み棒を携え、おずおず踏み入ってみれば、おっとりと品のいい店主“サチ”とこの場を愛する人々が迎えてくれたのだ。

 元カレ含め、関わった人の多くからつまらなそうでおもしろくない奴だと評される二葉さんは、ユウ——実は同じ会社の同期である水城勇斗くん始め、様々な人が集うあたたかな場所の中で本当の自分を見出していくのですが。

 真っ先に注目していただきたいのは人物像の深さと表現の巧さ! 詳細は本編で見ていただくとして、彼女のトラウマがあることをきっかけに“形”を得、せっかく見つけた『自由時間』から逃げ出してしまうに至るその重さと、そこから自身と向き合い、先へ進んでいくことを選ぶ力強さ。二葉さんの有り様そのものがドラマとして輝いているのです。

 まとめるならば、二葉さんが自分を認めて許すまでの厳しくてやさしい物語。悩める方も自身に自信がおありの方もぜひご一読を!


(「喫茶店へ行こう」4選/文=高橋 剛)

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