第4話 水溜まりに溺れる
所詮私はきっと、他の誰かの為に生きてきたのだと思う。
現状に甘え、誰かの為と自己防衛を繰り返して生きてきた。
だから、彼女のような自分のために努力ができる人を馬鹿にし、弱さを隠す。
そういえば、髪を伸ばしているのも、真っ黒なままなのも、誰かに褒められたからだった気がする。
私の体は、自分の意思で動いていないのかもしれない。
部屋の中で感じた彼女との違いとそれでも自分のことを認めたい私との戦いは、引き分けといったところだろう。
もう雨は止んだ。
暗くなった空を窓から眺めていても、つまらなくなってカーテンをいつもより強い力で引いた。
彼女にはこの世界がどんなふうに見えるのだろう。
花、月、海、蝶。
昔から私は景色に感動できない人だ。
彼女は綺麗と思うのだろうか。写真のようにずっと残り続けるのだろうか。
私は水溜まりで土や煙草の吸い殻と共に溺れてしまった。
彼女は見向きもしない、汚いものの一部になったようだった。
カーテンの裾が風で踊った。
なにも思わなかった。
雨に降れる @karishakuhou
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