第3話 震撼

2人が立っていた。


「友里愛!最近様子がおかしいから来たけど、どうしたの?」


両脇に2人は立てば私を立ち上がらせてくれて、前を見ればあの女は消えていた。

なんだ、また幻覚か…聞こえていた声も消えた気がする。目の前の女が居なくなった、ということはあの時の死体も、もう自分を安心させる手段がそれしかなくて学校が終わったら行ってみよう。


「ううん、なんでもない…転んじゃって」

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side: 江南 まき


あれから、また1週間が経った、友里愛が学校に来なくなってから1週間でもあった。

時々、電話はかけるものの

『電源が入っていないか電波の届かない場所にいる』の一点張りで一切スマホを触っていないのかいつかけてもそればっかり。


「今日行ってみる?」


6限目の移動教室の前、2人で友里愛のことを話していた、行ってみないと分からないと。

あの時、何があったのか、ほんとに転んだのは自分のせいなのか…そして、あの日何を見ていたのかを。

それまでは他愛もない話で盛り上がっていたのに、そのLINEを開く度に思い出してしまうあの時の女。

あの日以来動いてなかったメンバーLINEを開けば今日放課後集合と打って電源を切る。


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「じゃあ行くかぁ!!」


今日も元気よく優が率先して前を行く。

あの日見た優の目と違って楽しそうなその姿に少しほっとしている。

きっと脳天気な彼は忘れてしまったのだろう。羨ましいったらありゃしない。


ピンポーン


「はーい?あら!竜太くんとみんな、いつも友里愛をありがとうね」


チャイムが鳴って出てきたのは友里愛ではなく、友里愛のお母さん。

いつもチャイムが鳴ったら友里愛自身が出てくるはずなのにそんなに酷いのだろうか?

困ったような目をして、階段の上を見る友里愛のお母さんに、こっちもみんなで目を合わせあって。不安そうな竜太の顔にほんとに友里愛の事が好きな気持ちが滲み出ている。


「ごめんね〜みんな、友里愛…部屋から出てこないのよ、部屋にも入れてくれないし、打つ手なしなのよ」


耳を疑うような言葉。友里愛は外に出るのが好きだ。色んなところにショッピングに行ったり、散歩するのも大好きだと思っていた。

なのに、部屋から出ない。本当に何があったんだろうか。


「入ってもいいですか?」


竜太が耐えきれなくなったのか一言、友里愛のお母さんに言う。黙って扉を開けたまま壁に寄れば、手で入ってどうぞというジェスチャーをする友里愛のお母さん。

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部屋の前まで来ると、ほんの少しだけ話し声…いや、独り言が聞こえる。

必死に何かを訴えるような声が。


「や、やだ…やだ…来ないで…死にたくない」


何かに追われているのだろうかその声は本当に迫真で、何もないのに言っているようには思えない。そんな声を聞いた私たちは5人で不安そうな、暗い空気に包まれる。


コンコンコンコン


ノックを4回、静かになる部屋の中に、ドアノブを下げて入ってみることにする。

部屋から出てこないと言ったものの鍵はかかっていなくて扉は簡単に開いた。

真っ暗な部屋の中に毛布を被った友里愛…ぷっくり可愛かったほっぺたは痩せこけていて。


「友里愛??」


顔を強ばらせてこっちを見る友里愛に、近づこうとすると、カチカチ音を立てて歯が震えている。歯だけじゃなく全身が震えて目から涙が出ている。

綺麗な二重の大きい目も怖いくらいに血走って大きく開いて。目が今にも取れそうなくらい。


「来るなっ!!どっかいけ!あはは!私をもう許して…」


目の前で、頭をガンガンと壁にぶつける友里愛を見た竜太はボロボロと大粒の涙を流し泣いていた。

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side: 笠無 友里愛


行ってみよう。そう決めたはいいものの、1人で行くのは気が引けるような。

でも、みんなはきっともう行きたくないと言うに決まってるし、どうしたらいいのだろうか。


「竜太…!ちょっと行きたい場所があって」


こういう時は彼に頼るのが1番だ。私の大好きな彼に。私を見る竜太の目は優しくて、迷わずYESの返事をくれた。

彼となら怖くない…そう思った。

2人と行くスターボッケスをパスして、私は竜太と廃校の近くまで来ていた。

来ていたのだが、何故か進めない。透明な壁があるように私だけが先に進めないのだ。

手で押してみても、足で蹴っても、周りの人の視線が刺さる。

なにしてんのあいつという視線。


「やっぱりいいや!ごめんね?竜太今日は普通に家で遊ぼう?」


次の日…また外に出てみた。

今度は家の6m先くらいで、壁が感じられた。

固い壁が…この日から外に出ることが怖くて堪らない体になってしまった。明日には5m、4mと私のことを蝕む壁の事が頭から離れない。

でも、私は…


「どうしよう…どうしよう!!」


また次の日…外に出てみた。

学校に行かないのではなくいけない。

壁がどんどん近づいてきて、私の居場所をどんどん奪っていく。どんどん、どんどんと。

人が怖くなった。目がない。私があの日見た女のように目がないのだ。

くり抜かれた目を私に食べさせようとしてくる女。絶対に食べてやらない。


「や、やだ…やだ…来ないで…死にたくない」


いよいよ玄関まで壁がきた。

部屋はきっと安全…きっと安全。女の事は絶対入れない。私の事を迎えに来るんだ、あいつは。お迎えのノックに鍵を閉めに行こうと立ち上がろうとするものの、扉までたどり着けない。ドアノブが回る…音をたてて開いた扉に目を見開く。涙が止まらない…怖い…

助けてほしいが私はもう終わりみたいだ。

女がゾロゾロ入ってくる。


「来るなっ!!どっかいけ」


問答無用で近づいてくる女共に罵声を浴びせては、頭をガンガン壁に打ち付ける。

痛い…怖い…笑ってやろう。

狂ってるんだ。幻覚なんだ。本当はなんでもないんだ。


「あはは!」


目を大きく見開いては歯を見せて狂気的に笑ってやる。私は大丈夫。

だって、おかしいのはあの女なのだから。

こっちを見ないでほしい。ずっと見てくる5人の女共に頭を下げては思いっきり壁に打付ける。


「私を許して…怖いよ」

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side: 江南 まき


あの日、おかしくなった友里愛見て今日行けば治ってるんではないか。という淡い希望を持ちながら朝起きた私の耳に衝撃的なニュースが飛び込んできた。


『笠無 友里愛さん16歳が亡くなりました。死体は誰か判断がつかないほどにぐちゃぐちゃになっており、何かに強い力に潰された模様です。警察は他殺ではないか…と』


目の前が真っ白になった。どうして、友里愛。


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「あそこの子…頭おかしくなってたみたいよ?何かがくる!くるって」

コソコソ

「臓器とか骨も潰れちゃうくらい強い力で押しつぶされたって…ほんと怖いわねぇ」

コソコソ



江南 まき

笠無 友里愛 ×

波城 雫

高橋 優

川栄 竜太

陸奥 達也



ある晩のことでした。

肝試しに行った6人の男女がいました。



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ある日の晩のことでした ちゃろあむ @YuduO_O

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