超人の戯れに加わる

この小説を、戯れ、と称するのは作者様に失礼だと実感しています。しかし、その言葉が適切だと信じるのです。

本作は、先鋭的な設定が特徴ですが、私はあえて人の心理を見たいです。

歴史的転換点以降、私達の常識の埒外にある能力を手に入れた選ばれし者達が、未曾有の危機が日常と化した世界に立ち向かいます。しかし悲壮感はありません。世界と自身の生命の危機に、軽口を叩きながら対峙します。

それは戯れ。文字通り人を超越した超人の戯れ。私達の日々からは隔絶した何か。

日常の分別は、物語では捨て置いて構いません。現実に存在せぬものを楽しむのは物語の愉悦。大人にとって全能感は悪? そんな常人の道徳は投げ捨てて良いのです。ひたすら遊びましょう。

また、高い文章力を装飾より文意を正確に伝えることにつぎ込んでおり、読者は混乱することなくストレスフリーで読めます。技術は読者に親切に使うべきもの。それを見て、評者は自分でも書き物をしますが、今までの自分に反省する次第です。

技術と職業倫理に裏打ちされた、とても確かな小説です。

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