エピローグ3 『聖殿の奥、その深淵で』




 かくして、雛二匹は仲間を得る。


 寂れた国はその異常の一端を少女に垣間見せ、騎士は少年に力不足を知らしめた。


 博識ゆえの無知。

 半端ゆえの無力。


 その過程は経験となり、二人の旅の道筋は僅かに強固となった。


 だが、いまだ彼女らは世界の一端しか知らない。


 旅は必然。

 苦労も必然。


 苦難を経て、少女は世界のすべてを知るための資格に無意識ながらも触れた。

 他人の血に触れて、少年は少女を守るための資格を問われた。


 だが、まだこれはほんの序章に過ぎない。

 序盤も序盤。本で例えるなら二ページ目でしかないのだから。


 世界は無情だ。

 その在り方の本質は『ただ存在するだけ』であり、神は誰も見てはいない。


 想像し、創造し……そして放置した。


 神様は過程を求めていないのかもしれない。

 結論しか必要ないのかもしれない。


 その答えが一冊の本であり、神がこの一冊を作り上げた理由なのだろう。


 人が繁栄し、栄光を極め、没落していく……。

 成長し、衰退し、命を落としていく。


 それが生物の性質であり、世界の性質でもある。


 全ては必然。

 これまで綴られてきた物語は必然であり、この後に綴られる文章も必然でしかない。


 だからこそ、期待するのだ。


 運命という必然に人間は抗うことが出来るのか?

 定められた道筋から人間は逸れることが出来るのか?


 それを記録できる本を持つのは誰でもない……一人の少女だけだ。

 綴り、継承し、繋いでいく……それが出来る唯一の血族だけだ。


 だからこそ、運命にあがなう資格を持つ唯一の人間でもある。


 結論は分からない。

 なぜなら、それを見ることが出来るのは一人だけだから。


 だから、この目で見届けている。

 この世界はどう成長していき、どう衰退していくのか。


 その過程を、一人の少女の目を通して——


「——さて、うちのバカ娘はちゃんとやれるかねぇ……?」


 三大国家の一角——聖国。

 その中央。教会の総本山である聖殿……その最奥。


 清らかな空気が漂い、ステンドグラスを通した色とりどりの輝きが照らすその深淵で。


 世界と繋がる樹木に背中を預けた男は、この地を目指す娘を脳裏に浮かべてクスリと微笑んだ。





   ~  ~  ~  ~  ~


 これにて、第二章『聖国の聖女と見捨てられた国』は終了となります。

 ここまでお付き合いくださった皆様、本当にありがとうございました。


 次回は、次章を書き終えた段階で投稿を再開する予定です。

 その時にまた会えることを楽しみにしております。


 では改めて、ここまで読んでくれた皆様本当にありがとうございました!

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