一日だけ日記
尾八原ジュージ
2023/03/23
なにやら今日記を書くのが静かなブームのようでして、色んな方の日記を拝読しているうちに自分でも書いてみたくなったのですけど、どうも日記を書くとなると急に身構えてしまうというか、不思議と筆が進まなくなってしまうのです。
うーん、日記、日記ねぇ。何を書いたらいいんでしょうか。今日あったことでも順番に書きましょうか。ええと、私猫を飼っているんですけど、今朝目が覚めたらその子が家の中のどこにもいないんですね。それでもう泡食って探し回っていたら、同居の姉が起きてきて「あんた猫なんか飼ったことないじゃない」って言うんです。
そんなわけないじゃない、猫の餌だってトイレだってあるよって言い返したんですけど、よくよく見たらそういうのもなくなってて、猫のトイレがあったとこなんかでっかい体重計が置いてあるんですよね。ここ数年の私の猫ちゃん偏愛生活は一体どうしちゃったものやら、影も形もないのです。
「あんたさぁ、いよいよ頭がどうかなったんじゃないの」なんて姉が言うもんですから、私もだんだん不安になってきちゃって、とりあえず病院に行くことにしました。まぁ、急に総合病院なんかにかかるわけにいきませんから、とりあえずかかりつけの内科小児科クリニックに行くわけです。で、お医者さんに話を聞いていただいてるうちに何やら安心してきたので、お昼ごはんを買って帰宅しました。
そしたらなんか、今度は姉がいないんですよね。姉の服とか靴とか食器とか読みかけの本とか、そういうものがもうかけらも残っていない。よく考えたら私の姉って大昔に亡くなってるというか、そもそも死産だったんです。だから一緒に暮らしてるわけもなくって、えーっじゃあここ数年の姉との二人暮らしの思い出は何だったの? って話になるんですけど、とにかくいないものは仕方ない。とりあえずお湯でも沸かすかってんで薬缶をコンロにかけて、しばらくガスの炎を見てました。炎っていいですね。ずっと見ていても飽きないものです。でも小一時間も眺めてますと流石に退屈になってきますから、こうやって日記をつけ始めたわけなのです。
いやぁ、やってみると意外に書けるものですね。でも日記って私、続いたためしがないものですから、この日記もたぶん今日が最後になるかと思います。炎もいつのまにか大きくなってもう、キッチンの天井まで焦げちゃってますし、いい加減熱いし、煙吸ったせいか体が動かなくって、ちょっとこれはもう逃げられないかな? まぁこうなってみれば猫も姉もいなくてよかったかもしれないなぁという話です。ではこのあたりで失礼します。皆様どうかお元気で。
一日だけ日記 尾八原ジュージ @zi-yon
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます