第4話 子猫のムギちゃん
子猫を保護して譲渡した話をする。
——あれは数年前の事。
新型コロナ以前、(ついこの間の気がしたが、そう思うとかなり前なんだなって、月日怖い)野良の母猫と子猫二匹が別宅にある倉庫に居ついてる、と家族がいうので見に行った。
母猫は三毛風のまだら柄だったが、子猫はどちらも茶トラ。まだ生まれて間もないらしく、ダンボールの隅でうずくまって「みーみー」鳴いている状態。とっても小さかったし、栄養状態もあまりよくなさそうな雰囲気だった。
とりあえず持参したちゅー〇を絞り出して与えてみると、すぐに反応はしなかったので、まだおやつを食べるには早い時期なのかな、と思ったのだが、はっ!って感じで気づくとべろべろ舐め始めた。
この時はまだ小さすぎるので、そのままにして帰ったのだが、そろそろ大きくなってきたかなあ、って頃(数週間後だったか十日程後だったか記憶にない)ふたたび見に行くと、ダンボールの隅にいたのが嘘のように爆走していた。
母猫のあとをついて走っているのだが、よちよちではない。めちゃくちゃ走ってる。で、側溝に入ったところを子猫一匹だけ捕獲して自宅に連れて帰った。
もう一匹はまた後日——と思っていたのに、我が子がさらわれたからか、母猫と共に姿をくらましてしまい捕獲できずに終わった——のだが、半年後ぐらいに茶トラの野良が別宅の周囲をうろつくようになったらしいので、無事成長したんだろうとは思う——保護(捕獲?)した茶トラ子猫の話を続ける。
当時すでにモフ男とモフ美を飼っていた。
そしてこの二匹、子猫相手にびびちらかし、鳴き声を聞いただけで物陰に逃走、ご飯も食べず出てこなくなった。
それでも子猫をカゴに入れてドアを閉めた部屋に置き、子猫も鳴かなくなると、二匹は物陰からびくびくしながら出てきたのだが……。
台所で「にゃー!(ごはーんっ)」と鳴いた声に、子猫が反応して、ミーミーと再び泣き始める。ドアを閉めているのだがなかなかに絶叫なので台所までしっかり聞こえた。と、モフ二匹は再び、びびちらかし逃走、物陰に引っ込んでしまった。
なんとなく雰囲気的に、子猫は人間を怖がり、同じ猫の鳴き声に「ヘルプミー!」と「ミーミー」鳴いた感じだったのだが、大人猫二匹に母性はない様子。とにかくびびっている、餌も食わない程に。
でも記憶力がないのか、気持ちの切り替えが早いのか。
子猫が鳴かなくなると物陰から出てきて、「にゃー!(飯ー!)」と鳴く。
鳴くもんだから子猫が反応して「ミー!(助けて、監禁されてるの!)」と鳴き、それを聞いてまた物陰に逃げる、保護したその日の夜は、そんな感じだった。
で、子猫のほうは。
「カッ!!」
と、人間がカゴの上から見ると威嚇してくる。シャーではない、カッ!!となって飛びかかって来る仕草をする。こっわ、子猫、こっわ。そしてこのカゴなのだが、ちゃんとしたペット用のキャリーバッグではなく、そのへんにあった一応フタが出来るタイプのプラスチックのカゴ(赤色)であって、ロックは甘い。
カッ!!と威嚇するのを見て、フタが開きそう、と思って重しに本を置いておいたのだが、なんと頭突きでこじ開けたらしく、ちょっと席を外して戻ってくればカゴ不在、探すとタンスの裏に逃げていた。
母の嫁入り箪笥である。めちゃくちゃ重い、でかいやつの裏にちょうど子猫サイズの隙間が開けてあり、人の腕は無理だが子猫は余裕で移動する。棒でつつくが出てこない。餌で吊るも出てこない。この日の夜はあきらめてそのままにした。
で、翌日。
がんばってタンスを動かして逃げかけたところを必死で捕獲。またプラスチック(赤色)のカゴに入れて重石の本を増やしておく。
今思えば、なぜにキャリーバッグに入れなかったのか謎なのだが、たぶん匂いが付くとモフ男たちが入らなくなると思ったのかもしれない、知らんけど。
で、餌のカリカリをあげると食べたはず、そんな記憶がある。
そして食べたのだからトイレするのでは、と思って、試しに猫トイレに連れて行くと、「ふーん、ふーん」と鳴いて力んでいたのも覚えている。
ナニコレ可愛いっ、と思ってみてたら、モフ男が見に来て「シャー!!(ぼくのトイレ勝手に使うな!!」と威嚇してきたのでびっくりしたのも覚えている、が子猫のほうはマイペースに「ふーん、ふーん」と力み、モフ男の威嚇など何も意に介してなかった、というのも覚えている。
で、時系列はもう覚えてないが、ノミだらけだったのでお風呂に入れた。暴れるので洗濯ネットに入れて桶に漬けると、
(ほわわわー…)
と、いい湯だな的な感じで大人しくなり目を細めていた。んでノミを落とし、動物病院で買ってきたノミよけのやつ(子猫用)を滴下する。この頃になると、「カッ!」と威嚇しなくなって、手乗り猫で大人しく丸くなっていた。馴染むのはやっ。
しかし先住モフ二匹は馴染みそうになく、ソワソワしているので、とりあえず今後どうすっかなあー、ってなりながら母の実家に連れて行くことにした。そっちの家でも黒猫を飼っているのだが、果たしてこちらとの相性は……。
と考えながらダンボール箱の中に子猫を入れて(ここでもなぜかキャリーバッグを使わない自分の行動が謎)、ちょいとスーパーで買い物、子猫用の餌もしっかり購入して袋詰めしていると……。
この時、母も一緒にいたのだが、レジにいる知人とその知人の親族を見つけた母は、軽い調子で「猫いる?」と声をかける。と、その知人の親族のほうが「いります!」と返事するではないか。
何やらちょうどわんちゃんを亡くしたばかりで寂しい思いをしていたらしい。そのお方には小学生のお子さんがいて、この時もそばにいらっしゃる。「猫!」と会話にギンギンに喜んでいた。
が、いちおう、旦那に聞いてみる、と電話して……。
「茶トラで尻尾が長い猫ならいるって」
なにその、こだわり。
しかーしっ。
「茶トラで尻尾長いです、雄ですっ!!」
どんぴしゃだ、運命だ!!
というわけで、駐車場でさっそくダンボール箱ごと子猫を渡した。もちろん買ったばかりの子猫用の餌付きだ。ちなみに母の知人その人(年配の女性)は「猫はねー、あんま好かんねー」とぼやき、知人の親族(娘だったかお嫁さんだったか?)は「わたしは大好き!!」と大喜びしていた。
が、そっとダンボール箱を開けて中を見、「ちっさ」とびっくりしているので、歯も生えていたし、カリカリも食べたので「見た目が小さいだけ、ノミ取もしてます、シャンプーもしました」急いでアピって無事譲渡と相成った。
さて。
うちではムギちゃんと名付けていた子猫。我が家にいたのは二日か三日、もしかしたら一晩だったかな……って感じなのですが、
後日、母が知人のほうに伺うと、「元気でやってる」とのことで。
よかったなー、あたい良いことしたよ、と得々している経験です。
うちのモフ、猫二匹。 竹神チエ @chokorabonbon
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