転生!? 女体化!? ——その先にある深いテーマ

主人公サトーは現世の仕事に疲弊した28歳の平凡な会社員男性。
あるとき若者の自殺を止めようとして巻き込まれ、気がついたら浜辺に打ち上げられていた。

異世界転生というものをほとんど読まないので、これがセオリーどおりなのか自分には分からないのですが、とにかく異世界に転生する。

現れたのは変幻自在の文化人類学者フィス。
髭モジャのお爺さんかと思えば妖艶な女性に姿を変えることもある。

サトーが「ニパン」という聞いたこともない国からやってきたと知って、フィスは彼を旅の共としてその暮らしぶりを聞き出そうとする。



物語の出だしはサトーとフィスの交流と、転生先の旅行記のようで、ややスローペース。しかし地の文から旅先の情景や、人々のちょっとした生活がうかがえて面白い。

またサトーの転送先での不安や、現世へはなんの思い入れもないように見えて実は悲しい心情などが、3/26〜27あたりにふっと出てきて胸を掴まれた。
3/27には最後フィスから衝撃的な告白があって、この辺りで一気に引き込まれた感がある。



副題にもある女性だけの村ニャイテャッチが出てくるのは3/31からなので、ストーリー進行を遅く感じられるかもしれないが、そこに辿り着くまでにも物語が詰まっているので、ぜひ最初からじっくり読んでもらいたい。

クスッと笑えるシーンや馬鹿馬鹿しいようなやり取りの中にもウィットに富んだ言葉が散りばめられていて、作者の地肩の強さが見え隠れする。



特にニャイテャッチに入ってからは、彼女たちの牧歌的で本能的な暮らしぶりからサトーが内省を深めるシーンに感動した。
本来「暮らす」とは、生きるとは、あるいは「男女」とは、愛とは。
転生先には、壁に囲まれた都市もあれば、原始的な村もある。果たしてどちらの暮らしが幸せなのか。幸せとは何か?

「転生」「女体化」「女だらけ」という流行りモノや刺激的な「タグ」の先に、現世・現代に通じる深いテーマ。
最新更新の4/1まで読んだところでレビューを入れていますが、今後が非常に楽しみなお話です。

(余談ですが、「ニャイテャッチ」という不思議な音に誘われて、何度も声に出して発音しようとしては失敗しています)



-----追記
読み終わりました。ニャイテャッチの部、完成おめでとうございます。
最後まで目の離せない展開で、王様がまさかの…!!
声を上げて驚きました。

ぜひ次の旅も書いてほしいです。

未読の方、固有名詞がわからなくなったら、最終話「旅のメモ」を見ながら読まれることをお勧めします。