第19話 ダメ〜!!
自宅の布団に寝転びパソコンで動画を眺めていると、玄関ドアが開く音が聞こえた…。
バタバタと走り寄る足音が近づき、いきなり俺の背中に覆い被さる女の子…孫のナミだ。
「じぃじ!」
「おや?誰かな?子豚さんかな?」
「違うよ!ナミだよ!」
「ブヒブヒ言ってたから、子豚さんかと思ったよ…じゃママかな?」
「ブヒブヒはママよ〜!」
まだ5歳のナミは母親である俺の次女をおちょくった。
「こら〜!ナミ!ママは子豚さんじゃ無いぞ~!!」
リビングで怒鳴る。
「あはは…ママはブヒブヒ…あはは」
俺とナミは一緒に笑う。
まだ俺の背中に乗ったままのナミは俺の頭を揺すりながら言う。
「じぃじ…どっか行こうよ」
「そうだな…なら散歩しながらコンビニでも行こうか?」
「うん!公園の前のコンビニに行こうよ…んで、グミとアイス食べる!!」
俺はナミと手を繋ぎテクテクとコンビニに向かう…。
午後のひととき…。
今では実娘よりも愛おしい孫に目尻が下がるのが自分でも判る…。
袋いっぱいのお菓子をぶら下げ、公園のベンチに2人並んでナミはアイスを食べる…。
3分の1ほどアイスを残し、ナミは立ち上がり俺に話す…。
「じぃじ少し遊ぶ!アイスは食べて!」
食べかけのアイスを俺に渡し、誰かに呼ばれたかのように、ひとりブランコの方へ走った…。
休日ならばこの公園も賑わうのだろうが、平日の…それも夕方に近くの時間帯では閑散としていた…。
勢いよく走るナミは誰もいない砂場近くで立ち止まり、一度俺を確認した…。
俺はベンチに腰掛けたまま、ナミに笑顔を見せる…。
砂場の中にしゃがんだナミは時折誰もいないところへ向い話しかける…。
「うん、いいよ」
幼子のひとり遊びか?
ナミは想像の中、誰かと遊んでいるのだろうと俺は微笑んだ…。
いきなりナミは立ち上がると、アチラコチラを笑いながら走り回る…。
「あはは…待って〜」
しばらく様子を見ていた俺だが、ナミが転び、それを起こそうとベンチから立ち上がる…。
「うん、いいよ〜」
ナミは泣きもせず、ひとりで起き上がったのを見て、ナミに声をかける…。
「ナミ!もう帰ろか!」
「待って!後、ブランコだけ乗る〜!」
そう言いつつ、ナミはブランコに腰掛けた…。
ナミのブランコを押し漕いであげようと近づくとナミが自分でやったのかブランコは静かに動き出す…。
動きは徐々に勢いを増し、危険を感じた俺はナミの元へ走り出す…その時だった…。
「ダメ〜!!押したらダメ〜!」
あきらかにナミの声とは違う声がナミの口から発せられ、ナミのブランコはカタンとした感じでブランコは止まった…。
そこにはキョトンとした顔のナミが座っている…。
「大丈夫だよ。帰ろうねナミ…」
俺はそう言いつつナミを抱き上げた…。
「おねぇちゃんとおにぃちゃんが遊んでくれたの…オニごっこしたら、おにぃちゃんにドンってタッチされて転んじゃった…それでブランコ乗ったらおにぃちゃんがいっぱい押すからおねぇちゃんがおにぃちゃんにダメって言ったの…」
「おねぇちゃんとおにぃちゃんはどこにいるの?」
「いなくなっちゃった…じぃじお腹すいた!!」
あれから8年たち、今でもたまに泊まりで遊び来るナミにその時の話をしても、ナミはその事を覚えていない…。
あれはナミの妄想の出来事か?
不自然にガクンと止まったブランコを見ている俺には、あの時のナミには見えない誰かと遊んでいたとしか思えない…。
そして見えないイタヅラ好きな男の子とそれをたしなめた女の子はいったい…何だったのだろう?
ちょっとだけ怖いかも ぐり吉たま吉 @samnokaori
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