エピローグ2 『狂気は確かに迫って』
「た、助け……ぎゃぁぁぁぁ!」
「ひっ!? たす、嫌だぁぁがぁああああ!?」
ディラピデ王国の端。
シェリアたちが立ち寄った村よりもさらに小さい村に、王国筆頭魔術師シア=インサディアはいた。
「ほら、もっと逃げろよ! 訓練にならないだろ!」
直後、迸る雷の矢が村の男を貫く。
ビクビクと体を痙攣させ、倒れ伏す男。しかし、その口元からは苦悶の息が吐き出され、ちゃんと息があることが確認できた。
「まったく面倒くさいよなぁ……王様は他国だから殺しは避けろっていうし、でも殺さないと必死になって逃げないし」
もう一人、雷の矢に貫かれて倒れる。
「はぁ……つまらない訓練につまらない研究。シェリアがいなくなってから本当につまらなくなった。ねぇねぇ? もっと必死に逃げないと今度はこっちを狙うよ?」
筆頭魔術師の視線の先、そこには縄で縛られた子供たちが震えていた。
「子供の体って大人よりも弱いよねぇ……大人たちなら耐えられるかもしれないけど、子供に撃ったら死んじゃうかもしれないなぁ……」
「「「っ!?」」」
「そうそう! なんだ、やろうと思えばできるじゃん。なんで最初からやらないの? ねぇねぇ!」
雷を三射。
電気というものは厄介で、急所に当たらなくてもどこかに当たれば感電という効力を発揮してしまう。
それは耐えられるようなものではなく、体が勝手に反応してしまうのだ。
当然、必死に逃げ惑う村人たちも地に倒れ伏せた。
「はぁ……つまらないな。鍛錬していない連中を相手にしても練習にもなりもしない。まあ、暇つぶしにはなったよ」
一欠伸をして、詠唱を開始する。
それは、広範囲に魔術を広げるためであり、この狂人が先へ進むことを表していた。
「じゃあね。大丈夫殺しはしないよ、たぶんね。
瞬間的に広がる電気の網。
村人たちはその網に絡めとられ、声なき悲鳴を轟かせた。
「うーん、小さい村を回っても意味はなさそうだし……リスクはあるかもしれないけどディラピデ王都に行ってみるかな?」
男は進む。村人たちなんていなかったかのように。
この男の頭上でも、太陽はその光を存分に輝かせていた。
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