ホラー小説について、【追記あり】

スロ男(SSSS.SLOTMAN)

ホラー小説三人娘、のあと一人誰でしたっけ?



ホラー小説について、


 もともと日本ではホラーは流行らない、一部好事家のもの、という状況が変わったのは、角川のホラー大賞の影響が大きいのは間違いないと思います。

 ただ出版社は営利事業ですからねえ。電通みたいなとこならテキトーなこと書いて(密かなブームだの次はこれがくるだの)、当たればドヤる、みたいなこともできるでしょうが、広告屋とは違うわけで。

 これからはホラーが来る、という算段でホラ大を作ったのは確かめるまでもなく当時の肌感覚でわかったのを覚えています。


 そう、ホラーがくるかも、という流れは女流ホラー作家が一気に出てきた、というアレです(アレってなんだよw)。

 篠田節子、坂東眞砂子、……あれ、もう一人は誰だっけ……? 三人いたはずなんだけどなあ……ダメだ、いまググってみたんですがわからんw

 皆川博子や小池真理子ではなかった、です。確か。


 ホラ大と同時に(ほんとか?)できたホラー文庫。最初はカーナッキやサイレンス博士などのホラーの名作とか(未読)、推理作家に書かせた書き下ろしとか、そんなのしかなかったんですよ。

 気になる人は調べてみてください。私の記憶は定かではない(断定)。

 ホラ大が成功したのは『パラサイト・イブ』の商業的成功、ホラー文庫の成功は『リング』がじわじわ人気を博していった、だったと思います。


 そこらへんのホラーを受け入れる土壌が出来始めた頃、モダンホラーの翻訳が多くされるようになってきたとか(キングはいうまでもなくマキャモンとかバーカーとかの作品がどんどんやってきた、ですね)、ホラ大を落ちた『バトルロワイヤル』が話題になって映画化されたとかあたりがピークでしょうか。


 ホラーは一つのジャンルとして定着した感があります。もともと怪談の好きな民族ですから、ホラーが一時追放されていたのは、きっと宮崎事件あたりの影響が大きいのでしょうね、と個人的に思います。


 まあお笑い小説なんか価値がない、みたいなのと一緒で、なんで金出して怖がらなきゃいけないんだ、みたいな人は当時は今以上に多かったんじゃないか、と思いますし。


 そんなホラー小説ですが、怖くないと噂されるモダンホラーに限らず、なかなか「うおおっ、こええ!」までに至る作品には私は出会ったことがございません。私の想像力や感性に欠陥がある可能性もありますが、ヤダなにそれこわい、ではなくともサスペンスとして面白い、物語として面白い、とかも沢山あるわけです。


 いつものこのテイの私の文章の支離滅裂さは、そろそろ何回か読んだ人は気づいているでしょうが、最後にオススメのホラー小説をいくつか紹介して終わりにしたいと思います(なんかホラーとはなんぞやとか、書こうと思ってたのに飽きてきたw)


『リング』(鈴木光司、角川ホラー文庫)

 いまさら、と思う人もいるでしょうが、案外原作は読んでない人もいるのでは? 日本ファンタジー大賞で入賞した『光射す海へ』なんかもございますが、変に感動させようとか人間とはなんぞや的なセッキョー臭さのまったくない、エンタメに奉仕した『リング』は、やっぱり傑作だと思います。

(公募ガイドのインタビューで加賀乙彦みたいな作品を書きたいとかいってたのを思い出しながらw)


『墓地を見下ろす家』(小池真理子、角川ホラー文庫)

 小説で読んでてかなりゾクゾクとした記憶。あとでスジとか思い起こすと、えなんで笑わず読んだの俺、みたいな場面も多々あるんですが、これは筆力というものなのだろうなあ。という作品。まだ流通してるんですかね? 古本じゃないと無理?


『ガダラの豚』(中島らも、集英社文庫)

 ホラー部分はそこだけ抜き出してみてもそこまで怖い、という感じでもないんですが、エンターテイメントの傑作として。元超能力少年のあの部分はゾクっとしました。


『デッドゾーン』(キング、新潮文庫)

 あ。これもう絶版なのか……。これ実はまんまパクリの富沢順の読み切り漫画先に読んじゃってたんですけど、それはそれとしてグイグイ読ませるキングの手腕に、ハラハラさせる王道の展開が組み合わさるとこんな面白いのか! と当時思った記憶。ここで紹介すべきなのはむしろ『呪われた町』のほうだったかな、と若干後悔しながら、個人的趣向でw


『エクソシスト』(ピーターブラッティ、創元推理文庫)

 いわずと知れたモダンホラーのパイオニア。妙に乾いた文体に、怖さとかはまったくなかったんですが、おおこれがモダンホラーかと腑に落ちた一作。公開時にはこわすぎるというのでカットされたという、いまでは誰でも知ってるスパイダーウォーク部分とか、なんかさらっと書きすぎてて読んでて笑っちゃった記憶。ホラーと笑いは紙一重、なのかもしれないなあ。楳図一夫の例を出すまでもなく。話は逸れるんですが、横溝正史とか、おどろおどろしい因縁話を書いてる人、というイメージだったのに読むと意外とさらっとしてるというか、モダンなんですよね。日本のモダンホラーのパイオニアは横溝正史なのかも。


 わりと有名どころばかり出しましたが、ホラーってのは本当、ある意味エンターテイメントのすいだよなあ、と思っております。正直、そんな全編恐怖オンリーなんて書ける人いないし、読む方も耐えられないでしょう?


【追記2】

 こんなタイトルのエッセイもどきを書いておいて、そして気づかなかったならともかく気づいて(読んで)しまったのに、触れないのはこれは流石にアカンだろうということで。


本文ってリンク貼れるんでしたっけ?


『近畿地方のある場所について』背筋氏著

https://kakuyomu.jp/works/16817330652495155185


 注目作品のところで名をさらっと目にしていながら、Googleで「カクヨム」を検索するとサジェストで「近畿地方」と出ていて「? なんじゃこれ?」と違和感を持ったときも、まさか特定の作品を指しているとはまだ気づかず。それでね、読みましたよw

 おお、こりゃ凄い。

 (乱暴なのは承知で)一言でいってしまえば昨年流行ったフェイクドキュメンタリー「Q」の文章版といったところか。いわゆるモキュメンタリーというやつですが、こういうのこそ「細部への拘り」が要求されるし、此岸こちら彼岸あちらを橋渡しする何かなのではないか、と思わせるリアリティが必要となる、というのに、なかなかに《野生のプロ》を匂わせる作品でありました。

 この手の本文でカクヨム在住の作者の作品を上げるのってどうなんだ、とも思ったんですが、本項の〆で

『正直、そんな全編恐怖オンリーなんて書ける人いないし、読む方も耐えられないでしょう?』

 と書いちゃったのが速攻覆ってて、我ながら笑ってしまったので(しかも私がこれを書いた時点ではとっくに終わってた……終わってるのか、あれ?)、その不明を恥じる意味でも追記とさせていただきました。

 見つけられてくださってありがとうございます、ですだすw



追記:あのあと色々胡乱すぎないか、とググってみたところ、時系列がかなり怪しかったので一応w

ホラー文庫創刊が93年でホラ大が始まったのが94年でした。坂東眞砂子『死国』が93年、篠田節子『化鳥』がやはり93年で、ホラー文庫は出来てた、ホラ大はもうじき、という頃合いの話ですね、三人娘。

当てはまりそうなのって小池真理子ぐらいしかいなさそうなんだけど、うーん、なんか違う様な気がするんだよなあ🤔


ついでなのでホラ大、特に短編賞についての当時の所感を書くと、『ぼっけえきょうてい』はよく出来ているけど怖くない、その前の『玩具修理者』はクトゥルーネタとか散りばめつつこれで大賞なの⁉︎という感じだったんですが、併せて文庫本となったうちの一本『酔歩する男』が無茶苦茶面白くてねえ、小林泰三のファンになりましたw で、もう一本『Dブリッジテープ』というのがありまして。これなんか妙に熱狂的なファンというのが身近にいたりしたんですが、刺さる人には刺さるんだろうな、という作品で私には刺さりませんでした。が、若者の、特にナイーブな人や感性豊かな人には刺さるだろうことを感じさせるモノだったのは立ち読み(汗)ながらヒシヒシと伝わりましたことだよ。以上。

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