私は幽霊なんて信じない
御厨カイト
私は幽霊なんて信じない
「ねぇ、凛、知ってる?この学校の裏庭ってお婆ちゃんの霊が出るんだって」
教室でいつも通り本を読んでいた私に対して、親友の美香はいきなりそんな事を言ってきた。
まだ、1限目も始まる前だというのに騒がしい。
「……朝っぱらからいきなりどうしたの?何、またそういう心霊番組でも見たの?」
「違うよ!私を何だと思ってるの!」
「だって、美香、そういうテレビ番組にめちゃくちゃ影響受けやすいじゃん」
「確かにいつもはそうだけど、今回は違うもん!」
『ふんすっ!』と少し興奮したように言う彼女に、私はため息をつきながら本を閉じて彼女の方を向く。
「なんかね、深夜、あそこを通ったら『掘り返して』っていう声が聞こえるんだって。それで近づいたら、白っぽいお婆ちゃんみたいなのがこっちに向かって手招きしてるんだって!」
「……っていう、誰かから聞いた噂でしょ?」
「えっ……まぁ、そうだけど……。それでも、そのお婆ちゃんの霊を見たって言う人も何人かいて」
「それでも、美香は見て無いんでしょ?」
「……うん」
さっきまでの興奮はどこ行ったのか、私がそんな正論を言うと美香は一気にシュンとなる。
「じゃあ、所詮はただの噂って訳だ」
「で、でも、隣のクラスの澪ちゃんだって見たって言ってて」
「きっと何かと見間違えたんだよ。そもそも、深夜にあんな灯りとか全然無い裏庭で何かをハッキリと識別する事なんて不可能だよ」
「……うーん、言われてみれば確かに」
「ていうか、そんな深夜にこの学校の裏庭に来る用って何?その『幽霊を見た』って言った子たちはそもそも何でそんな時間にここにいたの?そっちの方がどう考えても怪しいじゃん」
「……冷静に考えてみたら確かに色々おかしいね、この話」
「でしょ?その話をした子たちはなんか見栄とか張りたくてそんな嘘をついたんじゃない、知らないけど」
もうこの話は終わりだと言わんばかりに、私は置いていた本を開いて読み始める。
美香もそんな私の様子を見て、「ふぅー」と息を吐いた。
「なんだー、結局は嘘話だったのかー。聞いた時はワクワクしたのになー」
「まぁ、まず幽霊自体この世に存在して無いからアレだけどね」
「えー、凛は幽霊信じて無いの?」
「信じて無いよ、あんなの。あまりにも非科学的な存在すぎる」
「でも、いたら面白いと思わない?」
「思わない」
「むぅ、つまんないな~」
「つまらなくて良いよ。はい、そろそろ授業始まるから自分の席に帰った帰った」
丁度チャイムが鳴り、先生が教室に入ってきたところで彼女は渋々といった形で自分の席へ戻って行った。
……それにしても、学校の裏庭でお婆ちゃんの霊が出る、か。
そもそも、あそこにお婆ちゃんの霊なんて出る訳が無いのにな。
だって、そこに埋めたのは若い男の人だもん。
やっぱり幽霊なんていないね。
私は幽霊なんて信じない 御厨カイト @mikuriya777
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