第2話 スタジオにて

ロケのVTRが終わり、ラバードールを購入した芸能人が話し始める。

「さあ、そう言う訳でラバードールを購入して来ました」

「スタジオに持って来ましたので、皆さんもラバードールを見て触ってみて下さいね」


テレビ局へと持ち帰られたラバードールが運ばれてきて、スタジオでお披露目される。

拍手とともにスタジオに運ばれてきたゴールドに輝くバキュームボックスで梱包されたままのラバードール。


スタジオには驚きの歓声が響く。

皆、「口々に凄い!」「彫刻みたいだ!」「中の人は大丈夫なの?」などの声を上げる。

テカリがありゴールドのバキュームボックスの周りに集まった番組出演者たち。

男性出演者はラバードールの背後でカメラの死角を利用してお尻を撫でているようで、ラバードールはビクッと動いて吐息を何度か漏らしていた。


ラバードールの胸に触れた女性出演者がコメントする。

「触った感じはゴムですね、それに柔らかいので間違いなく女性の胸ですねこれは、でもかなり暑そうですよ、かなり熱を持ってますね、皆さんも触って確かめてみて下さいよ」


その言葉で躊躇して触れていなかった出演者も一斉にラバードールに触れたので、ラバードールは身動きがほとんどできないバキュームボックスの中で震えるようにして耐えているのが分かる。


ラバードールを購入した芸能人が言う。

「では、そろそろラバードールをバキュームボックスから出してみましょう!」

そして、すぐにバキュームボックスが横にされるとファスナーが開けられる。

『ピチ、パチ、パチン』とラバー独特の音を立てて、真空パックが解けた。


購入した芸能人がバキュームボックスからスリーピングバッグに詰められ真空パックされたシルバーに輝くラバードールを引っ張り出した。

それを出演者たちの前に出すと、また歓声が上がった。

こちらもまるで彫刻の様、ただホースの付いたゴールドのラバーマスクが少し滑稽に見えた。






シルバーに輝くラバーで体を真空パックされたラバードールの頭に被せられたゴールドのホース付きラバーマスクが外されると出演者はラバードールの周りに再び集まった。


そして、ピッチリと真空パックされたラバードールを見て、出演者たちは口々に話す。

「バキュームボックスとバキュームスリーピングバッグで二重に真空パックされたら、そりゃあ、動けないですよね!」「ラバードールの扱い、酷いね!」などの声。


そしてまたシルバーでテカテカと妖しく光るラバーに包まれたラバードールを出演者たちが触れると先ほどよりプルプルと体を大きく震わせながらも耐えるラバードールの姿はゴム人形に徹しようとする中の女性の健気さが垣間見えた。


その後もどさくさ紛れにラバードールの胸や太ももをしきりに触る出演者もいたり、シルバーのマスクの口元を入念に見る出演者もいた。

ゴムで空気を通さないのにどうやってラバードールが呼吸ができるのか不思議だったのだろう。


「皆さん、ではいよいよ梱包を解いてラバードールを見て頂きましょう!」

そう言うと、ラバードールを購入した芸能人がシルバーのラバーマスクを外した後、真空パックされたラバードールの足元へと周り、吸引口で何かすると、スリーピングバッグ内に『ピチ、パチ、パチン』とラバー独特の音を立てて、空気が入っていき真空パックが解けたが、ラバードールは動かない。


ラバードールは人ではなく人形に徹しているのだろう、それとも長時間の真空パックで関節が固まって動けないのかまでは分からなかった。


購入した芸能人がスリーピングバッグの首元を大きく広げて腕を突っ込んでラバードールを引っ張り出す。

購入者である芸能人が引っ張り上げてラバードールを立たせた。


出演者たちが直立したラバードールの周りに集まり、マジマジと観察を始める。

「本当にラバードール、ゴム人形だ」「中の人大変だろうね」「肌の露出が一切ないね」「呼吸するの苦しそう」という声が聞こえる中、ラバードールの横に並んだ購入者である芸能人が突然こんなことを言い出した。

「このラバードールをこの番組に寄贈します!」と。

驚く番組司会者とスタッフだが、あまり演技が上手くなく白々しい演技にしか見えない。

おそらくは打ち合わせ通りなのだろう。


司会者は驚きながらも確認する。

「本当にこんなに高価なラバードールを頂いてもいいのですか?」

司会者の質問にラバードールを購入した芸能人は頷くと付け加える。

「高価なものなので、大切に使用して下さい」と。


段取り通りなのだろう、司会者がすかさず話しを始める。

「この番組のマスコットガール用の衣装があるのでラバードールに着せてマスコットガールならぬマスコットドールにしても構わないですか?」

司会者の言葉に「どうぞ!」と購入者の芸能人が答えると早速衣装が準備された。



マスコットガールの衣装は、青い全身タイツに白いエナメルのハイレグ水着にワンピースとジャケット、それにロンググローブ、そして左右で青と白で色の違うニーハイブーツ。

それに肌色をした人の皮のようなもの。

人の皮のようなものは上半身と下半身に分かれていている。

上半身の方には顔もあれば髪の毛まで付いている。

もう、誰が見ても初めからラバードールに着せる前提で準備したとしか思えない人の皮。


その人の皮のようなものを手にした司会者が説明を始める。

「これはシリコンでできていてかなり伸びるんですよ、これをラバードールに着せてお人形さんになってもらってから、マスコットガールの衣装を着てもらいます」


司会者が説明している間に、スタッフが椅子を用意してそこへ座らされてドールスーツの下半身を着せられる。

下半身部分が着せられたラバードールに今度は上半身のドールスーツが被せるように着せられる。


腕は通ったのだが、頭がすんなりと通らない。

ドールスーツの首の辺りで引っ掛かり、ドールスーツの頭は空気が抜けたように萎み、首のところは腫れて、ドールスーツのピンクの乳首のついた胸はシワシワに萎み、その胸のすぐ下辺りには大きな膨らみが2つあるという何とも奇妙な姿となった。


それでもスタッフは強引に首の辺りに引っ掛かったラバードールの頭を通そうと躍起になっている。

ほとんど微動だにせずに、スタッフにドールスーツを着せてもらっていたラバードールだが、呼吸穴が塞がれて段々と苦しくなってきたのだろう痙攣するように体を動かし始めた。

芸能人の顔色を伺い、司会者はスタッフにとにかく急いで着せるように命じて、ようやくラバードールにドールスーツを着せた。

すぐにラバードールとドールスーツのリアルフェイスの呼吸穴を合わせて事なきを得たが、しばらくの間、ラバードールは直立したまま苦しそうに呼吸をしていた。




シリコンの上下セパレートのドールスーツを着せられたラバードールは見た目には綺麗な女性の姿に変わっていた。

そんな女性の姿を見ていて俺は思った。

“どこかで見たことがあるような、ないような“


一見すると、裸の女性が直立しているようにも見える。

放送の時間帯が深夜という事もあり、そのままモザイクなしで番組は進行する。


リアルドールとなったラバードールだが、一部分おかしなところがある。

それはお腹の辺り、ドールスーツの上半身と下半身の切れ目が中途半端で、ラバードールの黒い肌が部分的に覗いている。


そこをスタッフが綺麗に直していく。

ドールスーツの繋ぎ目部分にはかなりの数のホックが付いていて、上半身側を内側に下半身側を外側にして中へ押し込み軽く持ち上げるとホックが引っ掛かり上下が一体となる。


そしてその上からドールスーツと同色の特殊なシリコンテープをリアルドールのお腹周りに巻き付けるとリアルドールの完成となる。

ちなみに、使用した特殊なシリコンテープは時間が経つと融着してドールスーツの切れ目を完全に分からなくしてしまう。

こうして全裸のリアルドール姿となったラバードールにスタジオの出演者たちの前でマスコットガールの衣装を着せていく。



まずは青い全身タイツを手に取るスタッフ。

青い全身タイツはラバー製で顔までも覆うものだった。

青いラバースーツはリアルドールには少し小さいサイズのようで、シリコンの体にピッタリと張り付きシワが全く見られないほど。


直立し、あくまでドールとしての姿勢を崩さない中の女性に感心しながらも、リアルドールの顔を凝視していて気づいた。

「あ!達磨 美晴(だるまみはる)ちゃんに似ている」

達磨 美晴はこのテレビ局の朝のお天気お姉さんだった人。

大学在学中にグラビアデビュー、そして天気予報士にも合格した才女。

大学卒業後にはこのテレビ局のアナウンサーとして就職し、しばらくお天気お姉さんを務めていたが、仕事が忙しくてテレビを見ないうちに姿を消していた。

覚えていたのは顔が俺好みの顔だったから。


そんな達磨 美晴ちゃんによく似たリアルドールは青いラバースーツに腕を通され、マスクを被せられて鼻の位置を調整してから腰から首元まで背中を縦に走るファスナーを閉められた。

リアルドールの体の凹凸はラバースーツで強調されてより顕著となった。

カメラが青いノッペラボウとなったリアルドールの顔にズームすると、ラバーが顔に張り付き苦しそうに呼吸をしていた。


こうして青いラバースーツを着せられたリアルドール、顔の部分は鼻の呼吸穴しか開いていないようで、青いノッペラボウの鼻の部分に僅かに開いた穴からリアルドールの肌が伺えるだけとなった。



青いラバードールとなり、スタッフの手によって白いエナメルのハイレグ水着を着せらる青いラバードール。

白いエナメルハイレグもサイズが小さいのか、ラバードールの股に食い込み、リアルドールのマン筋をクッキリと浮き彫りにさせていた。


左右で青と白と色の違うタイトなエナメルニーハイブーツを履かされた後、白いエナメルのワンピースを着せられる青いラバードール。

エナメルでタイトな膝丈のワンピースのスカートはニーハイブーツの絶対領域を隠してしまったが、それよりもハイレグで浮き彫りにされたマン筋が完全に隠れてしまったことの方が俺は残念だった。



青いラバードールは白いエナメルグローブを嵌めてもらった後、同じく白いエナメルの裾の短いジャケットを着せられていた。

最後に簡単には青いラバースーツを脱げないようにするためだろうか太い番組のロゴの入った首輪をされて、南京錠まで掛けられていた。

そして司会者の横でテーブルを挟んで立つ形でマスコットドールを務めることになり、その回は終了した。


また、来週続きを見ようと思う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

テレビ番組でラバードールを購入していた。 ごむらば @nsd326

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ