寂れた町の 商店街に
一際目立つ 喫茶店
優しく点る ランプの灯り
ただ安らぎを 追い求め
迷いを抱く 数多の影を
その灯火が 照らし出す
生きているだけで、どうしてもどこかに湧いて出てくる、ちょっとしたモヤモヤ……、
それをスッキリさせる方法は人それぞれ、いろいろあるかと思います。
その一つに、落ち着いた空間……例えばそう、雰囲気のいい喫茶店で時間を過ごすというのもあるのではないでしょうか?
さらに……もし、その喫茶店で、本当にそのモヤモヤを解消できるきっかけとなる「なにか」が起きるとしたら?
全4部構成、一つ一つのお話が読みやすくまとめられていて、展開がとても早くわかりやすいです。
文体もしっかりしていて、わかりにくい誇張表現や複雑な言い回しもなく、ノンストレスで読み進められます。
「どうしようもなくたまらない気持ちが溢れたら、そのときのそれが、そうだ」
これは、作者様のキャッチコピーですが、
ここまで指示代名詞がいくつも続く言葉で、これ以上に「それ」を表現した言葉は無いと思いました。
まず、この作品は四部作である事を記しておこう。
自分は、うっかり三部から読んでしまい、その続きを読みたいがために四部へそのまま読み進めた。
物語は一見、大学生が主人公の青春群像劇だが、読み進めると少し違うと気が付く。
「月灯」という喫茶店を舞台に繰り広げられる何気ない日常の出来事の中に、スパイスの様に「不思議」がポツと現れる。
だが、それはとても自然な流れで現れるので、違和感なく読み進める事ができる。
人が誰かを心から愛することへの機微を、優しく描いた作品。
静かで、不思議で。そして、優しい人々。
読み終わったあと、物語の中の彼等が現実にいるかの様に思えてくる。
彼等のこれからの人生が、きっと彩り豊かな物であるようにと、願ってしまう。