『世にも奇妙な物語 2024夏』をレビューしてみたよ
新作の筆がなかなか進まない今日この頃、年二回恒例の『世にも奇妙な物語』の特別編が6月8日に放送されました。
今回もちゃっかり視聴したので、レビューエッセイでも書いていきます。
いつか書き忘れていた昨年の秋の特別編についても書いていきたい。
○追憶の洋館
今なお人気の高い『恋の記憶、止まらないで』など、いずれの作品でも高いクオリティを見せてきた諸橋さん脚本による作品。本作でもその作りこみは健在であり、伏線の回収も相変わらずお見事でした。このストーリーをしっかりと活かした演出も良かったと思います。
ここ最近、というよりもこの番組自体のあるあるなんですが、一話目は抑えめにしないといけない決まりでもあるのか、その回の他作品と比べて評価が低くなりがちなんですよね。そんな中で一話目の人気が高かったものは、『15春(人気マンガ家共演編)』の
『面』あたりでしょうか。そうした中で今回は一話目から飛ばしてくれたなあという印象です。
○友引村
総評でも書こうと思っているのですが、今回の特別編は全体的に気持ち悪さがいつも以上に高かったように思います。中でも本作はその極みと言える内容だと感じました。
村に関係する人、空気感、そして食べ物……全ての気持ち悪さがミックスされることで、ラストの絶望感が高められていったのでしょう。ヒトコワの原点とも言うべき『世にも』の底力を見た気がします。
難を挙げるとすれば、他に指摘されている人もいたのですが、ホラー作品とするには演出が軽かったのではないかということ。この点に関しては、担当の小林監督が『スウィート・メモリー』や『タテモトマサコ』のようなサスペンス作品を得意とする方だったため、本作もサスペンス的演出をメインとしつつ要所要所でホラー要素を足したことによるものではないかと考えられます。この辺は演出の好みによる部分も大きいかと。
○人類の宝
まず見終わった後で思ったのは、「もしかして本当はこの作品を一話目に持って来たかったんじゃないか?」ということ。これは別に本作が面白くなかったと言っているわけではなく、今回の作品群で比較すると、詰め込み過ぎ感が強く、オチや展開を考えるとまとまりがない箇所が散見され、現在の放送構成になってからの他の特別編の三話目と比べると、ちょっと釣り合いが取れないように感じました。
ここからはあくまで予想なのですが、『追憶の洋館』に出演していたジェシーさんが所属するアイドルグループ「SixTONES」のメンバーの一人である森本慎太郎さんが、22時から放送の他局のドラマに出演している関係から、メンバー同士の裏被りを避けるために放送順を固定せざるを得なくなったのではないのでしょうか。
主演の高杉さんを始め、役者陣の演技は見事でしたが、前二作と比べるとどうしても物足りなさを感じてしまい、明らかに放送順で損をしたな、と思わされた作品です。
○週刊 元恋人を作る
上記の裏被りのドラマの件にも関わってくるのですが、大谷役の竹財さんもそのドラマに出演されているそうで。放送直前にその情報を掴んでいたこともあって、本作が始まってから竹財さんの顔が映らないので、上手いこと顔を隠してるんだなあ、としか思っていませんでした。この情報が無かったら後の展開が読めていたかもしれませんが……まさか恋の夢から醒めたという展開のための演出だったとは全く気づけませんでした。
短い作品なので、気楽に見られる佳作だと思います。
○総評
今回の総評は以下の三点。
・全体的にキショかった
もちろん褒めてます。しかもそれぞれの作品が全く違う気持ち悪さを持っていたため、『世にも』が持つ様々な顔を見せつけられました。
・過去作を彷彿とさせる要素や展開
『追憶の洋館』では同じ脚本家による『ソロキャンプ』的要素を主軸にしつつ、『朝まで生殺人』の小説家版のような展開に。『友引村』では同じ村ホラーの『輪廻の村』や『死後婚』を想像させながら、『おばあちゃん』に通じるようなオチを用意。(途中の黒い料理は『理想のスキヤキ』の黒いアレっぽくも感じたり……)
『人類の宝』のラストはそのまま『人間国宝』や『最後の喫煙者』。
このように、狙ったものかは分かりませんが過去作をオマージュしたような作品が多く、『世にも』らしい展開が多かったという意味では古参マニアよりも新規ファンや初心者の方が楽しめる回だったのではないでしょうか。
・各作品の間延び感
特に今回は各作の展開上、昔のように15~20分前後の時間にした方がもっとテンポ感が出たように感じました。
これは前回の『23秋』の時間配分が良かったから余計に感じたのでしょう。四作中二作が上記時間に収まっていた他、『走馬灯のセトリは考えておいて』が感動作は短時間だと感情移入させるのが難しいとされていることを逆手に取った長尺作でした。
予算の都合もあるのかもしれませんが、やはり改めて今の構成に不満が出る結果となりました。
ここまで色々と書いてきましたが、今回の特別編も何だかんだ楽しませていただきました。スタッフならびにキャストの皆様、お疲れ様でした。次回も期待しています。
鬼平主水の思うところ 鬼平主水 @Mondo-Onihei
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