第3話
その日は暗くなる前に森田とは別れた。
森田は「今度お祓いに行こうぜ」と呟き、バイクに乗った。
僕は彼の肩を叩き、気をつけて帰れよ、と言った。
彼は何も言わず頷いた。
彼がエンジンをスタートさせたので僕は少し後退りをした。
去り際に彼が何か呟いたように見えたが、こちらが聞き返す間もなく彼のバイクは走り去っていった。
森田の訃報を聞いたのは翌日のことだった。
通夜に行くまでの事はあまり覚えていない。
通夜会場には訃報を聞いた大勢の人が集まっていた。
森田の両親は憔悴しきっており、とてもじゃないが声をかけられる雰囲気ではなかった。
森田の納められた棺の蓋は閉じられており、森田の顔を見ることはできなかった。
会場の外に出ると、同級生の一人が声をかけてきた。
どうやら森田は彼の自宅の側で事故を起こしたらしく、救急車を呼んだのも彼だったそうだ。その時の状況を教えてくれた。
森田が事故を起こしたのは片側2車線の直線道路で、現場にバイクのブレーキ痕があったらしく、どうやら急ブレーキを踏んだ際の反動での事故だったらしい。
ブレーキの反動で身体が浮き上がり、そのまま頭から地面に叩きつけられたらしい。
ブレーキを踏んだってことは誰かが飛び出したのか、と僕は彼に尋ねた。
彼は「さあ?」と答えた後、「あの辺は田んぼがあるし、動物が飛び出したかもしれないが、人が飛び出したみたいな感じではなかったよ」と言った。
「たださ…」
彼はタバコに火をつけて、顔をしかめた。
「俺が救急車を呼んだんだが、森田には悪いが、あれはちょっとトラウマだな…。頭から地面に落ちたあと、まだ息があったのかわからないけど、あいつ俺が見つけた時は倒れ込むわけでなく座り込むような形になってたんだよ。体育座りみたいな感じでさ…。ただ、その…なんだ、首が折れちまったんだろうな…。」
彼はタバコを口にし、大きく煙を吐いた。
「あいつの首が、首振り人形みたいに揺れててさ…。不謹慎だったがホラーだったよ。その後も警察とかの事情聴取もあったりで、あまり寝れてないよ…と、これはただの愚痴だな。嫌な話しちまったな。お前森田と仲良かったから一応聞かせとこうと思ってな。忘れてくれ。」
彼はそう言うと会場の中に戻っていった。
僕は自分の背中が冷たくなるのを感じていた。
山 宇山雪丸 @douganhoushi
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