八、事故の真相

「蔵、気になってる?」

 庭に出たものの、蔵の鍵はしまっているから所在なくうろうろしていると、マサくんが現れた。

 女の人がマサくんのうしろについてきている。誰だろう?

「この子、明葉あきよちゃん。おばあちゃんのお葬式来れんかったけんって。ひさしと俺の同級生」

 明葉さんは軽く頭を下げてから、私をじっと見ている。会ったことないはずなんだけど、妙に敵意を感じる。

「鏡やろ? ずっと前、おばちゃんがいなったゆうてたやん」

 とげとげしい口調で明葉さんは言った。

「おい、それ言うたらいかんって……」

 マサくんはため息まじりに言った。

「え、鏡のこと、知ってるの? どうして? おばあちゃんじゃなくておばさんが?」

「ひさしが見せてくれた」

「ひさしくんが? いつ?」

「ひさしが事故にあう、少し前やったよな」

 三人同時に黙ってしまう。

「ずうっと前に、おばあちゃんに見せてもらいよったんやろ。それを明葉は、こっそり見てたんやって。さやちゃんが気に入っとるから、どんなもんか、ちゃんと見てみたい言うてな」

 初めて鏡を見せてもらった場所は、おばあちゃんの部屋。私が小二の頃だったと思う。

 それを、ひさしくんじゃなくて明葉さんが見ていたの?

「夏休みのたんびに、あたしよりこの子ばっかり気にしとったやん。おもしろないやん? そんなん……いややんか」

「どういうこと?」

「あのとき見た鏡をちゃんと見せてくれたら……夏休みにひさしのいとこと遊んでもええよって、それで」

 そこまで話したところで明葉さんは、突然泣き始めてしまった。

「ひさしは約束通り、鏡を明葉に見せた。どうやって持ち出したんかは知らんよ。俺らと明葉に見せたあと、一人で家に帰る途中、事故に」

 

 

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

おつかれさん、おやすみなさい 香坂 壱霧 @kohsaka_ichimu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ