第7話 移動

星野ほしのがA組の魔法授業を始めて1週間。生徒たちは徐々に能力が操れるようになってきた。


だが例外も生まれていた。

なぜか血架ちか未来みくだけ全く上達しないのだ。

「何でうまくなんないんだよぉ〜!」

そう嘆く未来と一緒に、血架は屋上でジュースを飲んでいた。

2人で改善案を模索中なのだが、

「何か足りないのかな?」

血架はそう呟く。

そう。まずはそこからなのだ。

改善点どころか問題点すら見つかっていない。

「どうやったら先生みたいにボンッシュルルルルドカンってできるかな?」

「擬音ばっかで何も伝わってこない、、、」

血架が未来をなだめながら頭の中で考えていると昼休み終了のチャイムが鳴った。

「未来。行こう」

血架が未来を呼ぶと未来は元気に敬礼する。

「いえっさあ!」


今から始まる5限目は実戦式演習授業じっせんしきえんしゅうじゅぎょうを行う。

血架含めA組12人がグラウンドに並ぶ。

グラウンドには事前にバスが停まっていて今からそこに乗り込み演習場に行く。

「席順は出席番号だからそのまま乗り込めー」

星野が号令をかけ12人全員がバスに乗った。


血架の隣に座ったのは髪をポニーテールに結び寂しそうな目をしている少女だった。

「・・・」

気まずいっ!!

血架は人見知りのため話かけることは得意ではない。血架にとって未来のような人種がちょうどいいのだが、みんながみんなそうという訳にはいかないのが現実だ。

それでも勇気を出して話しかけることにする。

「あ、あの。俺、あかね血架って言います。よろしくお願いします!」

言えた。

血架が思いっきり安心する。

「・・・」

だが返答がない。

血架が少女をよく見ると、彼女は顔を赤くしてうつむいていた。

「具合悪いですか?」

血架がそう聞くと聞こえない絶妙な音量で少女が答える。

「違、う」

返答が返ってきたことと具合が悪くなかったことに血架は安堵する。

「名前。聞いてもいいですか?」

血架は再び質問する。

「、、、つ、月姫つきひめ火影ひかげ

少女が小さく名乗る。

「月姫さんか。いい名前」

血架が誉めると火影がもっと顔を赤くする。

2人が自己紹介を終えるとバスが目的地に着いた。


演習場は街そっくりに作られた生徒たちが実戦用に訓練するための場所だ。

「今日は、こちらの大杉おおすぎ先生に3級魔獣を召喚してもらいそいつと戦ってもらう。」

星野が説明すると隣に立っていた女性を紹介する。

「紹介をいただきました。大杉あんです。」

長い黒髪を束ねた女性が名乗る。

「事前に僕が2人1組でチーム分けをしてあるから協力しろよ」

星野はそう言いチーム分けを始めた。

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2/1ガーディアン 89林檎 @pikatyu8desu9

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