閑話ーIt's a magic carpet ride

閑話ーEvery door will open wide




Sunny day

Sweeping the clouds away

On my way to where the air is sweet

Can you tell me how to get




目が覚めた。



列車の中で

つい

うたた寝してしまったようだ。



駅のホームで食べたアイスキャンデー。

猛暑の中では

冷たくて美味かった。




形の無いを持ち帰る時は

無性に眠くなる。

食欲も沸かない。


ついつい

氷菓や甘い飲み物に

手が伸びてしまう。




それでも今日は

幾分緩和され、悪夢も視なかった。



帰りがけにホームで

電話を掛けたのがよかったのだろう。


気持ち悪さもない。


幾分か、それ以上に

彼がくれた。



到着までは まだしばらく。


夕刻。

陽も暮れ始める。

窓から見える空も

紅が宵闇色に押され

交じり合う。




車両内。

客の姿はまばらになっていた。

四人掛けの席に

ぽつり、ぽつり座るほど。




音楽が聞こえて、

目が覚めて。



乗客の誰かのラジオだろうか。

それとなく周囲を見る。





Friendly neighbors there

That's where we meet

Can you tell me how to get

How to get to





聞き覚えのある曲だった。

妙に懐かしい。



斜め前の座席に

妙齢の女性が座っていた。

白髪が非常に美しく、

向き合う座席には

お連れがいるのだろう。

女性の笑みは

実に楽しそうだった。


女性の前に座る人。

彼女の夫に違いない。

山高帽だろうか。

帽子だけが見えていた。


すっかり珍しくなった。

少し前の世代であれば、礼服と共に

被っている人も見られた山高帽。




Every door will open wide

To happy people like you

Happy people like

What a beautiful



音楽は

あの女性のいる席から

聞こえる。


音楽に合わせて

女性の口元が動き、

心なしかリズミカルに

体が揺れている。


微笑みは

実に楽しそうで。


ああ、

本当に

なんて楽しそうなんだろう。



Sunny day

Sweeping the clouds away

On my way to where the air is sweet

Can you tell me how to get




妙齢の女性の無邪気な笑顔につられ

笑みを浮かべてしまう。


膝に掛けられたハンカチに

目がいった。

なにかのキャラクター絵が

描いてある。


ハッキリと確認するには

遠かった。

気にはなるが

突然声を掛けて見せてもらう様な

無粋な真似も出来ない。




Come and play

Everything's A-OK




女性と目が合ってしまった。


軽く会釈した。

しげしげと見つめてしまった

詫びも込め。


女性は、

楽しそうに

照れくさそうな笑みを浮かべ。




消えてしまった。




音楽も消え。



山高帽も消えた。






線路を走る列車の音だけが

聞こえる。














駅には

が迎えに来ていた。


寺のある山。

入口付近にある修行寺の

顔馴染みの若い修行僧が

車を出してくれた。


最寄り駅。

いつもは 

そこから山の近くまでタクシーで、

入山口にゅうざんぐちからは徒歩だ。

徒歩でも

かなりの時間が掛かる。


ありがたい。




「セサミストリートのテーマ」


「なに?」


「ハルが列車で聞いた曲」


「ああ!

 そうだ、セサミストリートだ!

 良く知ってるのに

 列車で思い出せなくて」




小さい頃に

本当にあると信じていて

すごく行きたかった場所だ。


運転していた若い修行僧も

小さい頃にセサミストリートが

好きだったと話に加わってきた。




「ひっどいなあ、八角さん。

 小さい子の夢壊すようなこと言うて」


「だって連れて行けって言うんだぞ。

 遊園地でもあるまいに、

 連れて行けないだろうよ。」


ただのTV番組だから、

アメリカのスタジオにセットがあって・・・

云々。


信じている子供の夢は

木っ端微塵こっぱみじんだ。



そんな夢を壊すことを言う


それでも随分大きくなるまで、

毎日遊んでくれたのだ。


に暮らせるようになるまで

日がな一日一緒に居てくれた。


思い出は、いつも感傷的になってばかりで。



「おい、お前の寺で飯を食うぞ」


「えー、今からですか」


「大丈夫だ、住職に言えばすぐに出てくる!」


「もう毎回 無茶を言うてますなあ」



二人の笑い声は

夢のうつつの中、せせらぎに紛れていた。



























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